充録 楓
さくさく。
もぐもぐ。
はらはら。
さくさく。
もぐもぐ。
はらはら。
さく、さく。
もぐもぐ。
はらり。
乾いた楓はちと似た色合い。
命が行き交う楓は彩り豊か。
舞子はお弁当を片手に、おにぎりを片手に持って楓並木を歩き続ける。
不思議と植物を見ると空腹を覚えるようになった。
隣にいる存在の所為だろうか。
おかげで起きている間はほとんどお腹が空いていると意識している。
迷惑な話。
こうよう。
おいしい。
さむい。
「ひびな」
「何だ?」
「楓と紅葉って植物分類上同じだって知ってた?」
「当然」
「楓の中で特に紅葉の美しい種類を紅葉って呼ぶ説があるって。あとは、盆栽や造園業の世界では葉の形状によって分類されるって」
「語られるまでもない」
「人って名前を付けるのが好き」
「そうだな」
「いっぱい語るのが好き」
「そうだな」
「ひびなもそんな気持ちがあるの?」
どうだろう。
ひびなは初めて考えた。
花が好きだ。
単純明快。澄んでいて綺麗だからだ。
癒される。気力をもらえる。
誇らしく愛らしい存在。
だからこそ、惹かれた心を奪われた。
だからこそきっと、
自分だけの花が創りたいのは、
「そうだな。俺も語りたい」
「…綺麗だね」
「ああ」
さくさく。
もぐもぐ。
はらはら。
今暫くはこの音が続く事になる。
楓:花言葉 非凡な才能 遠慮 確保 約束
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