協力者は涼しい顔でチート行為をする⑧
「ベースパラメータとメインパラメータってのが出てきたけど」
「ベースパラメータの方」
「ランク:1で、生命力:3、体力:1、筋力:1、敏捷力:4、精神力:1、魔力:1、知力:0だな」
「嘘……!」
栞は驚嘆の声をあげた。
「栞ってそんな顔もできたんだな。もしかして、俺ってそんなに凄いのか?」
「真逆。生命力と敏捷力以外、最低値。こんなに弱いプレイヤーは初めて見た」
「また冗談か……?」
「本気。終生、本当に真の勇者?」
栞は疑いの目を深めた。
栞のジト目は似合うな、などと考えている場合ではなかった。
「その前に、その真の勇者ってどういう意味なんだ?」
「私も詳しくは聞かされていない。ただ、口を滑らせたのか、一度だけ適合者という言い方をしていた」
「適合者か」
リーリアは俺のことに関して何も情報は与えられていないといっていたはずだが、何かを隠していたということになる。
人が隠し事をするというのはどういう時か。
「ステータスの一番下の欄、ユニークスキルは発現している?」
栞にいわれ、俺は思考を一時中断した。
「空白だな」
「……」
栞は絶句してしまった。
「前向きに考えるなら、これから物凄いユニークスキルが発現するかも知れないってことだろ?」
「発現しない可能性もある。そうしたら、終生はこの世界で一番弱いプレイヤーになる」
「ははは……」
「メインパラメータも一応確認」
「ああ」
ベースパラメータを閉じ、メインパラメータを開いた。
メインパラメータの方は、ベースパラメータと装備から弾き出される数値である。
物理攻撃力:29
魔法攻撃力:0
物理防御力:29
魔法防御力:21
マナ:10
素早さ:45
状態異常耐性:25
重量制限:15
「どうだ……?」
「頭が痛くなってきた」
「よ~し、先に防具の方を選ぶかな」
俺は現実から目を背けるように、別の話題を振った。
「その防具は飾り?」
「いや、だってこれ初期装備だろ?」
初期装備にしては赤と黒で俺好みのなかなかいかしたデザインをしているが。
「初期装備、抹茶色の地味なデザイン。防具の効果は?」
「えーっと、敏捷力2倍って表示されてるな」
ここで驚愕の事実が発覚した。
2倍で4ということは、俺の敏捷力の元の値は2ということだ。
「元の敏捷力が低すぎて効果は薄いけど、防具はそのままでいい。そのベースパラメータだと、どの道ほとんどの防具を装備できない」
その後、武器はシンプルな二刀短剣を購入した。
筋力:1でも装備可能で、刃毀れしない呪文が施されている一品だ。
ウォー爺の店に売っている片手剣は、最低でも筋力:2がないと装備できなかった。
百万ゴールドを用意してきたが、たった一万ゴールドで事足りてしまった。
「筋力が低くて敏捷力が高い近接戦闘職なら、短剣がおすすめ。初期装備もダガーだから、システムもそう判断している」
「ま、素早く動き回って敵の攻撃を躱しながら戦うのも悪くはないか」
「悪くない」
一応、これで現状最強装備が整ったので、早速ダンジョンを攻略していくことにした。
通常、駆け出し冒険者は始まりの町の周辺で野生動物を狩り、その素材を売って資金を調達、装備を整えてからダンジョンへと挑むのだが、栞のおかげでその辺りの
「あの、この辺りで初心者にお勧めのダンジョンを知りませんか?」
俺はウォー爺に尋ねた。
「そうだな、クレイドルの洞窟はチュートリアル的なダンジョンとしてはお勧めだぞ」
「どんなダンジョンなんですか?」
「階層毎に出現するモンスターは固定化していて、一階層に出現するモンスターは小型が三種類のみ。マッピングも終わっておるし、迷う心配もなし。そして、ここにそのマップがある。値段は1000ゴールドだ」
商売上手な爺さんだ。
初めてのダンジョン攻略に、マップがあるのとないのとでは、難易度は雲泥の差だからだ。
「頂戴」
どうやら栞も同じ考えに至ったようで、購入を即決した。
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