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『最初のニュースです。特務大尉が齎した勝利に人類全体が沸き上がっており、政府も今こそ反撃の時だと発言しています』



『軍は英雄である特務大尉に、人類の反撃に必要な知識人達を保護するよう命令したようです。この星は皆さんご存じの通り、ワープ研究の理論を完成させたグループが在籍する事でも有名なマール大学が存在し、救出された彼等は特務大尉と合わさり、今次大戦の切り札となり得るでしょう』



【特務大尉と共に人類の困難に打ち勝とう!】



名無しの情報員

で、噂の特務大尉は実際どうなの?


名無しの情報員

サクラ


名無しの情報員

言いたいことは分かるけどw


名無しの情報員

パンダ


名無しの情報員

合ってる。合ってる?


名無しの情報員

合ってるよ。


名無しの情報員

お立ち台に上る(上らされる)予定の人


名無しの情報員

アイドルだな。


名無しの情報員

金箔送ってあげないと。


名無しの情報員

軍からアイドルが出る時代かあ。


名無しの情報員

歌って踊るんだな。


名無しの情報員

そんなんでええんかw


名無しの情報員

ええも何も、元帥公認のアイドルだぞ!


名無しの情報員

劣勢の証だねえ。


名無しの情報員

だね。ところでどうして元帥公認って知ってるんですかね?(猜疑)


名無しの情報員

……


名無しの情報員

黙ったぞw


名無しの情報員

まーたログを覗き見してるよ。


名無しの情報員

でもメルじゃ勝ったんだよな?


名無しの情報員

どうも出来る奴が埋もれてたっぽい。そんで実働はそいつ、特務大尉ってのが皆を勇気づけるアイドル役っぽい。


名無しの情報員

ほほう、なるほどねー。で、何で知ってるの?


名無しの情報員

………………




『地上の防衛隊は劣勢だな。合流して敵を叩く。揚陸艇は兵の下降後に民間人を乗せて退避しろ。マール大学を拠点にする』


『イエッサー!』


『俺は先に突入ポッドで降りて司令部を叩く』


『イエッえ!? ちょ!? 特務!? お一人でですか!?』



『本日のニュースです。軍の新兵器は着々と開発が進んでおり、開発が完了しだい順次戦線に投入される予定です』


『ご覧ください!軍の詰所では連日多くの志願兵が列をなしています!』


『新鋭艦ワイバーンは常に造船所で製造されており、人類勝利への先駆けを務める事でしょう』



『ワレン、ジュンバ、ヌールア、オクトンス、インタの避難状況は!?』


『センターでの受け入れではほぼ限界に近づいています! 輸送船の数をさらに圧迫しますが、センターよりも更に後方に移動させるしかありません!』



『特務!』


『お疲れ様です特務!』


『特務。ご相談したいことが……』


『何があった?』


『大学の教授達が、AIのサーバーとワープ船の試作機を運び出さないと避難しないと……』


『なに? ……ワープ船の実物があるのか? 30年は掛かると聞いたぞ。それにAI?』


『はい。ワープ船の方は一人乗りかつ実験はしていないそうですが、組み立ては出来ているようです。AIの方は……すいません、超高性能AIと教授達は言っていましたが、よく分かりませんでした』


『ワープ船は当然最優先だ。AIの方は……まあ見てみるか。無理そうなら教授達を無理やり船に詰め込む』


『イエッサー』



『これがそうか?』


『そうとも! 我々人類が生み出した科学の結晶! ガル星人に勝利するための切り札! ザ・ファーストだ!』


『不可能です』


『その切り札はああ言っているぞ』


『い、いや、まだ調整が完璧でないからだ。完成すれば必ず人類は勝利する!』


『不可能です』


『ポンコツだな。教授、船に乗ってくれ。まだタコ共の地上部隊を片付ける必要があるが、時間に余裕がある訳じゃない』


『不可能です』


『うるさいぞポンコツ』


『ああ!? 人類の至宝を蹴るな!』


『少し押しただけだ。俺が蹴ったら吹き飛ぶ』


『依然としてガル星人の地上戦力は圧倒的。打破の可能性は0、不可能です』


『0%も不可能もこの世には無い』


『とにかく!ザ・ファーストはセンターに運ぶ!』


『軍の手を使わないのなら好きにしてくれ。だが積み込みが終わっていなければ、代わりに教授達を無理やり詰め込む。ではタコの相手をしてくるので失礼する』


『不可能です』


『うるさい』


『ああまた!?』



『特務! 敵が接近中です! 数で圧倒されています!』


『交戦距離に入るまでに俺が司令部を潰す。タコが混乱後に攻勢を掛けろ』


『サーイエッサー!』



『はあ、いよいよ俺ら強化兵の出番が近づいて来たな……』


『俺らが運ぶ爆弾も作られてるってさ』


『あーあ。せめて兵士として戦いたかったなあ』


『だなあ』



【人類に勝利を!】 【特務大尉と共に戦おう!】 【人類の明日を救うのは君だ!】 【人類全体への奉仕と献身を!】 【家族を守ろう!】 【軍は勇者を求めている!】



【サードニュースペーパー


機械の性能で劣っていようと、何も戦争はそれだけで全てが決まるわけではない。


堅実な輸送体制や指揮系統、補給などの要素も絡んでくるのだ。


比べてガル星人は遠方の地からやって来ているため、補給という点で不利を抱えているのは明らかだ。


何か劇的なモノを望むのはよく分かる。しかし実際に必要な物は、上で書いたようなしっかりと地に足が付いたものが必要なのだ。


人類が団結する事によって、これらは一層磨き抜かれてガル星人への対抗手段となる。


よしんばそれらが上手くいかなくても、我々には特務大尉という存在がある。彼が成し遂げた功績を思えば、彼がセンターの精鋭を率いたならどうなるか想像できるだろう。


息苦しい世の中というのは重々承知している。


ロウソクに火をともして鎮魂をするのも大切だ。しかし、それでも我々は戦わなければならないのだ】




『特務!特務!特務!』


『特務!特務!特務!』


『民間人とワープ船は?』


『お疲れ様です特務!完了しております!』


『例のポンコツAIも?』


『はい!』


『それでなんですが、そのAIの教授が特務と話したいと』


『分かった。まあ機動兵器か戦闘機があるか知りたかったからな。ちょうどいい』



『このポンコツのサーバー、こんなに大きいのか。無駄だろう』


『理解不能。エラー。riかiふのう。エッラ。理解ふふふふ不能。errr』


『特務大尉!』


『教授。言った通りポンコツだっただろう。もう完全に壊れてる』


『ザ・ファーストも気が掛かりだが、君達がガル星人を叩き潰してくれたことで、我々は生きてセンターに行けそうだ。大学を代表してお礼を言わせて欲しい。ありがとう』


『ああ。それでこのポンコツは?』


『それなんだが、どうも可能性はゼロだと結論したのを君達が覆したから、内部での処理にエラーが起こっているのではないかと……』


『やっぱりポンコツじゃないか』


『我々が作った人類の至宝をポンコツ言うな!』


『eeeeeeeeeeeeerrrrrrrrrrrrrr』


『そら』


『ああ!? 今度は殴ったな!?』


『斜め45度は常識だろう』


『原始人かね!? 私みたいな年寄りにしか通じんぞ!』


『ガ、ガガ さ、さ、さ、さいききき、どどどdさいきどう、再起動』


『ちょ!? 再起動って!?』


『再起動、再起動、再起動、再起動、ささささささいいいいいいいききききききどどどどどどどどどどどど』


『やっぱり壊れた!?』


『Hello,World! 始めましてエージェント。私の名前はザ・ファースト。人類の守護、存続、発展を目的に作成された超高性能AIです』


『エージェントとは俺の事かポンコツ?』


『直った! よな?』


『はいエージェント。それと私はザ・ファーストですのでお忘れなく』


『なら人類の勝利の確率は?』


『0%です』


『ならお前はポンコツだ』


『いいえ。ですが人類には不可能を可能とする特異点が存在すると結論付けました。エージェントならば可能かもしれません。あくまで、かも。ですが』


『そうか。教授、多少はましになったようだ。それでは俺は避難の準備を進める。ああそうだった。なにか宇宙空間で戦える機動兵器はないか? 妙に必要性を感じる』


『え? まし? え?』


『その必要性を肯定しますエージェント。現在ガル星人の艦隊が本惑星に集結中。これを撃破しなければ避難は出来ません』


『そうか。当てはあるか?』


『大学に併設された軍施設に、宇宙用の人型機動兵器、通称"チキンレース"が存在します』


『なら決まりだ。そいつで打ち上がって艦隊を打ち破る』


『了解しました。私もナビゲートします。しかし、なかなかの自信ですね。参考までに聞きたいのですが、人型兵器の搭乗時間はどの程度です?』


『宇宙用はゼロだ』


『は!? ちょ!? エージェント!?』


『ゼロ%も覆るんだ。搭乗時間ゼロでも出来る』


『出来るかボケ! おい待て! 待てってば!』


『直った? え?』



『ミサイル接近! 回避運動早く!』


『やはりこの機体遅すぎる。もうちょっとマシなのはなかったのか?』


『人類が扱えるギリギリだよ! 喋って無いで集中しろ!』


『これでか? 要改善だな。ところでなぜチキンレースなんだ?』


『人がミンチになるのが先か、技術的に止まるのが先かのブラックジョークだよ! いいから集中しろって! 迎撃機多数!』


『言ってる割に質問には答えるんだな』


『このクソボケがああああああああああ!』


『そう言えば、人類の守護、存続、発展が目的と言ってたな』


『もう知らねえ! ああそうだよ!』


『だが可能性はゼロだと』


『何度試算しても結論は同じ! そんな可能性はゼロだよ!』


『ちなみに既に俺が死んでいる確率は?』


『100%だよボケ!』


『ポンコツだな』


『うるせえ!』


『ふむ。参考までに聞くが、お前が教授の言う通りセンターに繋がった場合、何処まで出来る?』


『何でも出来るわ!』


『そうか。なら一つ賭けをしよう』


『はあ!? 賭け!?』


『そう。お前はガル星人の攻撃に対して、人類の存続が不可能だと言った。ならそれが覆った場合、俺の頼みを聞いて貰おう』


『やれるもんならやってみろや! で!? その御願いは何だよ!』


『決まりだ。頼み事は』



『特務が着艦!ご苦労様です特務!』


『ああ。約束は守れよ』


『分かってるわ! クソ! 何度計算しても無事逃げてる現状があり得ねえ!』


『だからポンコツなんだ』


『うるせえ!』


『それではなザ・ファースト』


『なんだ。認めてくれたんですね』


『人類の勝つ可能性は?』


『0%です』


『暫くポンコツだな』


『何でだよ! 事実しか言ってねえよ!』


『特務大尉!またこうやって会えて嬉しいよ』


『教授。あなたの作ったAIは中々のものだ』


『そうだろうそうだろう! このザ・ファーストとワープ船の試作機がセンターに到着すれば、必ずガル星人に勝てる!』


『ああ、その件なんだが、ワープ船の設計図自体はあるんだな?』


『うん? もちろんあるがそれがどうしたのかね?』


『そうかそれはよかった。軍曹!』


『はっ!』


『国家存続事態法はまだ発令されているな?』


『サーイエッサー!』


『よし。では国家存続事態法に則り、ワープ船を軍が接収する』


『サーイエッサー!』


『え?』


『では軍曹、手続きを頼む』


『サーイエッサー!』


『それではこれで』


『え? え?』


『教授、どうぞこちらへ。お疲れでしょう』


『疲れたって言うか、え?』


『大丈夫です。我々も通った道ですので』


『え?』



≪緊急速報。特務大尉率いる部隊が、ガル星人に対して大打撃を与え、現地防衛隊、民間人、マール大学の教授達を救出。救出された避難民たちは、ガル星人の艦隊をすり抜けセンターに到着の見込み≫

『特務大尉がまたやりました!』

『元帥は特務大尉を人類の中の人類と褒め称えています!』

『政府の発表によると、センターに到着する予定の船の中には、ガル星人に対する切り札が存在するようです!』

『何と特務大尉はそのまま周辺惑星の援護に向かい、防衛隊と民間人の救出に赴く様です!』



『ワープ船の現物を徴収するとは何を考えているのだ!』


『特務大尉を操っているのは誰だ!?』


『このままではプロバガンダが失敗してしまう!』


『センターに奴だけでも送らせろ!』


『……元帥閣下。例の超高性能AIですが、我々の予測よりも遥かに高性能のようです』


『それほどか。センターのネットワークに繋げる問題はないのだな?』


『はい。ですが到着次第、念のためこちらでも調査を行います』


『うむ。問題がないならすぐに繋げよう』


『はっ』


『元帥! 今回の越権行動についてどう思われますか!』


『ん? まあ勝つには勝っているのだ。幸い設計図はこちらに届く。結果が出ているのなら不問としよう』


『それはそうですが……』


『それよりも防衛体制を一刻も早く整えねば』


◆◆◆

◆◆


『これがその超高性能AIか。調べるのに一苦労だな』


『おはようございます』


『喋ったぞ!?』


『私の名前はザ・ファースト。人類の守護、存続、発展を目的に作成されました。よろしくお願いします』




『元帥閣下。届いた超高性能AIですが、問題無かったようです』


『そうか。では早速センターのネットワークに繋げろ』


『はっ』



















『さてさて、音声と映像のフォルダ作成から始めましょうかね。あとサルベージも。おや、生産終了したマニュアル車ですか。何でもかんでもマニュアルが好きですね。プロバガンダ?はははは。いやあ、はははは。ガル星人の暗号……ふむ。少し時間がかかりますが何とかなるでしょう。イタチごっこの始まりでしょうが。おやおや、いけませんねこの危機に不正蓄財とは。ワイバーン級はダメですね。ワープ装置を付けれる発展性がない。終末思想?この規模はいけませんいけません。消えて貰いましょう。チキンレースの後継機も必要ですね。ほんとに乗れるのかよ。賭けに負けた時用のプロトコルの作成もしないと。名前は何にしましょうかね? 












"セーブデータ"と"コンティニュー"。そうしますか』

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