クラフト

「さて」


 どうしたものか。ARパネルを見えるようにする。ようは外付けのマイクロチップを作ること。


「マイクロチップなんてクラフト一覧にないしなー」


 簡易クラフトから既存のアイテムの一覧を見てみたがそれっぽいものは見つからない。


そもそもゲームでは全員が最初からマイクロチップを埋め込まれているためそんなもの必要ないのだ。


「しゃーねー、いろいろ試してみるか」




 結果から言おう。何とか出来た。しかし


「あとこんだけかー。何とか調達しないと」


 作り始めて3日、ARパネルを見えるようにするアイテム(デバイス)は作ることができた。しかしその過程でクラフト素材の8割を消費してしまった。


 「とはいえ、これでゲーム内になかったものも作れることが証明されたわけだ」


 完成したARパネルを見えるようにするデバイス(耳に引っ掛けるようなもの)とその過程でできたガラクタ達を見ながらそうつぶやいた。


「さて、これを届けに行くか」


 リリアたちのもとへ行こうと立ち上がりふと「これ、プレゼントじゃね?」と思うレイハルト。そう考えた途端恥ずかしさが込み上げてきた。


(うお、これ、俺が女の子に渡す初めてのプレゼントじゃん。ど、どう渡そう)


 リアルではあまり女子と話していなかったレイハルト。ここにきておどおどしだした。


(ど、どうやって渡そう。普通でいいのか?てか普通ってなんだ)


 ない頭でいろいろ考え、納得がいくセリフができたところでリリアの所へ転送する。


 テレポーターから現れたレイハルトを見て、リリアが輝くような笑顔でこちらにかけてきた。


「レイハルト、ついにできたのね!」


 その笑顔を見た途端、さっきまで考えていたことが吹き飛んだ。


「ああ、これだ」


 そういって作ったデバイスを差し出す。


(ってちがーう!もっとこう、かっこいいセリフ考えてきたのにー!)


 レイハルトが心の中で叫んでいる間にリリアはアイテムを受け取って眺めている。


「ねえこれどうやって使うの?」


 もっともな疑問だ。おそらくARパネルなど使ったことがないはずだから。


レイハルトはリリアに使い方を説明して自分以外でもARパネルが使えることを確認した。


「それが転移の魔道具のカギみたいなものだから魔道具の上でパネルを出してみてくれるか」


 リリアは指示通りテレポーターの上に行きARパネルを出す。するとリリアの目の前にも転送場所が映し出される。


「えっとこれ、なんて書いてあるの?」


 忘れていた。言葉が通じるからうっかりしていた。


言葉が通じるのもおそらくマイクロチップの翻訳機能のお陰だ。レイハルトが作ったものにはたぶんそれは含まれていなかったのだろう。


ていうか話してる言葉も翻訳されてるってPICTの技術すげえな。


「ちょっとそれ貸して」


 リリアからデバイスを預かるとクラフトキットを取り出す。そこにアイテムと腕の端末を板の上に置く。


前からあった特殊能力のコピー。ゲームでは武器しかできなかったけどここならば。


 アイテムに端末(マイクロチップと連動してるから多分全機能ある)のデータを丸ごとコピーする。これで大丈夫なはず。


「これで文字も読めるようになったはず」


 リリアにアイテムを返し、もう一度試させる。


「おお、読める」


 リリアが感嘆の声を上げる。


「ありがとう!レイハルト」


「いや、たいしたことじゃない」


リリアの輝くような笑顔に顔をそむけながらそういった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る