理想のパーティーでさくさくダンジョン攻略⑤
一度倒し方を知れば、ソウルバグは大した脅威ではなくなった。
ただ、音もなく壁面から出現するので、背後から奇襲を受ける可能性があるのは少々面倒だった。
ま、最後尾はソウルバグに触れただけで倒してしまう天音なわけだが。
そんな調子でクレイドルの洞窟を進んでいると、前方の地面から突き出した鍾乳石に、水晶を背負った
「はわわわわわ~、気持ち悪いです~」
「あれもモンスターなのか?」
「水晶カタツムリLv.7だね」
「見るからに
「よっしゃ、さくっと討伐してやるか!」
調子に乗っていた俺は、言葉と共に飛び出していた。
ただの雑魚ではあるが、モンスターを倒す快感が病み付きになっていたのだ。
ソウルバグ同様、俺は水晶カタツムリの背後に回り込んだ。
「へへ、楽勝――ごはっ!?」
勝利を確信した俺は、次の瞬間、視界が反転していた。
水晶カタツムリの唯一の攻撃手段は、後方に素早く跳ねてその硬い殻を相手にぶつけるというものだった。
ソウルバグに対して有効だった戦術のまま挑むと痛い目に遭うような、嫌らしいモンスターというわけである。
そして、俺はまんまとその罠に嵌まり、眉間に水晶を食らってぶっ倒れた。
幸い、水晶カタツムリは一撃で相手の頭蓋骨を破壊するような、鬼畜設定の破壊力は有していなかったので、俺はすぐさま起き上がることができた。
「いてて……」
「終生、無様」
「そこは無様じゃなくて無事? だろ? それより、さっきのカタツムリは?」
「穂波が華麗に仕留めた」
「これ、塗ってくださいです~」
天音は傷薬を差し出した。
「ありがとう」
俺は素直に好意を受け取った。
傷薬を額に塗ると、痛みとたんこぶがすーっと引いていった。
現実ではありえない回復速度だ。
水晶カタツムリに軽い恐怖心を植え付けられたものの、攻略自体は順調に進んでいった。
そうして、予定されていた行路の折り返し地点に差しかかろうかというところで、暗闇の中に突如、蛍の大群のような無数の黄色い光が浮かび上がった。
「んん?」
「星空です~」
「ここから夜空は見えない。それにまだ日暮れじゃない」
「ちょっと待って! コボルトLv.9の大群!」
「「キヒャアアアアアアアアアアアアアア!」」
穂波がそう叫んだ直後、コボルトの大群が一斉に奇声を発し、こちらへ向かって駆け出してきた。
「おいおい、これは流石にやばくないか!?」
「一旦引こう!」
「同意」
洞窟という環境が最悪だった。
視界が悪く、コボルトの大群の正確な数が掴めなかった。
おまけに、コボルトの奇声と足音が反響し、四方八方から迫ってきているような感覚に襲われた。
実際それほど脅威ではないかも知れないが、完全に気圧されしていた。
やにわに、逃げ出す以外の選択が思い浮かばなかった。
そんな中、パニックの臨界を越えた天音が思いも寄らない行動を取った。
「ここここっちへ来ないでください~!」
「みんな、天音ちゃんがゴブリンの群れに突っ込んでいってる!」
「は? どうして!?」
「混乱していると推測」
「仕方ない、天音の援護に向かうぞ!」
「うん、それしかないね!」
「了解」
迷っている猶予もなかったので、俺たちは互いの意思を確認すると、踵を返した。
「ギュエエッ!?」
「ギョオオッ!?」
「ギギャアアッ!?」
次の瞬間、コボルトの断末魔が断続的に木霊した。
どうやら天音は、クレイドルの洞窟一階層では無敵の存在のようだ。
目の前で起こっている惨劇を言葉で表すと、天音の大盾に触れたコボルトたちが、その衝撃に耐えきれず、次々と細切れの肉片へと姿を変えていった。
「助けなくて、大丈夫そうだな」
「天音ちゃん、あんなに強かったんだ」
「ランク:5の暴力」
俺たちは天音のひき殺したコボルトのドロップ品を拾いながら、後を追った。
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