理想のパーティーでさくさくダンジョン攻略④
そうして、左の道に入ってから十分近く歩いたところで、洞窟の壁面から染み出すように、突如青白い人魂が三つも現れた。
よくよく見ると、人魂からは
初のモンスターとの遭遇に、皆の緊張感が一気に高まった。
「ななななんですか、あれ!?」
「ソウルバグLv.8だね」
穂波は透かさずスローアイでモンスターの情報を看破した。
プレイヤーの能力はランクで大まかに示されているのに対して、モンスターの強さはレベルで細かく示されていた。
「各個撃破で倒そう。栞はてこずっている人の援護を任せてもいいか?」
「私の魔法は援護に向いてない」
栞はきっぱりいった。
「全く援護できないのか?」
「全くできない」
「左様で」
そのような重要なことはダンジョンに突入する前にいっておいてもらいたかったが、戦闘前に栞からの援護が期待できないと知れただけでもよしとしよう。
「それじゃあ、俺は左のやつを相手にする」
「私は右をやっつけるね!」
「ががががんばってください~!」
「天音ちゃんも戦うの!」
「ふぇぇ~」
天音は大盾しか装備していないので、俺か穂波のどちらかが敵を蹴散らして、援護しなければならなかった。
(よし、やるか)
これが俺にとって初めての戦闘となるわけだが、不思議と恐怖はなかった。
討伐に時間がかかればかかるほど、天音に負担がかかると理解していたからこそ、俺がやらなければならないという気分になっていたのかも知れなかった。
一呼吸入れてから、自然と体が動き出していた。
俺は二刀短剣を引き抜き、ソウルバグへと肉薄した。
まずは右手の短剣で斬り付ける。
これはソウルバグの左鎌で容易く受け止められた。
ソウルバグはお返しとばかりに右鎌で反撃してきたが、俺は左手の短剣でそれを受け止めた。
ソウルバグと鍔迫り合い、力比べの形となった。
「ぐぐっ! こいつ、思ったよりも力が強いぞ!」
身動きの取れなくなった俺は、そう注意を促した。
弓で戦う穂波はともかく、天音がこの攻撃を凌げるか怪しかった。
「あっちに行ってください~」
天音は目を固く瞑り、大盾を構えたままソウルバグの方へと突っ込んでいった。
注意を引いて距離を保っていればいいものを、あれでは敵のいい的になるだけだ。
とはいえ、俺も援護に回るだけの余裕はなく、天音の愚行をただ見守ることしかできなかった。
ソウルバグが天音に対して鎌を振り下ろした。
直後、ソウルバグの体がポリゴンの粒子となって消し飛んだ。
天音の大盾にひき殺された。
「へ?」
「えいっ! ファイアアローLv.4!」
呆然とする俺をよそに、穂波の放った矢は炎を帯び、射抜かれたソウルバグは炎に包まれて粉砕した。
「終生、平気?」
一人だけてこずっていた俺に、栞は声をかけた。
「ああ」
ぶっちゃけ腕に乳酸が溜まってきていたが、俺は見栄を張って頷いた。
「ふぇぇ~、敵はどこですか~!?」
「天音ちゃーん、もう倒したから戻っておいでー!」
「ええええ、いつの間に、ありがとうございます~」
「いやいや、天音ちゃんがやっつけたんだよ」
「ほぇ?」
そんなほのぼのとしたやり取りの横で、俺とソウルバグの死闘は
天音のソウルバグの倒し方を見るに、俺の力の使い方が間違っているとしか考えられなかった。
しかし、どこにどう力を入れようとも、俺とソウルバグの力の均衡が崩れることはなかった。
寧ろ、筋肉が疲労し、少し押され始めているだろうか。
「終生、多分勘違いしてる」
「いきなり、どうしたんだよ」
「筋力:1で競り負けるのは当然。見た目が筋骨隆々でも、筋力:1なら幼女にも腕相撲で勝てない。そういう世界」
「なるほどなっ」
俺は返事をしながら、ソウルバグとの距離を開けた。
栞のアドバイスでは、力比べしようとするのはダメらしい。
それなら、俺の武器は、長所は何だろうか。
俺はソウルバグを中心に、円を描くように動いた。
俺の唯一の長所である敏捷力を生かすために、足を使うことにした。
すると、ソウルバグはまったく対応できていなかった。
「ここだ!」
ソウルバグの背面をとった俺は、その無防備な部位に短剣を突き立てた。
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