第20話 土臭い研究
「では早速、実験を行います!」
体育祭が終わって三日後の放課後。実験室で元気な声を出してやる気に満ち溢れた女子高生は私の親友のチヒロさん。
そしてそのやる気に満ち溢れた声に合わせてカマタくんは「やったるで!」と声を出し、ワラは私の隣を普段通りではなく、どこか興味を持ったかのような感じでじっと見つめる。
まぁ、おおよその原因は分かるけど。
そして早速実験に入ろうとしたその時、実験室の扉が開いた。
中に入ってきたのは総髪にした一見大人びた破天荒な優等生であるキク先輩だった。
「あ、ごめんごめん。チヒロちゃんに呼ばれたのに遅れちゃったよ〜」
「あれ? キク先輩。どうしたんですか?」
キク先輩は珍しく実験室にやってきた。それにしてもチヒロさんが?
「えーと。まず皆さんに謝らないといけない事があるんですよ」
チヒロさんは申し訳ない声を出す。
そしてキク先輩は一旦準備室に入ると数秒足らずで戻ってきた。
キク先輩は菌が繁殖した培地を三個ほど持ってきて、机の上に置いた。
「えっとチヒロちゃんが使った放線菌はどれかな?」
するとチヒロさんは一つのシャーレに指を差した。
そのシャーレに繁殖しているものはキク先輩の言葉から放線菌で、その菌が繁殖し固まっているものは表面がツルツルしていた。
するとキク先輩はどこか情けない声を出す。
「あーチヒロちゃん。これ数年前の先輩が使ってた放線菌の標準株だよ。一応放線菌の研究が再開された時用に先生が培養してくれていたんだろうね。もしかしたチヒロちゃん、ここから分離させて放線菌用の培養液に入れて繁殖させちゃった?」
「はい、確かに使いました」
チヒロさんはシャーレをガン見しながら答える。
それからチヒロさんが説明してくれた。
どうやら私たちの研究で使っていたものは数年前の先輩が扱っていた放線菌で、それより前の先輩が使っていたものとも違ったらしい。
その先輩が使っていた放線菌はどうも実験当初よりも抗菌性が弱体化しており、使い物にならなくなったため、それを解決するべくその放線菌に似た放線菌を見つけ、繁殖させたらしい。
チヒロさんはまさにその新しい放線菌を使用したかったみたいだけど、うっかり間違えてしようと言った感じだ。
キク先輩はシャーレを机の上に並べた後、チヒロさんから実験方法が書かれた紙を見た。
「うーん。見た感じ培養液をかけたウネは一つだけなの? それとも畝の半分?」
「一応ウネの半分で分けました。もしかしたら間違えてました?」
チヒロさんがそういうとキク先輩は自分のカバンから真っ白の紙を取り出し、畝の絵を描いた。
「確かに今チヒロちゃん達がしてる研究はとてもいいものだと思うけど、これだと仕切りがないでしょ? だからその畝中に放線菌が広がっちゃうの。特にかけてるところとそうじゃ無いこの検体なんかは影響を受けるよ」
「あ、確かに……」
チヒロさんは納得した感じで口を少し開ける。
私はチヒロさんとキク先輩の話に耳を傾けつつ、隣のワラを見る。
ワラは私の一歩後ろのじっと見つめ、カマタ君もワラが何を見ているのか気になったのかじっと見ていた。
あらかじめ話しておくとワラがじっと見ているものは体育祭終了後お母さんが心霊雑誌に書かれていた降霊術を使って降りて来てしまった幽霊だ。
その幽霊は縫お姉ちゃん曰く危険じゃないそうで、あとはこの世の未練を晴らしたら消えるみたいだけどどうにかならないものだろうか。
「なるほど、分かりました。教えてくださりありがとうございます」
チヒロさんはキク先輩に聞きたいことを全て聞き終えたのか大きな声で感謝の声をキク先輩に渡した。
キク先輩は「良いってことよ!」と自身の胸を軽く叩く。
チヒロさんはキク先輩から聞いた助言をまとめた紙をじっと見る。
「確認ですがとりあえず農薬の研究は今年は標準株が培養された培養液、それからは普通の水で観測して、その中間発表を八月に。まぁ……そのあとは頑張って」
「確かに……、もうウネが培養液で汚染されてますからね……」
「だけど! 先輩としての助言で無菌の培養液の分量を変えて本当に放線菌の効果で成長しているのか見てみるのも面白いと思うよ」
キク先輩はそう言ってシャーレを持ち上げる。
「そういえばみんなはこれから研究だよね?」
「はい、研究です」
キク先輩はなぜか当たり前のことを聞いてきた。
そしてキク先輩はしばらく何も言わず培養器にシャーレを入れると私をいきなり抱きしめた。
「いや〜みんな楽しんでるね〜。私の時なんかは一年で先輩が毎日部活・研究する人たちで青春を楽しめなかったんでよね〜」
「キク先輩恥ずかしいです!」
私は必死に抵抗するけど一切解けなかった。
やはり体育祭で騎馬戦も模擬合戦でも最前線で戦っていてもなお疲れを見せなかった人は違う。
「ではそろそろ農場に行ってきます。あと高さの計測は頂点はどことかはありますか?」
「頂点? あー植物のね」
「はい。どこか基準がないとやりずらいと思いまして」
「なるほどね。そういえば野菜は何植えてるの?」
「えっと萵苣とカブです」
「あーだったらね。農薬とは言っても病気にならなければ良いわけでしょ? そして栄養素関連の実験に持っていくのなら。だけど二つだけだと比較はね……」
キク先輩は考え込む。
確かに実験としてなら検体は多いほうが発表の時有利になる。だけど少なかったらその実験に対して疑う箇所が出て来てしまうためあまり衝撃的なこととは思われない。
「だとしたら萵苣は成長点で、カブも成長点かな。葉の大きさはそれぞれ最低三枚計測して平均をとってね。実験は五月からなら計測はいつからかな?」
「えーと」
私はチヒロさんを見る。
「チヒロさーん! 計測はいつからしてた?」と大きな声で聞いた。
「計測は発芽してから少し置いて始めたので五月二十日からですかね」
「あ、だったらいけるかな〜。いつ植えたの?」
「二つとも五月十三日です」
「時期……間違えたよね?」
「本当にすいません!」
チヒロさんは申し訳なさそうに頭を下げた。
「多分ギリギリ間に合いそうかな。もうこのままやっちゃおう!」
私たちはキク先輩の声と共に希釈した培養液を持って農場に向かった。
その途中、私はワラに袖を引っ張られ、人気がない階段裏に連れてこられた。
夕日が差し込む階段裏は少し不気味で、逆光のせいかワラも少し怖いと言う感じになった。
それよりもワラの後ろにいる私そっくりな幽霊も大概怖いけど。
「ウズメ、体育祭のあと変な夢見なかった?」
「変な夢? あ、夢だったら見たけどなんかちょっと不思議な感じだったかな?」
「不思議?」ワラは首を傾げる。
私はワラに夢で起きたこと、それからワラ近くにいる幽霊について説明をした。
ワラはそれを聞いて納得したのかどこか顔が明るく感じた。
「で、それがどうしたの?」
「白鬼がその日の夜ウズメに乗り移ろうとしていた」
「本当?」
ワラは縦に首を動かす。
「その晩ササがウズメの家の近くに行くと、白鬼が舌をウズメの耳に入れてるのを見て大急ぎで倒した」
私は突際に両耳を押させ、身震いした。
だって普通に考えて気持ち悪いから。
てかササ先生こんな遅くでも来てくれたんだ。感謝しないと。
「あれが白鬼の本体なのは分かった。なのに完全に消えていない」
「き、消えた? え、消えたの!?」
「不完全だけど」
ワラは私に近づいた。
「白鬼は負の感情が集まってできた妖怪。そしてその白鬼の核はウズメの心の中にある」
「心の中って。まずそんなこと言われても反応に困る。一気に出たんじゃないの?」
「違う。白鬼の体の一部がウズメの心に置き去りにされ石みたいになってる。それも徐々の大きくなりそう。わかりやすく言うと尿結石」
うぁーなんか分かりやすい。
て、そうじゃなくてその理論だったら私の心の中で白鬼は徐々に大きくなっていると言うことになる。
「大きくなったら復活するの?」
「必ずする?」
「じゃどうすれば良いのよ」
「分からない。だけどたった一つの感情に流されず、自分の意思を持つことが大事」
「いや、持ってるけど?」
ワラは私の質問には答えず、そのまま農場に向かおうとした。
「待ってよ!」
私はワラの袖を掴む。
「もしかして私をアホ扱いしてる? 自分の意思を持ってないみたいに思ってる?」
「何を言っているのか分からない。そもそも持っていなかったら俺が好きと言った時にあのような反応をしないと思う」
「——!」
私は思い出して恥ずかしくなりうっかり手を離してしまった。
ワラはその瞬間に早足での階段を降り、私はそれを追いかけた。
「もう! その話はもうしないでよ! あれ本心でないのは私も気づいてたし!」
「俺は本心ではないことは口にしない。ツボミに言われたから」
「は、はぁ!?」
「解釈は任せる」
「——」
私はワラの言葉には何も返す事はできなかった。
ていうか、ワラのあれって本心? けどどうなんだろう。
私はそんなことを胸に入れながらワラについていった。
ただ、幽霊をちらっと見てみるとワラにものすごい眼圧で睨んでいた。もしかしてワラの不自然な話し方の理由……もしかして幽霊を少し怖がってた?
それから農場に到達した私とワラはチヒロさんに咎められた。当たり前だけど。
農場はカブと萵苣(ちしゃ)の芽が地面から出ている。
私はホースを水道の蛇口に繋いで持ってきた。
「あ、キク先輩」
私は野菜を一つ一つ入念にみているキク先輩に声をかけた。
「どうしたの?」
「計測はどうするんですか?」
「計測はねー」
キク先輩は葉っぱをじっと見る。
「まずそもそもの薬なら病原菌を使わないとダメなんだけど、だったらこの畑は使えないの。病原菌は植木鉢を使って室内で確かめる他ないからね」
「鉢植え……」
そういえば鉢植えにも種を蒔いたような。
「あ、そういえば鉢植えにも蒔いてました!」
「お、なら大丈夫そう。先生に相談したほうがいいかもね。だけど注意はしっかり消毒ね。外に出ると蔓延して停学では済まないかもだからね」
キク先輩はざっと恐ろしいことを口に出した。
確かに農業高校でこんなことすると本気でそうされかねない。
だからこそ安全確認は大事だ。
「あ、キク先輩。収穫で測定でしたらカブは抜いた方が良いということですか?」
チヒロさんはカブの葉を少し持ち上げる。
「うん。農薬でも肥料に近いからねこの研究。だったら培養液かけているやつとそうではないのも抜いて重さを測ろうか。それなら信頼度は高いし成長しているのかも分かるからね」
「分かりました」とチヒロさんは返事した。
「じゃ、今からカブを抜いて計測でそれからは試食して味を確かめて今日は終了しようか」
それから一時間ほど培養液と水をし野菜たちにあげて部室に戻った。
収穫したカブは水で洗い、そのまま食べて味の確認を行なった。もちろん重さを測った後だが。
重さはどっちも大差ないが、機械が曰く放線菌が入っている培養液をかけたものの方が重いようだ。
それから記録していた情報は葉っぱの長さ。
チヒロさんは自分の研究でみんなを巻き込んでいると思っていたのか、何も言わずに週に一回は賭けに立ち寄ってカブ、萵苣の歯の長さを測りその平均値を割り出していたらしい。
萵苣に関しては成長点を測定だが。
「では、ゆっくり味わって食べて食感などをしっかり残すんだよ」
キク先輩はそういうとカブをガブリと食べ、私も口にした。
結論、分からなかった。
チヒロさんはいっぱい文字を書いているが、ワラに至っては。
食感:カブだった。
みたいなことしか書いていない。
チヒロさんはいつの日か文章を書くのが苦手と言っていたけど、多分チヒロさんは物語的なものを書くのが苦手だけど、論述なのはすごくと得意なのだろう。
私はそれらしいことを書いておいた。
食感は柔らかい、硬いだけでも許されるだろう。味はもう無味だから書きようがない。
キク先輩はみんなの記録を集めるとチヒロさんに渡す。
「ま、研究はこんな感じだよ。失敗は常にあるもん。だからこそ班がいるのならその人たちに頼るのが一番だよ!」
「分かりました。今日は本当にありがとうございました」
チヒロさんはゆっくり頭を下げる。
そしてチヒロさんは私とワラ、カマタくんを見ると。
「えーとでは……」
最初にカマタくんに定規を渡した。
「カマタさん作物の計測、測定をお願いします」
「おう、任せとき」
そして次にワラには何も渡さず。
「水やりとか畑の手入れをお願いします」
ワラは静かに頷いた。私の隣にいる幽霊を興味津々に見つめながら。
「最後にウズメさんは——」
チヒロさんは膨大な書類を私に渡した。
「計測データの集計は私がしますので絵などをお願いします」
「絵?」
「はい。発表には分かりやすくするために絵も必要と聞いてますので。ウズメさんは絵がとてもお上手でしたのでお願いしたいのですが」
「うん。良いよ」
「ありがとうございます!」
「あ、言っとくけど張り紙形式の発表はパソコンで作るけどパソコン触れる人いる? 無理だったら先生にお願いした方が早いけど」
「あ、自分触れます」
「わ、私も少しは——」
私は正直に手を挙げるとカマタくんも手を挙げた。
一応私はお父さんにパソコンを使用して絵を描くのを教えられているし、今でもお父さんやお母さんの片方が力尽きた時の手伝いで使っているから触れるけどそれ以外だったらダメだきっと。
「お。君たちは触れるの?」
キク先輩は目を輝かせながらこちらを見る。
どうしよう、ここは掃除機に——。
「カマタは触れるけどシステムしか作れない」
ワラはとんでもないことを暴露。そして当の本人は照れる。
「ま、自分はシステム専門なんです。ちなみに中学の頃はミコトに携帯作ったんですけどね、変な機能をふざけて入れたら目の前にで破壊された過去があるけど、それは裏設定なんで気にせんといてください」
カマタくんは得意げに話す。変な機能は一体どういう機能なのだろうか。
キク先輩はしばらく考える。
「だとするとウズメちゃんだけど張り紙とか宣伝用のとかは作ったことある?」
「はい、何度か——あ」
しまった。手伝いだったら高校も作ってたけど——。
「ウズメさん、お願いします。自分たちの研究は——自分たちで一から作りたいのです!」
チヒロさんは熱意の視線を私に向ける。
これ絶対作らないといけないやつだ。
「——うん。私が作る」
とりあえずこれからしばらく私の予定がなくなりそうだ。
それからの二週間近く、研究が大詰めになってきた時の時点で私の部室は農業情報処理室、俗にいうコンピューター室となっていた。
今の実験の体制はチヒロさんが駆け足で持ってきた記録を私がデータ化し、図表や絵を貼ったりなど地味に大変だ。
終わり頃にはチヒロさんやカマタくんが来てくれるけど本当に寂しい、寂しいはずなのだがなぜか隣でひょっとこのお面を被って私をじっと見つめるワラは一体何をしているのかが気になる。
「あの、ワラ? ふざけるのなら出ていってくれる?」
「幽霊にここにこないと呪い殺すと言われたから」
私は隣にいる幽霊を見る。
幽霊は優しい笑みを私に向けた。
私はワラに向き直る。
「本当に言ったの?」
「こっくりさんの時に使う文字盤が書いてあるものを使えば話せる。小さい時ササがふざけて痛い目にあったの知っているから覚えてる」
ワラはそういうと何も書いてない紙を取り出し。八重字(やえじ)五十音を書いて机の上に乗せ、髪の上には硬貨を置いた。
「これで話せる」
「私、今、作業中」
「休憩は大事」
「——」
確かにここの二週間は休んでない。現にその合間に定期試験があったし。なら今の少しの間は良いだろう。
すると効果が勝手に動いた。
「し、ご、と、し、な、さ、い。仕事しなさいってウズメに伝えてる」
ワラは起伏のない声で言う。
はい、仕事します。
私は諦めてモニターを見て再開した。
とは言ってもあとは少し修正を加えて完成だ。
張り紙は視線の誘導も工夫している。
もし発表者が口下手で何を伝えようとしているのかが分からなくても絵でそれを補完して少ない情報でも内容を把握できるよう設計している。
するとワラはひょっとこのお面をつけながら私に顔を近づけた。
正直吹き出しそうだからやめてほしい。
「ウズメ」
「何?」
「その幽霊の正体分かった」
私は一度作業を中断し、ワラに顔を近づける。正直ひょっとこのお面で笑いそうになるけど我慢しよう。
「分かったの?」
「恐らく、神霊に近い存在。普通の霊なら払えるのにこの霊だけは払えない。縫さんからは一応降霊術については昨日聞いた。その聞いた話では降霊術で呼び出された霊は基本未練がないものばかりだからすぐに消える。だがこの霊だけは未練が数多くあるのと、神霊だから無理に払うととんでもない呪いを仕掛けてくる可能性がある」
「呪いって例えば?」
「定期試験中に眠気に襲われる」
「終わってからで良かった〜」
私は安堵の息を漏らす。それにしても未練って一体なんだろう
「未練?」
私は例に対して質問した。
「ねぇ、貴女は何か未練があるの?」
霊は私に質問されて嬉しかったのか尻尾をふる。
硬貨は特手の文字の上を通り文章を作った。
「あなたをずっと見ていた。あなたは暗い雰囲気で心配。妖怪も近くにいる。心配で離れれない。多分妖怪は白鬼よね」
「あなたの名前は?」
今度はワラが霊に質問する。
霊はそっぽを向く。
ワラは少しビクッと震えたかのように見えたけど何もなかったかのように私を見る。
白鬼か、ていうか白鬼についてそれどころじゃなかったよね今週や先週。
「あ、そういえば白鬼は私の心の中にいるんだよね。と、取り出せないかな?」
「できるけどその霊が何するか分からないから怖い」
「怖いの?」
ワラはじっと私を見る。
だからひょっとこのお面は外してって。
「とりあえず今はその霊をどうにかしないと取り出せない」
「うーん」
私は考える素振りをする。ワラでもダメなら確実に縫お姉ちゃんでもササ先生でもダメなんでしょ?
だったら先にこの霊の未練を晴らすのが先になるのか。
「けど、良い機会」
「良い機会?」
ワラはひょっとこの仮面を外す。
「ウズメをじっと見ていたと言うことはウズメの相談にも乗ってくれる。それに危ない霊や妖怪がいても守ってくれるはず」
「そうなんだ」
すると硬貨が動き始めた。
「わ、る、い、お、と、こも。悪い男も? ワラは悪くないよ?」
霊は首を横に振る。
「あれ? 違う?」
「多分、言いたいことは白鬼の傀儡になっているのが実は複数?」
「え、言っている意味は伝わるけど白鬼は今私の心の中にいる破片だけなんだよね?」
例を見ると激しく首を縦に振っていた。
もしかして大正解?
「それ本当だと大丈夫——」
「それからウズメが気づかないだけでウズメの負の感情が湧く原因がいる。——なるほど」
「なるほど?」
「もしかしたら発表会で彼らが来るのかもしれない。白鬼は傀儡をあらかじめ複数作っていてもおかしくないから」
「——」
もしそうなら本当に嫌なんだけどね。
現実であったと何か言われても自分は耐えれるのかな?
「けど今度はみんなそばにいるから」
「そば……そうか」
私はキク先輩、スズカ先輩やチヒロさんの顔を思い浮かべる。
今回は私一人じゃない。みんないるんだ。
私は体を伸ばす。
「よしっ! 全力出してこれを仕上げる!」
私は再びキーボードを叩く。
もうアホ扱いされないぐらい、すっごく分かりやすいものを作るんだから!!
それから三日間不眠で制作し、完成したものをチヒロさんに見せた。
チヒロさんは私の成果を見たあととても驚いた顔で見る。
「すごくわかりやすいです……!」
言葉から喜んでいるのが分かった。
ワラはずっと私の隣にいたからか自慢げに私を見る。
本当のこというとワラは私の隣で何もしてなかったよね? まぁ、私のやる気を引き出ししてくれたりしたから何もしてないこともないか。
カマタくんも後ろから見て「めっさええな〜。それに野菜がやけに写実的なのは突っ込まない方がいいのだろうか?」と言ったが気にしないでおこう。
「じゃこれで良いのかな?」
「はい。あとは先生の前で練習してみてもらいながら修正しましょう」
「うん……!」
私は発表会へ向けて、着々と準備を進めた。
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