部活の大会終了後の告白

水谷一志

第1話 部活の大会終了後の告白

【夏の高校野球、地方大会、いわゆる甲子園の予選。

今日は俺たち野球部の3年生最後の試合…になってしまった。

 なぜなら俺が、この部のエースである俺が最後に相手にサヨナラヒットを

 打たれてしまったからだ。】


【ちなみに俺たちが負けた高校は、地元のライバル校。俺たちは長年のライバルに負け、次  

 のステージを逃すことになった。】


【俺たちの高校はいわゆる一般的な高校で、決して野球の強豪校ではない。

 …でも、俺はこの試合、何としても勝ちたかった。

…それはもちろん、チームのため。俺たち部員、仲間のため。

…それに…。

俺はその時、野球場のグラウンドのすぐ近くで1人になって泣いていた。

…そんな中、俺と同じ3年生のマネージャー、ミカからLINEが届く。】


ミカ「ユウキ、何してんの?みんな帰るよ!」


ユウキ「ああ俺はここから家近いから、先に帰っててくれよ。」

   「歩いて帰るから。」


ミカ「はあ!?みんなと一緒に帰るよ!」


ユウキ「いや俺は今そんな気分じゃない。」


ミカ「…みんなに合わせる顔がないの?」


ユウキ「まあそんな所かな。」


ミカ「一応言っとくけど、」

  「今日負けたのは、ユウキだけのせいじゃないよ!」


ユウキ「だけ、ってとこ妙に引っかかる。」


ミカ「あ、ごめんそんなつもりはなかったんだけど…。」


ユウキ「お前いっつもそうだよな!」

   「ちょっと抜けてるよな。」


ミカ「本当にごめんなさい。」

  「励ますつもりが逆効果で…。」


ユウキ「いやいいよ悪気ないのは知ってるし。」

   「それに…。」


ミカ「それに…何?」


ユウキ「いやいい。」


※ ※ ※ ※


ミカ「ところで、私から話あるんだけど、」

  「今から待ち合わせできる?」

  「2人きりで話したいから…。」


ユウキ「お前みんなと帰るんじゃねえの?」


ミカ「みんなが帰ってから会いたいなあ。」


ユウキ「何だよそれ。」

「それで話って何だよ?」


ミカ「それは会ってから話すね。」


ユウキ「いや今は無理。」


ミカ「なんで?」


ユウキ「俺今めっちゃ泣いてるから…。

   「泣き顔見られるの恥ずかしい。」


ミカ「そんなの気にしないよ!」


ユウキ「いや俺が気にするんだって。」


ミカ「そっちに無理矢理行っちゃおうかな!」


ユウキ「止めとけ。」

   「あとミカ確か方向音痴だろ?」

   「多分球場の中でも迷うと思う。」


ミカ「バカにしないでよ!」

  「…でも図星かも。」

  「実際建物の中って余計に迷う。」


ユウキ「前から思ってたけど、」

   「ミカって天然だよな。」


ミカ「やっぱりバカにしてるじゃん!」


ユウキ「別にバカにはしてねえよ。」

   「それに…。」


ミカ「何?」


ユウキ「…やっぱいいわ。」


ミカ「ちょっとさっきから何よ~!」


ユウキ「それで話って…?」


ミカ「あっそうそう、じゃあ電話できる?」


ユウキ「あっそうそう、って…。」

   「ごめん電話も無理。」


ミカ「なんで?」


ユウキ「俺泣きすぎて声も変だと思うから。」


ミカ「ってかさユウキってさ、」

  「変にプライド高いよね。」


ユウキ「そうか?」


ミカ「そうだよ!」

  「今日の試合だって、1人で負けたの背負い込もうとしてるじゃん!」


ユウキ「別にそういうわけじゃねえけど…。」


ミカ「いや背負い込もうとしてるよ!」


ユウキ「…まあミカの言う通りかな。」

   「ごめん前言撤回する。」


ミカ「でしょ?」

  「ユウキはもっと肩の力抜いた方がいいよ!」


ユウキ「ミカみたいに天然になれってことか?」


ミカ「いや天然にはならなくていいよ。笑」

  「あとさっきからちょいちょい失礼だよ!」


ユウキ「悪りぃ悪りぃ。」

   「悪意はないから許してくれ。」


ミカ「まあ分かってますけど。」

  「とにかく一度深呼吸しよ?」


ユウキ「何だよそれ。」


ミカ「何なのかな。笑」

  「じゃあ、言いたいことLINEで言うね!」


ユウキ「…言いたいこと?」


ミカ「はい。」

  「ユウキ、私、ユウキのことがずっと好きでした。」

  「私と付き合って下さい。」


ユウキ「えっ…!?」

   「ちょっと、いきなり!?」


ミカ「いきなりでごめん。」

  「でも、私ずっと、私たちが部活引退したら告白しようって決めてたんだ。」


ユウキ「そっか。」

   「…ごめん。でもそれはできない。」


ミカ「えっ…?」

  「他に好きな人とかいるの?」


ユウキ「俺もミカのことが好きだ。」

   「それで、引退したら告白しようって思ってた。」


ミカ「えっ、じゃあ…。」


ユウキ「それで、俺はこの試合、ライバルに勝ったらミカに告白しようって思ってたんだ。」

   「でも俺たちは負けてしまって…。」

   「だから中途半端な気持ちでミカに告白したくはない。」


ミカ「ユウキ…。」

  「さっきからそれが引っかかってたの?」

  「…でも、告白したの私の方だよ?」


ユウキ「それは本当に嬉しいよ。でも…。」


ミカ「さっきも言ったけど、ユウキって本当にプライド高いよね!」

  「でもそんな所も好き。」

  「だから…私と付き合って!」


ユウキ「いやでも…。」


ミカ「ユウキが負けたら、私がフォローするから!」

  「一緒に楽しく過ごそう、ね?」


ユウキ「確かにプライド高いのかもな…。」

   「それに俺、けっこうややこしい性格だけどいいか?」


ミカ「もちろん!」

  「そんなユウキを好きになったんだから!」


ユウキ「ありがとう。」

   「俺もちょっと天然な、そんなミカが好きだ。」

   「これから、よろしくお願いします!」


ミカ「やったあ~!」

  「じゃあ今からそっち行っていい?」

  「ユウキの泣き顔、思いっきり見てやる!」


ユウキ「分かったよ。」

   「でも来れるの?」


ミカ「とりあえず目印教えて!」

  「分からなかったらスマホのナビも使うから…。」


ユウキ「おいおい球場内でナビかよ…。」

   「じゃあ今から伝えるから…、」


【こうして、俺たちは付き合うこととなった。】


【その後、ミカに俺の泣き顔をバッチリ見られ…、散々バカにされた。】

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部活の大会終了後の告白 水谷一志 @baker_km

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