第111話 エルフの長、クルゴン
エルフだからなのか、人間の門番と違って弓を持っている
しかし、その弓をこちらに向けることなく2人のエルフはこちらに向かってきた
人間と違い、エルフは耳がとがっている
服装も、虫に刺されない為か長袖ではあるが、動きを阻害されないように軽装になっている
「やあ、団体客とは珍しいな。森で迷ったのか?」
「いや、俺達はこの村へ用があって来た」
「……へぇ、どうやってここへ来たんだい? 普通は簡単には来られないように仕掛けがあるんだけどね」
迷って来るものはたまにいるが、ここへ来ようと思って訪れる者は居ないのか、エルフたちが警戒するような気配に変る
我には聞こえるが、もう一人のエルフが人間には聞こえない音域で仲間を呼んでいる
エルフの門番が、さりげない会話で時間を稼いでいる間に、数百メートル圏内に複数のエルフが集まり弓を構えているのが分かった
ここへ来る直前に唱えておいたソナーが役に立ったようだ。まあ、我から仕掛けるようなことは無いが
それと共に、ひときわ強い魔力を発するエルフが近づいてくるのが分かった
「ようこそ、客人。私はこの村の長を務めているハイエルフのクルゴンというものです。お疲れでしょうし、ここで立ち話というのもなんですから、私の家へ案内しましょう」
言葉は丁寧だが、実際は連行に近い。我達へと向けられる殺気がそれを証明している。何か変な動きがあれば、すぐに弓が飛んでくるのだろう
さて、どういう話の流れるなるのか……
しばらくして、村の中心と思われる場所へ着いた。森の中というだけあって、建物は全て木製だ。しかし、魔力を含んだ樹木なのか、下手な石造りの建物ようも頑丈そうだ
鍵すらかかっていない扉を開いて中へと進む
「さて、改めてお聞きしましょう。どうしてこの村へ? 聞いた話では、わざわざこの村へ訪ねてきたそうではないですか。どうやってきたのです? ここへ来る手段は誰も知らないと思っていたのですが」
「ああ、普通は知らないだろうな。俺の先祖がもの好きで、来る手段は伝えられていた。そして、ユグドラシルの葉を使って来た」
「やはりそうだとは思っていましたが……外界にはすでにユグドラシルの葉は存在しないかと思っていました。あれは大変優秀な薬の材料になりますからね」
実際、エリザに作ってもらわなければ人間界には1枚も存在していなかったのだろうと思う。葉の特性上、枯れるという事は無いと思うが、万能薬の材料となれば王族の病気などにあっさりと使われそうなものだ。実際に使われたからこそ1枚も残っていないのだろうが
「それで、俺達の目的だが……ユグドラシルの枝を貰いたい」
「ユグドラシルの枝……ですか。外界に移植したいという事ですか? しかし、外界の薄いマナでは育てる事が出来ませんよ?」
「いや、枝そのものを加工したいと思っている」
「はははっ、ご冗談を。ユグドラシルの枝を加工できる物質など存在しませんよ。我々に与えてくれる葉や枝ですら、ユグドラシル自身が与えようと思うまでここへ落ちてくることなど無いのですから。それこそ、葉ですら百年に1枚あればいいほうですよ」
「だが、必要だ。それが無いと、世界が滅ぶ」
「それはまた……分かりました。詳しいお話を聞かせてもらえますか?」
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