第29話 我を持って群れる

 時間帯で言えば朝。それもとても早い時間で教室には私を入れて担任の女教師と男子生徒の三人しかいない。

 普通であればいぷうかわって風景でも状況でもない。だけど今この状況はもし言語化すればどうなるのだろうか?

 例えば筋肉痛で苦しんでいる男子高校生と女教師。しかも同じ時間帯で同じ教室の中にいる。

 これがもし創作上の世界の話であればどちらかが卑猥なことをしていたと読者は思うかもしれかいけどこれは現実。


 特に男子高校生に関しては一応私と付き合っている程だし、女教師に関しては私が所属している組の担任の先生。

 なんだろう、この青春ものにありそうなドロドロした空気は。


 私はとりあえず教室の中に入り一度外部の情報が漏れないように扉を閉じると男子生徒——ワラに近づいた。

 ワラは体をプルプル振るわせ、机に伏せているわけだけど何かあったのかな?


 「ねぇ、ワラどうしたの?」


 「——昨日ウズメの心の中に入って白鬼を倒した」


 「うん。それで?」


 「その後ササに遊びで斬られて今筋肉痛」


 「はい?」


 私はササ先生を見る。

 ササ先生もワラと同じように筋肉痛で苦しんでいた。多分ササ先生は全身なのだろうか、体をプルプル震わせている。


 「ササ先生。いったいどう言う事ですか?」


 「——かなり分かりやすく言うと精神世界で私たちが負った怪我は現実では筋肉痛として反映される感じですね。ミコトくんは首を切っただけですけど私は全身。痛みで言ったらミコトくんは寝違いで私は全力を出して運動した次の日ぐらいの痛みですね」


 ササ先生は腕を震わせながら手振りで教えてくれた。


 一体二人して何をしてたんだと言いたかったけどやめとこう。

 そういえば昨日の夜、縫お姉ちゃんが珍しく私と寝るって言ったから寝たけど、その時手に何かお守り的なものを握っていたけど、もしかしたら何かしらの手段を使って白鬼を斬ったのかもしれない。


 けど、なんだろう。安心した気がする。


 「あの、私はもう大丈夫なんですか?」


 「一応大丈夫ですが……いや、今は大丈夫の方がいいですよね?」


 「え?」


 え、今はってどうしてそんな含みのある言い方……。


 「確かにウズメさんの中には白鬼はいないです。あとはウズメさん次第。ウズメさんが白鬼がもう干渉できないほど楽しく学校生活を謳歌する。ただそれだけです。現に今ウズメさんの後ろで霊体となって堂々といますよ」


 「え!?」


 私は振り返る。けど、どこにもいないんだけどいると分かってだけでも訂正、安心しません。


 「とりあえず今日は放課後帰ったら藍姫と話してみてください。昨日の夜ウズメさんの心の中に現れて私とミコトくんにいろいろ話してくれました」


 「そうなの?」


 ワラを見ると頷いた。おそらく本当のことなんだろう。


 ——また、ワラに助けられたんだ。


 「——私はおじゃま見たいですね」


 ササ先生はそういうとゆっくり教卓から立ち上がった。

 ——そう言えばどうしてササ先生がこの教室に?


 もしかしてササ先生とワラの間には秘密の関係が……。


 「あの、ササ先生……その」


 「どうしました?」


 「——ワラと、どんな関係ですか?」


 ササ先生の顔は驚きの顔になる。

 やっぱり何か秘密があるのかな? 分からないけど。

 そして次にササ先生は何か面白いものを見る顔になり、そして優しい顔で首をかしげた。


 「従兄弟ですね」


 「付き合って——え?」


 今なんて言った。従兄弟?


 「私とミコトくんは従兄弟同士です。師匠と旅している時も私にとっては弟でしたよ。あと、付き合ってたら教師と生徒の関係上ダメです」


 「え、二人付き合ってないんですか!?」


 「そんなわけ無いじゃないですか。ミコトくんは私にとっては弟です。ミコトくんは確かにスケベですけど私にとってはただのかわいい弟ですよ」


 ササ先生はそう言いながら私を見てニヤニヤ笑う。

 多分ササ先生これ私とワラが付き合ってるの実は知っていてその顔なのかな?


 「——春画をその弟の家に勝手に入って隠す人になりたくない」


 「何か言いました?」


 「なんでもない」


 ワラはそういうと眠そうな顔になってそのまま寝た。

 試しに頬を突いてみよう。


 私は人差し指でワラの頬を優しく突く。


 ——いや、本当に寝てた。


 「では、私は職員室に戻ります。後ウズメさん。農業実習の提出物は締め切りを過ぎた後先生が来る前にこっそり提出して未提出扱いにならないようにしようとしてはダメですよ」


 「え!?」


 「では、朝礼までゆっくりしてください〜」


 ササ先生はそういうて私に向かって手を振りながら教室から出て行った。

 いや、なんでバレてた? もしかして——いや、そういえば農業実習教員室って確か生物工学科職員室から思いっきり見えるんだった。

 提出するノートを入れる箱は見えないにしろ、ノートを持って来た女子高生が帰り道でノートを持ってきていないのって明らか不自然だしね……。


「ウズメさん」


 私は後ろから聞こえたチヒロさんの声? 

 振り返るとチヒロさんがそこか圧がある顔で私を見ていた。どうしたんだろう? もしや聞いていたのかな?



 「ウズメさん。聞いてましたよ。あと、ずっとあの会話私が空気でどう入れば良いか悩みましたよ」


 あ、やっぱり聞いていた。これ絶対お説教だよね?

 チヒロさんは私にゆっくり近づくと両肩に手を乗せた。


 「とりあえずそんなことより……ヒビワラさんと付き合っているのですか?」


 「え?」


 そのチヒロさんの言葉に私は何も答えられず、とても冷たい冷気が教室を包んだ。これは外気が冷たくなったからか気まずい空気のせいか、もしくはチヒロさんから発せられたものかはわからなかったけど、とにかく冷たかった。


 私が唾を飲み込むとチヒロさんは表情を一切変えず普段通りの優しい笑みを浮かべながら一歩後ろに下がる。


 そしてなぜか安心したような表情で息を大きく吐く。


 「なるほど。そういうことですね」


 「な、何が?」


 「え、決まっているじゃないですか」


 チヒロさんはゆっくり私に近づくと手を握った。


 「——ウズメさんに今からでも遅くない男女の付き合い方と、正しい保険の授業を致そうかと。ウズメさんって何もかも了承してしまうのでそうならないような訓練をしようかと」


 チヒロさんはとんでもないことを口走った。いや、右下見て。そこの席にワラ座ってるから。絶賛寝て——。


 あれ、少し動いてる?


 「ウズメさん。良いですか。正しい男女の付き合いは——」


チヒロさんは突然顔を真っ赤にしながら固まった。視線は私にではなくそのずっと後ろに向かって。

 それにつられて私は振り返るとツボミちゃんとその取り巻きが顔を真っ赤にしながらプルプル震えていた。


 「あ、いえっ——」


 「君たち正座。あとミコト起きてるでしょ」


 朝礼前、私とチヒロさんはツボミちゃんにこっぴどく説教された。まぁ、朝方で頭が桃色の話題は流石に怒られてもしょうがないとは私は思うけど、朝礼ギリギリまでは正座は恥ずかしかった、組のみんなとても見ていたし。


 それから授業が終わって放課後になり部室に向かう。流れとして一番最初にいつも通り会議しえ各々指定された行動を賭すことになった。


 「え、えーと。とりあえず今日の実験はいつも通りですね……」


 「畑作業と薬品投与やな。今のところはするやつしないやつは変わらんけど、一応枯れるまでやんな?」


 「ですね」


 カマタくんの質問にチヒロさんは返す。

 一応今している放線菌の研究の成果はかなり乏しい。


 畑で作物を使った実験をしているとはいえアブラナ科に絞ったとは言っても寿命が少し伸びている程度で目立った違いはない。

 

だけど……夏から鉢植えに植えられて薬漬にされてるハツカダイコンは本当に長生きだ。ほとんど瀕死だけどまだ生きている。

 

なんだこいつ……と言いたいけど、薬の効果で生きながらえていたら嬉しいけど多分鮮度はイマイチだろう。


 チヒロさんはこほんと喉を鳴らした後「とりあえずこれの繰り返しですね」と言った。


 それからワラとカマタ君が培養液を希釈して、チヒロさんに呼ばれて隣の準備室に向かう。

 するとそこの棚から顕微鏡が入った大きめの箱を私に渡した。


 「はい」


 「う、うん」


 重い——。


 そして部室まで運ぶと机に置いて設営する。


 「えっと、今からシャーレで培養している菌を見るんだよね?」


 「ですね。一応どんな菌がいてその菌の種類を特定です。菌の集合体だけでもどの種類の菌かは一応特定はできます。例えばカビか細菌かもしくは放線菌ですね」

 

 「なるほど」


 「できれば学校が持っている遺伝子検査機器を使用したいのですが、今予約が埋まっていますし。一応予約は取れましたけど先に使っている人が長かったら無理ですしね」


 「え、してたの?」


 「はい。今日の予定です。一応ツキヤ先生がしてくれるみたいですけどね。その後私を呼びに来てくださって配列表の読み方を教えてそれを私がみんなに教えるという感じです」


 「ふーん……。けど、それならここで良いんじゃ?」


 「」


 これ多分チヒロさんみんなに苦労させないために一人でしてるよね。別に頼ってもらって良いのに……。

 いや、逆に私はチヒロさんのことに気づいているのに助けてない。それが一番ダメだと思う。


 だったら、今どう声をかければ——。


 「ウズメさん。早く見てください。一応今日中にはこのシャーレを済ませたいので」


 「え?」


 机にズラリと並べられているシャーレが私の視界に入る。その枚数は三十枚だった。


 「一応見たことがない菌の集合体から試料をとって見ますのでやく六十個ですね。がんばりましょう」


 チヒロさんはこれまでに無い語尾に星の印が見えるぐらい楽しそうだった。

 もしやチヒロさんワラのこと好きだったの? そして苛立ちを和らげようとして——!


 私がなんとかしないとチヒロさんが危ない!


 「チヒロさん! 私が相談に乗るから困ってることとかない!?」


 「え?」


 「だってチヒロさんがこんな無計画なことなんてしまうもん! いつものチヒロさんなら——」


 けどなんだろう。どうしてチヒロさんは何かやってしまったみたいな顔をしているのだろう? 多分、冗談のつもりが私が思いの外乗ってしまったことで反応に困っているのだろうけどだとしたら早く反応してほしい。


 「えっと、すいません。ふざけすぎました」


 「——なら良いけど。で、どうしたの?」


 チヒロさんは少し恥ずかしそうにウジウジする。


 「なんというか、朝から卑猥なことをしてすいません。試料ですが今日は時間がある限りですね。なのでウズメさんはここで待ってください。私は今からプレパラートを作るので」


 「うん。分かった」


 チヒロさんはそういうとクリーンベンチに向かう。


 それから試料を観察してその記録を残し、作業と時間が淡々と流れていき一時間半が過ぎようとした。

 試料を見たときは形を記録していくなかで、詳しい人なら種類はわかるかもだけど私にはわからない。

 もちろん細菌の形ぐらいはわかる。例えば球菌、桿菌、らせん菌。基本的に私が見ている菌の形は桿菌がほとんどだ。


 桿菌とは細長い菌だからすぐに分かる。どんな菌と言われたら納豆菌と大体は同じだと思ってほしい。


 だけど見た感じ培養液を投与している土はかなり綺麗なのか雑菌は少ない印象だ。

 

 私は前で紙に菌の大まかな統計をとっているチヒロさんを見た。


 「ねぇ、チヒロさん。一応だけど培養液を投与してる土にいる菌って放線菌取れてそうなんだけどどうかな?」


 「そうですね。見た感じは良く土にいる菌って先生は言ってますね。量で言えば少ないかな〜と行った具合です」


 「そうなんだ」


 「あ、けど放線菌にも病原菌となるのがいるので放線菌だからと言っても良い菌とは限らないからないですからね」


 「そうなの?」


 「はい。その病気は放線菌症と言って人や家畜、作物に影響を及ぼすものもごく僅かにいます。今私たちが使っている菌は実験で大丈夫なのは分かってます。ほら、酵母を使って抗菌検査をしたと思いますが、それは酵母は真核生物で人と同じ細胞なので酵母に影響が少なければ人でも少ないを証明するためにしていたんです」


 チヒロさんは早口で解説してくれた。

 とりあえず今実験は順調という解釈で良いのかな。すると部室の扉が開かれ、外からツキヤ先生が顔を見えた。


 「チヒロさんはいるか? 遺伝子検査の結果出てきたからって生物部のコウヤ先生が読んでたぞ」


 「あ、はい! 分かりました! あ、ウズメさんはその今してる作業をしていてくれますか? すぐ戻りますので」


 「うん。分かった」


 チヒロさんはそういうと部室から出ていき、ツキヤ先生とどこかに行った。

 部室を見渡すと気づけば私一人だった。

 ワラとカマタ君は農場に行って私たちの研究班が管理している畑に投与しに行ったんだろう。


 「ウズメ」


 「え?」


 振り返るとワラが立っていた。

 私は無意識で飛び上がるとバランスを崩してワラの胸に飛び込み、ワラの気持ちい温もりが直接伝わる。

 

 「ウズメ?」


 「み、みないで……」


 私はワラから離れて両手で顔を隠す。

 どうしよう、これどう言えば良いんだろう? ていうかワラはどうしてここに? 畑の水やりと作物の計測はどうしたの?


 「作業は全て終わった。チヒロは?」


 「あ、終わってたんだ。——チヒロさんは遺伝子解析が終わったみたいで記録を撮りにいってるみたい」


 「そう」


 「か、カマタ君は?」


 「カマタは用事で帰った」


 「あ、だから荷物を持って行ってたんだ」


 「——」


 ワラは静かに頷く。ワラはあった時から表情は変えていない。だから私の考えていることとワラが考えていることは一致しているのかは分からない。

 もしワラが——例えばだけどワラが私を好きと言う気持ちも嘘であればどう私は思えば良いのかは分からない。


 『情の渦』


 ワラは確かに私にそう告げた。情の渦とは何か私にはいまいち理解出来ないし……。いや、もしかしてだけど——。


 「ねえ、ワラ。白鬼なんだけど……あれ、負の感情を食べるんだよね?」


 「——もう気にしなくても良い」


 「ううん。別に気にしてないんだけど……。白鬼はまるで私みたいだなって」


 「——?」


 ワラは予想通り首を傾げた。

 そう、白鬼は多分私自身。白鬼については私は詳しくは知らないし、語る権利は一切ないと言われてもしょうがないと思う。

 だけど藍姫が嫉妬し、チトセ校長先生が白鬼を藍姫に何故憑依させたのは分からない、だけど——。


 「白鬼は校長先生が藍姫に取り憑かせたのって感情の渦に呑まれているのを助けようとしたからじゃなかって思うの」


 「——なぜ?」


 「人は情に呑まれると自分ではない何かになる。例えばよく学園モノの話で取り巻きとそれを率いいる頭領的な存在がいるけど、取り巻きたちはみんな頭領の言うことに純情に賛成する。それって情の渦で苦悩した結果とりあえず何も考えないでいようって逃げているんじゃないかって思ったの」


 「——」


 ワラは私の戯言を黙って聞いてくれている。

 けど、不思議とワラはこれは適当に聞き流している様じゃない。そんな気がする。


 「ツボミちゃんとかはあれは例外だけど……白鬼は私みたいにさまざまな感情で揺さぶられて苦しんでいる藍姫に校長先生が自分に自身を持たせて、人生を謳歌して欲しいからと言う感情で取り憑かせたのかなって」


 「ウズメはそう思ってた?」


 「そう思ったのは今更なんだけどね……」


 「ウズメは今を楽しんでる?」


 「うん……。多分だけど」


 「少なくとも俺の目からはウズメが思っている以上に楽しんでいるように見える」


 私が……楽しんでる?


 「ウズメはもっと自信を持って良い。色々な情に悩んだら相談に乗る。だから安心してほしい」 


 「え、ワラ?」


 ワラは腕を私の腰に回すと優しく抱いた。


 「それと、ウズメは誤解してる」


 「何を?」


 「校長先生は本当に何も知らずに、とりあえず嫉妬しないように適当に白鬼を押し付けただけだから」


 「——え?」


 「今から聞いてみたら?」


 「——分かった。言ってみる。あと、女の人をすぐに抱きしめるのはどうかと思う」


 「分かった」


 ワラは私から手を離す。私はすかさず校長室に向かった。


 ——校長室に向かうと携帯にチヒロさんからメールが来た。どうやら私が部室から出た後ちょうど戻って来たみたいで、ワラが私はトイレに言っていると言うことにしてくれているらしい。なら、さっさと済ませてしまおう。

 

 校長室の扉を軽く叩くと中から声が聞こえる。開けると校長先生が水槽に入っているタコに餌をあげていた。

 校長先生は私に気づくと私に視線を向けた。


 「おや、ウズメさん。白鬼どうだった?」


 「白鬼について話があります」


 「——うん。言って」


 校長先生は私から視線を逸らすとタコとのじゃれ合いを始めた。

 校長先生自体タコと同じだから同族意識があって会話しているのかな?

 いや、今はそんな事はいいか。


 「校長先生は藍姫に白鬼を取り憑かせたのは何でですか? わざとですか? それともきちんと考えがあるからですか?」


 「——」


 校長先生は一度手を止めると天井を見た。


 「まぁ、ないわけではないけどボクは彼女には幸せになって欲しくってね。今まで彼女——藍姫は恋をしたことがなかった。そして大夜に恋して今までの表に出なかった負の感情に揺り動かされてとっても苦労したんだ。それで彼女はボクに相談したんだ」


 校長先生は目から涙を流す。


 「ボクは彼女に救われた。だから恩返しに負の感情を喰らう白鬼を敢えて彼女に取り憑かせたけど白鬼は僕が思っている以上に強く、払うことも出来ずに封印しかなかった。もちろんこれはボクが悪い。——君を入学させたのも、それもあるんだけどね?」


 校長先生は私をみるとニヤリと少し悪そうな顔で笑った。


 「——私が……」


 「うん。君が彼女が転生した身なのは知ってた。縫さん、ヒビワラくん、ササからも聞いていた。だから君を入学させようとしたけど……うん、面接が印象的だったからかな。うん面接だけが」


 「——それって試験が壊滅的にボロボロだったと言うことですか?」


 「当たり前なんだよなぁ……」


 私は校長先生に近づく。しかし校長先生は空中に逃げた。


 もう……私だって頑張ったんだけど。


 校長先生はケラケラ笑うと窓をゆっくりと開けた。


 「君。高校楽しい?」


 「——まぁ、楽しいです」


 「なら良かった。君は彼女と違って、もう感情に揺さぶられないよう自分自身を磨くことができたんだね。己を持って己とわかりあうことが出来る友。人は群れて生きる動物。だから君は、群れても己として存在できる集団に居るように。校長先生の助言だよ!」


 校長先生はそう言うと窓から逃げた。

 まぁ、もう良いか。早くしないとチヒロさんは起こりそうだし、早いところ戻ろう。


 そして、藍姫と少し……ほんの少し話してみようかな。

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