第123話 強さの果て
「あれ? もう終わってたかー」
エリザがしゅたっと我の近くへ着地する
「そっちこそ、もう終わったのか?」
「当然でしょ、むしろあんたの魔力が感知できなくなったからここに来たんだし」
「そうか……」
先ほどのノロイの通信は、おそらく我の脳内が勝手に作った妄想だろう。一時ではあるが、エリザすら感知できない場所へノロイが通信できるとは思えない。しかし、それで解決したのならば別に問題は無いだろう。むしろ、問題は……
「それで、これからどうするの? 一応、危機は去ったと思うよ」
我の最終的な目的は、強者と戦う事ができる世界を作る事。そのためにずっと待ち続けてきた。実際、いろいろな体験をすることは出来たと思う。まさか、自分が弱体化する事によって疑似的な強者と戦う事ができるとは
しかし……
「一つ聞かせてほしい。エリザはどこから来たのだ?」
「私? ……ああ、私が住んでいた世界は、天上界よ。あんたが戦っていた天使たちが天界で、その上ね」
「そこには、お主のような強者が沢山いるのか?」
「ふーん、今まで逃げてたのに、ここにきてそれを聞くんだ?」
エリザが指摘するように、我は無意識のうちにエリザと戦う事を避けていたと思う。ブラックドラゴンすら赤子扱いする神。一番分かりやすい、生物の頂を超える者
「いいよ? 遊んであげても。それであんたが満足できるとは思えないけど」
「……認めたくはないが、世界樹の体……これ以上の強さを誇る物質は存在しないだろう。その肉体を持って神へと挑む!」
「じゃあ、さっそくやろうか。私の退屈しのぎに」
エリザは本気を出す気がないのか、子供の姿のまま、大きな鎌だけを召喚した
「いくぞ! サウザンド・エア・カッター!」
エリザの周囲を、触れれば何でも切れる風の刃が囲む。しかし、エリザはそれを鎌の一振りで消滅させた
「この程度?」
「今のは様子見だ。これならどうだ? ブラックホール・ボム」
回避不能の暗黒の球体を発生させ、吸い込んだのちに爆発するはずだった。しかし、質量の無いはずのそれすら、エリザは鎌で真っ二つに切り裂く。我が感知できない何かの力が鎌に働いているらしい
「エア・ボム」
空気を爆ぜさせ、エリザの動きを止める。触れる前に爆発するこの魔法には、さすがのエリザも切り裂けないようだ
「少しはやるようね。それじゃあ、もう少し本気を出すわ」
エリザは鎌をもう一本召喚し、両手鎌というどうみても使いにくそうな装備になった
「死んでも恨むなよ。フレイム・トルネード・インフィニティ」
我は今出せる最大出力で炎の竜巻を作り出す。これは、中に居る者を焼き尽くすまでその炎のうねりは止まる事は無い。エリザを焼き尽くすように、炎は激しくゆらめき、そして……吸い込まれた
「ご馳走様。なかなかおいしいわね、これ」
エリザはなんと、我の魔法を食べたらしい
「じゃあ、お返しに、ぺっ」
エリザは単純な魔力の塊を、まるで唾のように吐いた。我はそれを両手で受け、あっさりと吹き飛ばされる
見た目以上に強力だったそれは、我を地平の果てまで吹き飛ばした。そして、我は動くことができなくなった
「こんなところかしら? 私にも勝てないようじゃ、天上界へ行ってもあっさりと返りうちね」
「……ふっ、我もまだまだ強くならねばならぬという事か」
「そうね。鍛えてあげてもいいわよ? 私のダンジョンで!」
「……ああ、頼む。我はまだ強くなりたい。誰にも負けないくらいに!」
「じゃあ、私のダンジョンへ行きましょう。せっかくだから、みんなも誘って、ね」
「そうだな……我だけが強くなると、僻む奴らも居ろう。一人で強くなるよりも、もっと強くなる方法、か」
「ふふ、そうよ。みんなを強くして、自分も強くなって、そしてさらに強くなるの。いつか、本気の私と戦えるくらい強くなってね」
封印されていた最古の魔王。しかし、復活したら美少女になった。さらに、その体は呪われているようだ 斉藤一 @majiku77
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