これからのこと

「はあ、はあ、ここまで来れば大丈夫でしょ」


 レイハルト達は森の中を走っていた。兵士たちの声が完全に聞こえなくなってからさらに少し走って辺りで足を止めた。


「ふう」


 レイハルトは木の下で腰を下ろした。ここまで走ったのはこの世界に来てから初めてだ。


元の世界の身体だったらここまで持たなかっただろう。さすがレベルMaxの肉体、身体は作りが違う。


「はあ、はあ、はあ」


 リリアはまだ息が整っていないようだ。あれだけ走ったんだ、当然と言えば当然だろう。


 レイハルトは辺りに目を光らせる。特に人影何かは見えない。


「大丈夫だ。誰もいない」


 リリアも落ち着いてきて腰を下ろす。


「なあ、リリア」


「な、なにかしら?」


 レイハルトの呼びかけに驚いたような、怯えたような表情をする。


これから聞かれるであろうことを予測したのだろう、沈んだ表情をしている。


そりゃ身バレは怖いよな。元の世界でも身バレしたせいで破滅したやつを知っている。


「これからどうする?」


「え?えっと、そうね」


 予想外の言葉を聞いて少し驚いてから地図を取り出す。


「今は多分ここらへんだと思うから、ひとまず森を抜けましょう。ここに大きな町がある、から」


 徐々に声が小さくなっていくリリア。待ちに行けばおそらく自分の正体がばれてしまうと思ったんだろう。


リリアの一番特徴的なものは、


(髪か)


 リリアの綺麗な銀髪。おそらく王女の特徴は銀髪美少女で通っているのだろう。


 レイハルトはARパネルを操作し、コスチュームのところからつばが広めのハットを選択して被る。


「リリア。はいこれ」


 レイハルトは取り出したハットをリリアに渡す。


リリアは最初ポカンとしていたが、すぐに意図を察してハットの中に髪を隠して被る。


「さてそれじゃあ、その街に行きますか」


 レイハルトが腰を上げて伸びをする。リリアも立ち上がって土を払う。


「そうね、で、でも」


「ん?」


「聞かないの?」


「何を?」


「何って、それは」


 しどろもどろになるリリア。兵士から逃げる理由。自分の正体。聞くことはいくらでもある。


しかし、


「言いたくないなら言わなきゃいい」


 プライベートに踏み込みすぎるのは危険だ。そのせいで関係が悪化することもある。


言いたくないことには大抵理由があるものだ。それを無理に聞き出そうとはしない。昔それで失敗したからな。


それに、こっちの秘密も話さなきゃいけなくなるかもしれないしな。


「話したくなったら話してくれたらいいから」


「そ、そう」


 リリアは不思議そうな顔をしながらうなずいたそして、町のある方へ歩き始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

SFゲームの1000年後はファンタジー @aromaserap

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ