第15話 深淵
蒼穹が私を見下ろす。
そんな私は
博覧会での騒動から一週間が経過した今日、若命高校の生物工学科全員がここに集まっているのだ。
理由は別に複雑なものでもなく、ただ単に今日が校外学習と言うか遠足だ。
遠足の内容はそれぞれ班を作って野外で好きなものを焼いて食べて交流を深めると言う感じ。
私がいる班は四人で、その中にはヒロさんやツボミちゃんがいる。
残す二人は体育の時間で最近よく話す様になった
ちなみに委員長は見た目に反してとても真面目だから早く動かないとまた怒られちゃう。
私は机にかかっている網を取り、中に木炭を入れる。
「天河〜。木炭入れた?」
すると背後から委員長の声が聞こえた。
「あ、委員長。今入れました」
委員長は呆れた顔をする。
「だ〜か〜ら。敬語使わなくてもいいし委員長呼びはやめろ」
「え〜と……。じゃ、じゃーマサノミさん?」
「今はまだそれで良い。言っとくけどもしまた委員長なんて言ったら覚悟しておいてね」
「ひぇっ」
すると間にツボミちゃんが入ってマサノミさんの肩を叩いた。
「まぁまぁ喧嘩しない。同じイヌ科なんだから仲良く出来るでしょ」
「え、犬?」
するとマサノさんは髪を持ち上げて耳を見せた。
耳は人の耳にしては少し尖っている。
「あのねーツボミ。イヌ科って言ってもお母さんのお婆さんがそうなだけであたしはほとんど人」
「あり? あー狐人の血が少しって言ってたね確か。で、耳が少し尖ってると。——ホイッ!」
ツボミちゃんはそういうとマサノさんの髪を持ち上げて耳を見せた。
ツボミちゃんが言った通り確かにマサノさんの耳は少し尖ってる。
マサノさんはツボミちゃんの手を振り解き「それは良いとして」と言い、私の後ろを指さした。
視線を後ろにするとそこに上の空になっているチヒロさんがいた。
「そういえばウズメはチヒロと仲良いでしょ?」
「そ、そうだね」
「珍しく腑抜けになってるけど何かあった?」
「えっと——」
私の戸惑う態度にマサノミさんは少しムカついたのか眉間を震わせる。
「とにかく。あとは私たちがやっとくからそろそろ連れてきて」
マサノミさんは強めの口調でそう言うと私の背中を押した。
私はチヒロさんの元に駆け寄る。
「チヒロさん。今朝から暗いけど何かあったの? もしかして一昨日カマタくんが話していた白鬼に関すること?」
「……そう、ですね」
チヒロさんは私を見る。チヒロさんの目の下にはクマができていた。
「最近なぜか耳元にピタッ、ピタッとナメクジが動いているかのような音が響いてですね。それから下から見られている感じや付き纏われてたり悪夢を見たりで……」
チヒロさんは疲れていたのか私の肩に倒れる。私はチヒロさんの体を支えた。
「おとと。だ、大丈夫チヒロさん!?」
「は、ははは。実は博覧会から寝てないんですよ……。普段夜の九時に寝ているせいか一日でも様ふかしするとダメなんですよ。それに相談しようにも家族に迷惑をかけたくないので」
「なるほど——」
すると突如したから風が舞い上がり、チヒロさんの着物の裾が捲れ上がる。
「わ、チヒロさん!」
私はチヒロさんの裾を押さえた。
「は……え?」
チヒロさんは顔を真っ赤にして唖然としている。何だろう。すごく可愛いって気持ちになってしまいそう。
で、チヒロさんの裾を捲り上げた犯人は若命高校の生徒なら誰もが知っている変態校長と呼ばれる赤いタコ——。
「ぶっ! わははは! 君たち驚いたかい?」
そう、チトセ校長先生だ。
校長先生は一人で笑いこけ、チヒロさんは眉間を震わし、見ただけでもわかるほど怒っている。
「どう? 肩軽くなったでしょ。気分が悪い時はこうやって払った方がとても気持ちいでぃ! あはは!」
校長先生がそう言うとチヒロさんはハッと驚いた顔をする。
「確かに、少し体が楽に……」
「うんうん。重いものを背負うのはとっても大変だから今回は特別だよ〜。では君たちは早く班の所に戻って遠足を楽しんでね!!」
校長先生はそう言うと先生たちの集まりに戻った。
「あれ?」
チヒロさんは首を傾げる。
「校長先生、サラッと裾をめくったのを誤魔化してませんでした?」
チヒロさん。あの校長には絶対そんな常識は通用しないから。
それから私はチヒロさんを連れて班の机に戻り、皿を手に持ってツボミちゃんに野菜を焼いて入れて貰った。
「ツボミちゃんありがとう」
「大丈夫大丈夫。なんたってこの野菜マサノちゃんが野外食で食べておいしものを選んだからね」
そう言ってツボミちゃんはチヒロさんに野菜をたっぷり乗せる。
「あれ? お肉買っていませんでした?」
「あー」
すると背後からアキヤちゃんが肉が入った箱を持ってきた。
そしてツボミちゃんは別のトングで肉を取り出し、網の上の乗せた。
「実は野菜買いすぎたみたいで……。野菜処理してたのよ。これアキヤが野菜ほとんど食べてくれたけどもう野菜はこりごり」
「農業高校なのに?」
「農業高校なのに」
「な、なるほど」
ツボミちゃんは遠い目をしながら細く微笑む。
すると後ろから「あ、ウーちゃん!」とアキヤちゃんが呼ぶ声が聞こえた。
アキヤちゃんは私の皿に盛られた野菜を見る。
「これでチーちゃんとウーちゃんの二人でようやく肉にありつけるよ。野菜の量が多過ぎて困ってたんだ〜」
アキヤちゃんはいつものほのぼの声で箱を開け、昨日買った食材を取り出す。
私は野菜を食べながらチヒロさんを見る。やはりチヒロさんはまだどこか遠くを見ていた。
——とにかく明日ササ先生に相談してみようかな。
——————。
————。
——。
「そうだった。土曜の授業は無いんだった……」
私は布団から出る。
「確かお父さんは仕事でお母さんは自治会だったっけ。で、縫お姉ちゃんはよく分からないけど用事って言ってた気が」
私は身支度をせっせと済ませてササ先生の家に足を運んだ。
ササ先生には昨日の放課後に少し相談したいことがあると伝えると、明日家に来てくれと言われ今に至る。
けど朝から呼び出すのは流石に堪える。まぁ、これはチヒロさんのためでもある訳だし我慢しよう。
そして歩いたり電車に乗ったりしてササ先生が住んでいるボロボロの木造住居に着き、階段を登ってササ先生の部屋の扉を叩いた。すると中から「はーい」と聞き覚えのある声がし、扉が開いた。
「あ……」
開いた先にはワラの妹のミコミさんが上目遣いでこちらを見ていた。
「あなたは確かミコミさん?」
「う、うん」
「ようやく来ましたか」
私は顔を上げて奥を見るササ先生とワラが座布団に座って屋台で買ったであろう焼きそばを食べていた。
「お、お邪魔します」
私は中に入り、ワラの隣に座った。
「わ、私は……」
ミコミさんは小さな声で何かを呟いたあと、私の隣に座って左腕にしがみついた。
「ふぇ?」
「——」
ミコミさんはシラを切るように首を傾げる。
「——なんだろう。なんか不思議な気分になる」
静かな空間でお茶を啜る音が大きく聞こえる。
「で、ウズメさん。もしかして相談と言うのはチヒロさんに憑いている白鬼についてですよね?」
ササ先生は鋭い視線を私に向ける。
「は、はい」
「これ、博覧会の後ミコトくんが電話して終えてくれたんですよ。一応あの後ミコトくんがずっと白鬼を探してくれているんですが見つからないみたいなんですよ」
「えっと……。ワラ、ありがとうね」
「——」
ワラは何も答えずお茶を啜る。
ササ先生は優しい顔に戻って微笑む。
「ふふっ。あらあら、ミコトくん褒められて嬉しいんですか?」
「——別に」
「嘘。兄さん喜んでる」
ササ先生とミコミさんはワラの感情が読み取れたのか楽しそうにいじる。当のワラは嫌がっているような反応は出さない。
「あれ? ウズメさんどうかしましたか?」
「いえ、何も……」
私は首を横に振る。
ササ先生は髪を総髪にまとめ、ワラも同じようにどこからか剣を取り出して立ち上がった。
「一応説明しますが今チヒロさんの状態は芳しくありません。白鬼は確かに国内で最も弱い蜚蠊妖怪よりも弱いのですが、術に関してはどの妖怪よりも厄介なのです」
「術が厄介って……。それに妖怪は何十年前には滅んだって聞いたんですが」
「妖怪は別に滅んでない。無害な妖怪は残され、有害な妖怪だけが滅ぼされた。それも封印されたもの以外は」
ワラはササ先生の変わって説明をしてくれた。
そしてササ先生とワラはそのまま部屋を出ようとドアノブに手をかける。
「とりあえずウズメさんたちはここで待機してください。ウズメさんとミコミさんはもし白鬼に見つかったら憑依される危険性があります。一応この部屋にはお札をつけてあるので入らないはずです。念のため窓は閉めて、簾をかけていますが音は立てないで下さい」
「は、はい」
ササ先生はそういうとワラと一緒にどこかに行った。
この空間には私とミコミさんだけが取り残された。ミコミさんは相変わらずどこかよそよそしく私をチラチラと見る。
少なくとも私は自分より年下とはあまり接したことはないしどうしようかな。
「あ、あの……」
ミコミさんは私の腕を掴む。
「どうしたの?」
「その、お兄さんから聞いています……」
「ワラから?」
ミコミさんはそう言って風呂敷から巻物を散り出し、畳に広げた。
「ここ、見てください……」
ミコミさんは
巻物の始まりの部分に指を差す。
「ここにその、ササ姉とお兄さんが言ってた白鬼に関しての記録がここに……」
ミコミさんが指した所にはおろそしい風貌をした鬼と銀色の髪と赤い眼をした男が描かれていた。
男の手には箱があり、よく見ると箱にはお札がびっしり貼ってあり、今でも目の前の鬼を封印しようとしているようだった。
「これ記述では白鬼は源大夜なるものが旅の途中封じた妖怪で、その妖怪はつい百年前から
ミコミさんは親切に描かれていることを解説してくれた。けどこれはまだ巻物のはじめで、この先にも続きがあるようだ。
「で、この後の続きはどうなの?」
「あ、ありません……」
ミコミさんは頬を染めながら言うと巻物をもう一度巻いて紐で止めて風呂敷に入れた。
「続きは見たらダメな感じ?」
「あ、その……だめ」
ミコミさんは首を横に振る。
なんだろう。私怖がられてるのかな。だけどこの子私にくっ付いたりしてるしもしかしたら私と同じ、会話が苦手な人なのかも。
けど徳田神社って聞いたことあるけど……。
あれ? もしかしてチヒロさんってただの同姓じゃなくてきちんと血な繋がりがあるの!?
その時部屋全体が波打ち、皿が落ちたりと箪笥から本が大量に降ってきた大きな地震が起きた。
「ミコミさん!」
私はミコミさんの上に乗り、落下物から守る。地震は五秒にわたり、ササ先生の部屋は悲惨なことになっていた。
恐ろしいことにタンスは私の足スレスレに倒れ、あと少しで私の足が潰れている所だった。
「う、うーん」
身体中に痛みが走る、私の上には大量の本や壺が落ちたりと笑えないほど痛い。
「ウズメ……さん?」
ミコミさんは何が起きたのか理解していない表情で私を見ていた。
「大丈夫だよミコミさん」
私はよくお姉ちゃんにされていたようにミコミさんの頭に優しく触れる。
「怪我はない?」
「——」
ミコミさんは無言で頷く。
「一体何が?」
私はゆっくり立ち上がり窓の外を見る。
「あ、確かダメだったっけ?」
「大丈夫。ウズメさんは大丈夫」
「ミコミさん?」
ミコミさんはそういうと私に駆け寄って上目遣いで私を見る。
「ウズメさんの魂はお兄さんが受け継いだ魂と血と同じく、破魔の力を宿しているから」
「破魔の力って?」
「というかそんな事よりササ先生のお部屋を片付けないと」
「——あ」
私はササ先生の部屋全体を見渡す。
ササ先生の部屋は先程の地震のせいで無惨にも散らかっているという現実を完全に放棄していたのを思い出した。
「——そうだね。確かに完全に忘れてた」
私とミコミはなんとなくでササ先生の絵やを片付けていき、もし万が一片付ける場所が違っていた場合に、ササ先生に分かりやすく片付けた場所を書き留めた紙をちゃぶ台の上に置いた。
「よし。で、ミコミさん。そういえば私がここに呼ばれたのは隠れろっていうこと?」
「というと?」
ミコミさんは首を傾げる。
「あ、いきなりでごめんね。ちょっとササ先生のことだからてっきり。隠れて以上の意味があるのかなって思ってだけだから」
今思えば多分ミコミさんも私と同じ理由でここに連れて来られたのかもしれない。だけどやはり不自然だ。ササ先生が私を隠すにしても近くにいた方がん無事だった場合が多いい感じがする。現にキバやサソリ、ヒスメでもササ先生はすぐに存在を察して私の元に来れた訳だし。
サソリの場合なんかは……。いや、あの時はもう一人の名前忘れたけどその人に助けられたんだった。
「わ、私も分からない。お兄さんにここに連れて来られたの。説明もないまま連れて来られたの……です」
「——なるほど」
それとさっきから誰かが忍び寄ってる感覚がする。感覚としては邪神の場合は生存本能の寒気、獣の時は……特にないか。
ともかく今この感覚は生理的に不愉快で吐き気がするぐらい嫌なもの。
「ねぇ、とりあえずここを離れよ」
「で、でも。ササ姉さんは出るなって」
「いいから。早く」
私はミコミさんはの手を握ってササ先生の部屋から出不愉快な気配がしない方向へと早歩きした。
ミコミさんはおろおろしながら辺りを見る。
流石に説明が少なすぎたけど今回ばかりは本当に危ない。これは決して嘘とかじゃなくて私の本能がそう言っている。
けど逃げるのならどこに?
止まってはいけない。
振り向いてはいけない。
いつかチヒロさんと映画を見に行っている時に流れた恐怖映画の宣伝文句を思い出す。まさに今はこの状況なのだ。
「ここだめ!」
私は急にミコミさんに手を引っ張られた。
「どうしたの?」
「足元見て。鳥居の絵が」
ミコミさんに言われた通り足元を見ると白い線で鳥居が描かれていた。
「どうしてダメなの?」
ミコミさんはひどく怯えながら涙声でゆっくり話し始めた。
「そ、そこはいけないの。ダメなの死んじゃう」
「けど、後ろから何か来てるのよ?」
「違う。来てるのは後ろからじゃない」
ミコミさんはゆっくり俯く。
「え?」
私の手の甲の上に、ゴムみたいな感触がする人の顔の皮らしきものが落ちる。
ミコミさんはゆっくり顔を上げるとそれは見るのも怖くなるほどおぞましい顔で、ミコミさんとは違う、別人の顔だった。
ミコミさんは私の手をがっしりと掴み、顔を近づける。
「ウズメさん……」
「こ、来ないで……」
これ見るだけで分かる。人間じゃない!
ミコミさん。いや通称ミコミさん(偽)は口を開く。それと同時に口元の肉が裂ける音が生々しく聞こえる。
ミコミさん(偽)はニヤリと微笑む。
「何が起きてるの?」
「え?」
後ろに振り向くともう一人、いや確実に本物であろうミコミさんがゆっくりと歩いてきた。
ミコミさんは目の前の光景を見て察したのか私の腕を掴む。
「——大体わかった。こっち」
ミコミさんはそういうと私を引っ張り、ミコミさん(偽)の顔をカバンで殴った。
「え、ちょちょ! 意味わかんない!」
私はミコミさんの走る速度に合わせて足を回した。
———————。
————。
——。
それから私は遠くの公園まで引っ張られ、なんとか撒いたのを確認して一度手を洗ってベンチに座った。
「その……、ウズメさんでしたっけ?」
「うん。そうだけど——。今のミコミさんって本物?」
ミコミさんは困った顔をしながら「え?」と声を漏らす。
うん、その反応が正しい。だって私も正直言ってどういうことかさっぱりだし。
「えっと、さっきまでササ先生の家にいたんだけどその時部屋の中にはササ先生とワラとミコミさんがいたの。で、それからしばらくしてワラとササ先生が部屋から出て、私とミコミさんの二人だけが部屋の中にいてそれから地震が起きたの。その後変な気配を感じて逃げていたら……。うん、こんなことに」
「全く意味が分からないです」
「だ、だよねー」
ミコミさんは困った顔をしながら私の隣に座る。
「わ、私今日友達の家に行って遊んでた。だから——。あ、ササのことなんて言ってたのですか?」
「えっと、ササ先生の家にいたもう一人のミコミさん? だったらササお姉ちゃんって言ってたけど」
「だったら違う。私ササのことお姉ちゃんって思ってるけどお姉ちゃんて呼んでたのは幼稚園の頃までで、それ以降は呼び捨てで良いって言われたから呼び捨てなんです」
なるほど。だとしたらなぜササ先生とワラはわざと偽物の近くに私を置いたのかの問題があるよね。
「だけど多分ササとお兄さんがウズメさんと私の偽物を二人きりにしたのはわざと。多分ササ先生の結界で偽物は本来の力を使えなくしてたはずです。それに家に入れたのはあのまま無視すると近辺に被害を起こすからで、ウズメさんには危害を与えようとは思ってもないから大丈夫かと」
ミコミさんはそういうと立ち上がる。
「それでお兄さんはどこへ行ったかご存知ですか?」
「あ、ごめん。教えてもらってないや」
「そうですか」
するとミコミさんはワラとは違い嬉しそうに笑う。
「だけどウズメさんが無事で良かったです。もし私の偽物に乗っ取られたりしたら私、後悔して苦しみ続けたと思うので」
「私こそごめんね。少し疑っちゃって」
「大丈夫です。それに今後も注意が必要です。多分あれは背乗りを企んでます。昨日テレビで見ました」
ミコミさんはとても得意げな顔で言う。
「あはは。もし本当にそうならかなり怖いね」
そして私はゆっくり立ち上がる。
「ミコミさんはどうするの? ワラを探すの?」
「呼んだ?」
「あ、ワラ」
「兄さん」
私とミコミさんが話しているところにワラは堂々と間に入ってきた。
ワラはミコミさんと違って一切表情を変えず、私を見下ろす。
「ウズメはなぜ外に?」
「え、えーと」
返す言葉がない。
私は今までの出来事をワラに話すと納得してくれたのかこれ以上は追求せず、私の手を握る。
「え、ワラ?」
「けどウズメが無事で良かった。ミコミも怖かった?」
するとミコミさんは目を逸らしながら「少しだけ……」と小さな声でボソッと呟いた気がした。
「二人が無事で良かった」とワラは息を吐きながら無表情で良い、続けてこう言った。
「なら少し付いてきて欲しい。ササと縫が車の中で待ってる」
そう言ってワラは一台の車に指を差した。
私はこれからどうなっていくのだろうか。そして、あの顔の皮が剥がれた偽物は病院に行ったのかと。さまざまな謎を胸に秘めながら車に乗った。
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