理想のパーティーでさくさくダンジョン攻略②
そんないつも通りのやり取りをしながら、いざダンジョンへ突入しようとした矢先、声をかけられた。
「そちらのお二人さん、これからダンジョンに潜りますか?」
声のした方へ振り返ると、そこに居たのは二人組の女の子だった。
手前の女の子が声をかけてきたようで、栗色のショートヘアにくりくりした目、背には弓と矢筒、腰には短刀、露出の多い軽装から伸びた引き締まった四肢は血色のよい肌色、見るからに活発そうな印象を受けた。
そんな活発そうな女の子に隠れるような立ち位置の女の子は、桃色の癖毛に目尻はとろんと垂れ、小柄で華奢な体躯に似つかわしくない大きな双丘、ダンジョン攻略には相応しくない町娘のような素朴なデザインの衣服に薄紅色の大盾を担いでおり、今もあちこちに視線を泳がせている、見るからに気弱そうな印象を受けた。
そんな対称的な二人組が何の用だろうか。
「ああ、その予定だけど」
「私たち、今日がダンジョンデビューでして、もし宜しければ一緒に潜りませんか?」
「一緒にか――」
仲間は多ければ多いほどいいというのは安直な思考だろうか。
とにかく、俺の一存では決められないので、少し栞と話し合った方がいい案件だ。
「構わない」
栞は俺の意見など待たずに、勝手に了承した。
ああ、なんて男らしい。
「本当に!? ありがとうございます!」
「ありがとうございます~」
「それでは、改めて自己紹介させてもらいます。私は
ランクとはプレイヤーの能力を大雑把に数値で示すもので、この数値が高ければ高いほど優れた冒険者といっても過言ではない。
ファンタジー・イン・リアリティでは経験値を貯めてレベルを上げる仕様がないため、このいつ上がるかわからなあいランク上げを目標に、皆日々研鑽しているのだ。
ちなみに、このランクの数値は装備によっても上下する、総合的な能力である。
「俺たちと同い年じゃないか」
「あら、それじゃあ、普通に話してもいいのかな?」
「もちろんだ」
「あああたしは、
確かに栄養は蓄えられているようだ、と俺はセクハラ親父のような感想を抱いた。
「ランク:5?」
「は、ふぁい!」
栞は何やら天音のランクを気にしているようだった。
「ランクが高いのはいいことなんじゃないのか?」
俺は脳天気にいった。
「ランク:5は一線級冒険者まではいかなくても、クレイドルの洞窟五階層までは潜れる能力があるとシステムに判断されている。さっき、ダンジョンデビューだといっていたけれど、モンスターとの遭遇率が低いフィールドの狩りだけでランク:5に到達するのは非現実的」
「あ、そのことだけど、天音ちゃんはちょっと、ううん、かなり特殊で、冒険者になった時からランク:5だったの」
「ですです~」
穂波は慌てて弁解し、天音もこくこくと頷いた。
「最初からというのは吃驚仰天。あの有名な孤高の戦姫でさえ駆け出し冒険者の頃はランク:3だと聞いている」
これは後から聞いたが、孤高の戦姫とは、どこの組織にも所属せず、この世界で唯一ランク:7に到達しているプレイヤーのことだ。
「私も初めて見せてもらった時は驚いたけど、本当だよ」
この世界では、本人の意思さえあれば、他人にステータスを公開できるのだ。
「ま、本当に最初からランク5か確かめようもないだろうし、二人の言葉を信じないか? それに、強い仲間が居るのはいいことだろ?」
「終生がそれでいいならそれでいい」
一件落着したところで、今度はこちら側の自己紹介だ。
「静川栞、ランク:2」
栞は相変わらずそう不親切な自己紹介をした。
言葉の端々に綺羅星を付けろとまではいわないが、初対面の挨拶くらいもう少し愛想よくできないものだろうか。
「凉城終生、ランク:1……」
ランクが低いことは悪いことではないのだが、俺は妙に気恥ずかしく感じてしまい、語尾をごもごもとさせてしまった。
そんな些細なことを気にしているのは俺だけのようで、穂波はさっそくこの四人のパーティでの役割分担を始めた。
「前衛で敵の注意を引き付ける天音ちゃん、近接武器の終生君、魔法使いの栞ちゃん、それと、遠距離武器の私で凄くバランスがいいね!」
「いいパーティです~」
「異論ない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます