第37話 楽しい学校

 ワラの家に泊まり、予想以上のミコミさんのお茶目な寝相に苦しめられながらようやく朝を迎えた。

 そして私はワラの家で軽く朝食をいただいた後、家に荷物を取りに帰る。家に着くと玄関で待っていたのは縫お姉ちゃんだった。縫お姉ちゃんは腕を組みながら口は笑っていたけど目は笑っていなかった?


 「あ、お姉ちゃん。今帰りました……」


 「ふ〜ん。ササとのお泊まりどうだった?」


 「え、え〜と」

 

 すると縫お姉ちゃんは私の頬を怒りで震えているであろう手で優しく触る。


 「ちょっとお姉さんと車の中で話しながら……学校に行こうか?」


 「あ、はい」


 多分、これ車内で1時間ほど説教されるやつだ。

 私は早く起きて帰宅して1時間も説教できる猶予を作ったことを悔やむばかりだ。


 ——私は家の中に入り、両親に帰宅を告げた後荷物をまとめて駆け足で縫お姉ちゃんの元に戻り車に乗り込み助手席に座った。


 朝方、運送車ばかりの道路を走る車の中で、縫お姉ちゃんは呆れながら喋りはじめた。


 「まず、どうして嘘をついたの? ミコトくんの家に泊まるって言えばいいのに」


 「だって怒られるかなって」


 「いや、怒るはずないでしょ? 一応ササとミコトくんとボク含めて仕事していたわけだし。不良の家だったらカチコミだったけどミコトくんだったら信頼性が高いよ」


 「そ、そうなんだ」


 あーそう言えばそうだった。確かササ先生とワラは縫お姉ちゃんの元で修行していたんだったよね。

 こうなるぐらいなら言えば良かった。


 「ま、それはいいけどね。一応ミコトくんからミコミちゃんのこと聞いたよ。大変だったね」


 「あ、うん。それで一応休学にするかしないかで……」


 「まぁ、そら怖いからね。でもミコミちゃんはあっさり休むのちょっとボク不自然だよ」


 「え、そうなの?」


 縫お姉ちゃんは思い出しながら話す。


 「ボクの知っているミコミちゃんは学校が意外と好きで、色々な人と話すのが好きなんだけどあの中学に行ってからちょっと暗くなりすぎなんだよね。喋り方はミコトくんっぽいんだけど、なんかそれより暗くて」


 「——そうなんだ。だけど私には分からなかった」


 「でしょ? もしかしたらだけど——」


 縫お姉ちゃんはそこから口に出すのを拒んだ。

 恐らく、イジメなのかもしれない。それはなんとなくだけど私でも分かった。

 だけどミコミさん、友達の家に勉強しに行っていたのだったら味方はいるはずだけど、もしかすれば味方である友人は学校では立場が低いから助けられないという可能性もある。


 「まぁ、とりあえずだよ。昨日の夜ミコミさんの後ろに急に大人が立ったんだよね。それもウズメが知っている中学校の保健の先生。それも家から通っていた中学じゃなくて、二年生まで住んでいた安雲の中学校」


 「うん、私の記憶ではそんなことするはずじゃ……」


 「それは同感。一応連絡先知っているからボクが確認しとく。ウズメは学業に専念。分かった?」


 「うん」


 なんだろう、ミコミさんを見ていると昔の私を思い出す。

 昔の私と違う点は味方がいるという感じだけど、ミコミさんは私と同じように一人で溜めてしまう性格だろう。

 何か……私にできることはないのかな?


 そんな悩みを抱えている間に若命高校に到着した。私は車から降り教室に向かうと猫耳を頭に生やし、一見怖そうな見た目に反して親切な友人、ツボミちゃんが取り巻き達と机を囲んで何やら会議していた。

 

 ツボミちゃんは私に気づくと「あ、おはよう!」と口にした後私に抱きついた。


 「いや、ツボミちゃん。唐突にどうしたの? てかいつもこんな早くに来ていなかったよね?」


 「あぁ、それはね」


 ツボミちゃんは机上に置かれた紙を手に取ると私に見せる。

 紙には軽音部と書かれているだけだったけどそれがどうしたんだろう。

 すると取り巻きの一人の髪が首ぐらいで切り揃えられたサユさんが困惑しながら話してくれた。


 「まぁ、要するに軽音部の正式名称は『儀式的な演奏を気軽にし、伝統的な音楽を楽しむ部』を略して軽音部とかいう詐称行為に出ているわけだけど、ここに電子機器も触れますかを入れるか悩んでいるの」


 ふむ、なるほど。


 詐欺だ。


 まぁ、伝統的な楽器を使うのは悪いことと言わないけど、電子機器も触れますって書いてあったらダメだよ。


 「で、電子機器は何なの?」


 それを聞いてツボミちゃんは嬉しそうに人差し指を立てた。


 「再生録音機。ほら、電子機器でしょ?」


 「う〜ん。詐欺ではないけど誤解生みそうだから禁止」


 「だめか〜」


 そんなこんなで朝イチで起きたどのような手段で詐称するのかの会議が終わった。

 あ、確認してみると神社の雅楽とか公民館での伝統楽器の講習会とかで活動しているみたい。


 それから朝礼を迎え、いつもと変わらない授業を受ける。

 その中でも唯一異なるのが、チヒロさんが学校に来なかった。

 

 そして部活動、ワラとカマタくんは前日喧嘩してたけど大丈夫かなと思っていた心配は杞憂で終わった。

 どうやら昨日の夜仲直りしたみたいだ。


 とりあえず今日の活動は計測だけで終わり私はワラと行動を共にしてササ先生の元に向かった。


 「ウズメ? どうしてササ先生のところに?」


 「ほら、今日チヒロさん休んだでしょ? どうしたのかなって」


 「——そう」


 ワラも何か思うところがあるのか、何も言わずに生物工学科の職員室まで一緒に来て中に入りササ先生の元に来た。

 ササ先生は私とワラに気づくと頭を抱えるほど膨大な書類から視線を外し私たちを見た。


 「あら、ウズメさんとミコトくんじゃないですか。どうしました?」


 「あの、単刀直入ですがチヒロさんに何かありましたか?」


 私がそういうとササ先生はしばらく考える。


 「あぁ、チヒロさんはしばらく公欠ですね」


 「え、公欠ですか!?」


 「ウズメさん、職員室では静かに。特別に教えますから」


 「あ、ごめんなさい」


 一旦静かになった後、ささ先生は小声で話し始めた。


 「今チヒロさんは大学でウズメさん達がしている研究の情報を詳細をまとめに行っているんです」


 「そうなんですか?」


 「えぇ、一週間ほどですけど。分析を進めるみたいです。実際培地には植物の栄養につながるものがあるのか、それとも培養している放線菌にあるのか色々と」


 「——どうして私に相談しせず」


 「ウズメ、気にしなくても良い。多分、進展せず飽きられていると怖かったからだと思う」


 気づけばワラは珍しく私にそう言った。

 この光景を見てかササ先生は嬉しそうに微笑んだ。


 「取り敢えずです、部活動とかは内向的な人は誰かに頼るのをとにかくしたがりません。みなさん気づいてませんが、チヒロさん意外と悩みに弱いので」


 その後、ササ先生が色々とチヒロさんについて教えてくれた。

 どうやら私と一時あったいざこざの後、色々とあれからササ先生に相談していたようだ。

 どうやったら組に馴染めるのか、どうしたら相手を楽しめる会話ができるのかなど色々あったらしい。

 

 そして今回の公欠も、自分から話せるようになりたいという自分自身の意思だという。

 だけどそうなってくるとチヒロさんは私とかと話す際にも日頃から顔色を伺っていたのかなって思ってくる。


 私はそんな気持ちで職員室から出るとワラと共に帰路についた。

 電車の中、ワラとは相変わらず会話はないけど不思議とワラとなら無言でも居心地が悪くない。そこが不思議だ。


 「ねぇ、ワラはどうして無言の間でも堂々としていられるの?」


 「別に苦じゃないから」


 「——そうなんだ」


 ワラに体を寄せるとワラはゆっくりと腰に手を回して私の肩に手を置いた。

 

 「——ねぇ、もしかしてだけどワラのこういう優しさで結構傷付けたことってある?」


 「——ない」


 「だったら今からチヒロさんの家に行く?」


 「今から?」


 「うん。いや?」


 ワラは首を横に振る。そしていつも通りの小さな声で「行こう」といった。

 それから本来はやっては行けないけど、電車から降りた後折り返し乗車しチヒロさんの家に向かう。

 そして駅から降りた後二度目の大きな屋敷に来た。


 私は緊張しているけどワラ慣れた様子で玄関に行くと門を叩いた。

 私は咄嗟に笑の後ろに隠れる。


 「どうしたの?」


 ワラは疑問の顔を浮かべる。

 ——まぁ、我が道を行くワラには分からないだろう。ちょっと気まずい友人の家に来ちゃうことが。


 しばらく待つともんがゆっくり開き、中からチヒロさんそっくりな見た目で私よし取り上のお姉さんが出てきた。

 うん、明らかチヒロさんのお姉さん、チヨさんだった。

 チヨさんはちょど仕事が終わり、入浴した後だったのか髪が少し湿っていた。


 チヨさんは私たちを見てすぐに名前と顔が一致したのか優しく微笑む。


 「——あぁ、あなた達だったの。えっと、どうしたの?」


 「あの、チヒロさんと話したくて……」


 私がそういうとチヨさんは「あーなるほど」と口にして教えてくれた。


 「チヒロは今メグミの、ほらウズメちゃんなら分かるでしょ? あの子のいる大学で今成分の分析に行っているの。その代わりにメグミの研究を手伝っている感じよ」


 「なるほど。じゃ、どうして一人で行ったのかは……」


 「え〜と。言いづらいんだけど……」


 チヨさんはあからさまに悩む。もしかしたらなんか隠しているのかも。

 

 「ウズメちゃんが高校の看板娘になるとかでチヒロは気を遣って一人で行った感じなの。カマタさんは副業があるからでヒビワラさんはウズメちゃんとお付き合いしているから可哀想という理由かな」


 「……え?」


 私は特に理由はないけどワラを見る。

 ワラはしばらく真顔で考えた後、納得したの顔を少しあげる。


 「ただ周りに気を遣っただけ?」


 「まぁ、そんな感じかな」


 なるほど、おおよそチヒロさんのやりそうなことだから納得できる。

 だけど一言ぐらい入って欲しかった。

 チヨさんはそんな私たちを見てか何か思い出したかのように話し始めた。


 「だけど夕方ぐらいに余裕ができたからメールを送ったとか良いっていたけど見てなかったの? チヒロも急に許可降りたみたいで直ぐに行かないとだったから連絡の猶予がなかったみたいよ?」


 「え、メール?」


 「えぇ」


 私は咄嗟にメールを見る。

 しかし来ていない。もしかして迷惑メールに入っている?


 「あ、ごめん電話出るね」


 私が必死にメールを探している間、チヨさんは懐から携帯を取り出して電話に出る。何やら少し揉めているようだった。

 まぁ、もしかしたらワラに来ているだろう。


 「ねぇ、ワラメール来てる?」


 「別に来てない。——妹から来た」


 「——ふ〜ん」


 「転送でチヒロからの」


 私は咄嗟にワラの携帯を奪い画面を見る。


 『ヒビワラさんへ。今日は唐突の欠席をしてしまい申し訳ございませんでした。電車の中携帯電話の充電が不十分で乗っている間使用することが出来ずここまで遅くなってしまい申し訳ございませんでした。

 あと、電話帳から送ったのですがお間違い無いでしょうか? 何せ番号を交換したのは旧型のを持っていたせいで、偶然持ち合わせていのたヒビワラさんのみしかできないので届いていたら幸いです。

 あと、ずいぶん遅くなってしまったのですが私が少しの間公欠していることを皆様に話してくださると幸いです。


 追記、兄さんいつになったらこの番号を教えるのをやめるの?』


 そう書いてあった。

 てか番号が二つあるってワラは一体何をしているんだ。

 

 「あの、ワラ。なんで番号が二つあるの?」


 「あれ子供用携帯だから別枠だった」


 「——ということはチヒロさんが持っているのは子供用携帯?」


 よs、そこはもう触れないでおこう。

 確か子供用携帯って今のお爺さんおばあさんが中学ぐらいまでの標準携帯で、登録できる番号だと詐欺とか掛かりやすいからでややこしくした新しい基準を作って生まれたのが今の携帯番号。


 まぁ、子供用としてはまだ流通しているんだけどね。電話とメールのみで。


 するとチヨさんが大きな声で怒鳴った——というより笑い始めた。


 「え!? 間違えてヒビワラさんの妹さんの携帯に送った!? てかそうだったらあなたも新しいのそろそろ買い替えなさい。情報共有する身にもなりなさいよ」


 そう、子供用携帯と今の携帯が連動できないのは設計が根本的に異なり、連携することがまず無理になっているからだ。


 そしておそらく電話の相手はチヒロさんだ。

 チヨさんは少し申し訳なさそうな顔でこちらを見た。 


 「ウズメちゃんたち。家の中にどうぞ。チヒロがどうしても話したいって」


 「は、はい。お邪魔します」


 「します」


 私とワラはチヨさんに今に案内され、お茶とお菓子を出された。

 チヨさんは少し仕事をするといって携帯を机の上に置いてこの場を後にした。

 携帯の音量を上げるとチヒロさんの声が聞こえてきた。


 「あ、あの〜ウズメさん?」


 携帯からこの場にいないはずのチヒロさんの声が聞こえた。


 「あ、チヒロさん聞こえる?」


 「ウズメさんですか? 聞こえます。えっとヒビワラさんもいる感じですか?」


 「うん。いるよ」


 「そうですか……。えっと、今日は唐突にすいません。公欠と言っても授業の一環となっているので当日連絡で許可されていたんですがとにかくすいません」


 「ううん。気にしてない。ちょっと驚いただけで。チヒロさんも私たちのことを考えてしてくれたんだよね?」


 「えぇ、まぁ……」


 電話越しでもチヒロさんが照れているのがなんとなくだけど分かる。


 「チヒロさん。この件については大丈夫なんだけど、ワラと何かなかった? 一応事情はもう聞いているよ」


 「——え? あれ結構大事に?」


 「うん。何かワラがそのひどい言い方をしたとかそんな感じじゃなかった?」


 「あ、あれは〜そう言うのじゃなくて——その前にヒビワラさん。もしかして誤った言い方してません?」


 私はチヒロさんの言葉にワラを見る。ワラは特に分かってなさそうな顔で私を見る。


 「え〜と。説明お願い」


 「あれは私の従兄弟というかヒビワラさんの幼馴染のサカキから確かにヒビワラさんに自分のことが好きなのかを聞いてくれとは確かに言われましたけど……あれは恋愛じゃなく」


 「ワラ?」


 ワラは白を切り私から視線を逸らした。

 まぁ、ワラだって悩んだり困惑するよね。


 「とりあえずウズメさん。一応ですけどサカキさんは諦めに決心つけようと私を介して聞きにきただけです。ウズメさんと付き合っているのは私から報告済みでしたので」


 「だけどチヒロさんワラのこと好きとかという感情は……」


 「あぁ、まぁその。付き合っているって知る前に一度告白してしまったのは自白しますけど、ウズメさんと付き合っているって聞いてとても満足しました。確かに私では足りないので。ウズメさんのことを応援しようと決めたんです」

 

 「あ、そうなんだ……。えっといつぐらいにしたの?」


 「去年の師走ですかね。その時にしたらウズメさんと付き合っているって言われまして」


 あ、かなり最近だったんだ。

 電話越しだからわからないけどチヒロさんは申し訳なさそうに話す。

 ワラはというと申し訳ないと思っているのか、私を後ろから抱きしめている。そして胸に手を伸ばそうとしているのを空気的に違うと食い止めている。


 「とりあえずヒビワラさんも、私のこと気にしないでウズメさんに気を配ってください。サカキさんも諦めがついて楽しそうに過ごしているので」


 「——分かった」


 ——それからしばらくチヒロさんと雑談を楽しんだ。

 その後3時間話したところでワラとチヒロさんとの間にあった壁みたいなものがなくなったのか、チヒロさんは気軽に喋った。


 どうやらチヒロさんは結構人と話すのが苦手で、私に話しかけられた際にも普通を取り繕うと躍起で敬語だったらしい。

 そんな中、私はある相談をチヒロさんにした。


 「えっと、チヒロさん。唐突だけど不登校の子に学校は楽しいところって伝える方法ってあるのかな?」

 

 「えっと、不登校の子にですか?」


 ワラはすぐに見込みさんだと感づいてくれた。

 ミコミさんあの感じ学校にはもう愛想が尽きている感じだ。

 それに不味いのがワラが優しすぎる。

 そうなるとワラがいればなんとか行けるって思い込んで自分から外に出るのをやめてしまう。

 チヒロさんはしばらく考えた後、ある一言を言った。


 「でしたら、学校公開の日に招待はどうですか? 確か二月ごろにありましたよね。その日生物工学部は体験授業で中学生の方々に受けている授業を簡単にですか紹介するんです。あ、内容については来週になりますけど、その日でしたら楽しめますよね」


 チヒロさんは意気揚々に語った。

 ——あ、その手か。

 私も確かに縫お姉ちゃんに連れられてきて楽しそうと思ってきたんだ。てっきり同じ手は効かないと感じていたけど、あれは意外と使えそうなのかも知れない。


 「ねぇ、ワラも良いよね」


 「構わない」


 ワラはそう満足そうに言った。


 「チヒロさん。ありがとう。そうして見る」


 「はい。では、これから少し用事があるので——」


 「あと、メグミお姉ちゃんに帰省したのに来れなくてごめんって伝えてくれる? 来年帰ったら行くって伝言も」


 「え、はい。分かりました。では、また来週」


 「うん、またね」


 私はそう言って通話を切る。時計を見ると3時間ほど会話をしていたようだ。

 両手を伸ばすのワラの顔に当たった。


 「あ、ごめん」


 「気にして無い」


 ワラはそういうと私のお腹を撫でる。

 まぁ、構わないけど普通に恥ずかしい。


 「ウズメ」


 「何?」


 ワラはゆっくり私を後ろから抱きしめた。なんかお尻に当たってる。

 不思議と変な気分になるけど嫌な感じじゃない。


 「ワラ。ダメ。ここ人の家だし。するならせめてワラの家の中で」


 「少しだけでもダメ?」


 「スケベ」

 

 その後私とワラはチヨさんに携帯を返し帰宅した。外を出るともうとっくに夕暮れ時だった。

 ワラとは途中電車でまた明日と言って別々の道で帰り家に着いた。

 家の中に入り今に向かうと今から晩御飯を作り始めようとしている母がいた。


 「あら、今帰ったところ?」


 「うん。少し遅くなった」


 「ふ〜ん」


 お母さんは疑いの目を向けながら私の匂いを嗅ぐ。


 「男の匂いがするけど? 本当に部活動? 何もされていない?」


 「お母さんにはされた」


 「そう、何も無いようね」


 お母さんは安心したかのように言うとご飯の準備に取り掛かった。

 あ、ワラと付き合っていることいつ伝えよう? 

 私はそんなことを考えながら、ミコミさんに農業高校の楽しさをどう伝えようかと思いを寄せた。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る