第116話 タマモ

「これだけやれば十分だろう」


まるでミノムシのように縄でぐるぐるに巻かれたタマモ。しかし、思ったよりも傷が深いのか一向に目を覚ます気配は無い


「目が覚めるのを待つのも暇だから、回復してやれ」

「我もちょうどそう思ったところだ。エクストラ・ヒール」


我がつけた傷は回復したと思う。そもそも、縄でぐるぐるすぎて傷自体見えぬからな


「わらわは一体……はっ、なんじゃこれは!」

「悪いが拘束させてもらった。一応、話くらい聞いたらどうだという意見があったからな」

「大事な話じゃ。縄をほどくのじゃ!」

「それは出来ん。ほどいたら逃げたり暴れたりするのが目に見えているからな」


それには我も同意する。そもそも、助ける必要があるのかどうかすら疑問だ


「ならば言うぞ。聞いて驚くな! なんと、タマモが裏切ったのじゃ!」

「……は?」


全員、放心したようだ。こやつは一体全体何を言っているのだ? 


「もしや、さっきの攻撃で頭が……」

「違うわ! こうしてはおれんのじゃ! 急がないと世界が終わるのじゃ!」

「だったら、もう少し詳しく説明してもらおうか」

「分かったのじゃ! それならば、これを見よ」


タマモは器用に縄の間から尻尾を出した


「……で、それがどうした」

「見て分からぬか? わらわの尻尾が1本しかないのじゃ」

「それは見てわかる。だから、それがどうしたというんだ?」

「だから、タマモじゃ。ええい、ややこしい。今は暫定的にあやつのことを八尾と呼ぶのじゃ」

「八尾だと?」

「そうじゃ。わらわから別れ、自我を持ったもう一人のタマモが世界を破滅させようとしておるのじゃ」

「なんだと!」


ここにいるタマモが本体らしく、向こうが偽物だと。それでも、尻尾の数が魔力の量になっているらしく、単純計算でもここにいるタマモの8倍の魔力量を保持しているらしい


「それだけじゃないのじゃ。魔物を捕まえては魔力を奪い、魔石に充填しているようなのじゃ。ここからはわらわの予想なのじゃが、あやつは大量の魔石を使って召喚の魔法陣を使い、地界と魔界をつなげようと画策しているのじゃ!」

「なぜそんなことが分かる?」

「なぜなら、わらわがやってみたいと思っておったからじゃ! いたた、やめい! 攻撃するな!」


動けないタマモを皆が攻撃した。一通り攻撃した後、再び話を聞く


「はぁ、はぁ、やってみたいと思ったが、やるわけがなかろう。そんな事をすれば、この地界で生きられるのは魔物だけになってしまうからの。それでは、わらわの娯楽も減るではないか」

「じゃあ、なんでそいつはやろうとしてるんだ?」

「知らん。そもそも、わらわの尻尾が勝手に自意識を持つこと自体が初めてなんじゃからな!」


これは困ったことになりそうだ。早々に、八尾のタマモを探し出す必要が出てきたようだ

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