同棲!?

「おかえりレイハルト、どうだった?」


「ほいこれ」


 レイハルトは今日採れた果物や動物、野草をアイテムストレージから出す。


「これとこれ、毒あるやつね。」


 採ってきた野草の中からいくつかをはじいていく。


「これ、前も採ってきてたわよ。いくら治癒魔法が使えるからってまた毒に苦しむのはいやよ」


「あ、ああ。気をつけるよ」


 リリアが半眼になりながら放り投げる野草を見ながらレイハルトはばつの悪そうな顔をした。


リリアに怒られるのは何度目だろう。一緒に暮らし始めてからこんなことばっかだ。


 なぜ一緒に暮らすようになったかというと、数日前のオルガの言葉がきっかけである。


「レイハルト、お前一人なんだよな」


「そうだけど、それがどうかしたか?」


 レイハルトはオルガが何を言いたいのか分からず首を傾げる。


「それなら、我らと一緒に暮らさないか?」


「はい?」


「それいいわね!」


 リリアも乗っかってくる。


「ここはそれなりに強い魔物も少なからずいる。貴様とリリアが出会ったときはフォレスレオンがいたわけだしな」


 言いたいことは分かった。分かったが、


「ほとんど一緒に行動しているんだ、常に一緒にいた方が安全だろう」


「それはそうだが、いや、でも」


 レイハルトはちらちらとリリアのほうを見る。こんなサバイバル状態とはいえ女の子とずっと一緒にいるなんて。


「大丈夫?顔赤いけど」


 そのことを考え顔が赤くなると、リリアが心配そうにのぞき込んでくる。って、近い近い!


「その、リリアはいいのか?」


 一縷の望みを託してリリアに振る。いや待てよ。さっき確か。


「いい考えだと思うわ。一緒にいましょ」


 ですよねー。さっきも「いいわね」って言ってたもんね。年頃の男女が一つ屋根の下(洞穴だけど)、しかも相手は美少女、大丈夫か俺?


「そうなるとどっちのにするかよね」


「どちらでも構わんだろ、どうせ転移できる」


 なんかどんどん話進んでる。でもまあ、そのほうが安全なのは事実か。


「こっちのほうが良くないか?俺のほうは一人で暮らすの前提で小さいからな」


「そうね、それじゃあ、こっちにしましょう」


「了解、ひとまずこっちに俺の荷物持ってくるわ」


そして今に至る。


「そ、そっちはどうだったんだ?」


「そっちって?」

 

少し無理矢理な話題転換。だがリリアは少しうろたえた様だった。


「遺跡だよ遺跡。リリアはトレジャーハンターなんだろ?この辺にあったか」


「えーと、な、無かったわね」


 なぜうろたえる。探してすらいなかったのだろうか。それなら、


「じゃあそろそろ、移動しようか」


「え?」


「ここら辺に遺跡はなさそうなんだろ?だったら場所変えて探すものじゃないのか?」


「ま、まあそうなんだけど、も、もうちょっとここにいましょ。まだ見つかってないだけかもしれないし」


 怪しい。一体何を隠しているんだ?まあこっちも隠し事あるから人の事言えんが。


「まあ、リリアがそういうなら。俺はこの辺の地図持ってないし」


 リリアは安堵したと思ったら驚いた様子で勢いよく顔を上げた。


「え?地図持ってないの?」


「ああ、そうだが」


「じゃあ、どうやってここまで?まさか行き当たりばったりで来たというの?」


 まずったか。確かに旅人で地図がないのは不自然だな。さてどう答えたものか。


「最初は地図持ってたんだけど途中で落としてしまってな、今は持ってないんだ」


 ちょっと苦しかったか?でも地図持ってない理由なんてこれぐらいしか。


「そうなの?落としたのってこの森で?」


「た、多分」


 く、苦しい。


「そう」


 リリアが見つめてくる。嘘をついている背徳感と美少女に見つめられる気恥ずかしさで顔が熱くなってくる。


「でもまあ、あなたなら地図無しで旅してきたって言っても信じられそうだけど」


「そ、そうか?」


「ええ、あなたほど強い人を私は知らないし、魔道具をポンポン作れる人だもの。地図なんて要らないって言われても納得できるわ」


「そ、そうか」


 オルガのほうを向くとオルガもリリアと同意見らしい。まじか。


「とりあえず地図は私たちが持ってるから、大丈夫よ」


 これでさらに別行動する理由がなくなったのであった。

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