第110話 エルフの村へ
「……おい、本当にこれで合っているのだろうな?」
「この前、説明しただろ? 合ってるんだよ」
ノロイはユグドラシルの葉を目の高さまで持ってくると、パッと手を開いて落とす。すると、ひらひらと落ちるユグドラシルは、ゆっくりと地面に落ちた。
「さっきとほぼ直角じゃないのか?」
「うるさいな。ごちゃごちゃ言わず葉の示す方向へ行くんだよ」
頭の中では「これは不良品じゃないのか?」とか「風向きで変わるんじゃないのか?」とか思ったが、ノロイが真剣に葉っぱを落としては行き先を確認しているので黙って従うことにした。
「さっきと逆方向……」
「いいんだよ」
この辺は既に森となっていて、深い木々の葉に遮られて太陽の方向すら分からない。だけど、数分前に歩いた場所くらいは分かるつもりだ。そこへ向かって歩いて行っている気がする。しかし、もう一度葉を落とすと、右に90度曲がっていった。
「……迷ってない?」
ミレも心配になったのか、口に出す。
「……迷ってない」
ノロイは再び葉を落として行き先を確かめる。すると、葉はピタリと空中で止まった。
「どういうことだ?」
地面から1mほど浮いた場所でピタリと動かない。風が吹いてもピクリとも動かない。
「ふむ、ここに結界があるな」
感覚を狂わせる結界が張ってあったのだろうか。ユグドラシルの葉を越えると、今まで目と耳を塞いでいたのではないだろうかというほどの感覚の差があった。
「いつの間に結界の中に入り込んだのやら」
「エルフなりの防衛手段なんだろうよ。だから、ユグドラシルの葉なしじゃほとんどたどり着けん。運よく抜けるやつは居るだろうが、帰ってきた事例はほとんどねぇな」
「それは何故だ?」
「エルフが帰してくれないんだよ」
「……侵入者を殺すのか」
「あ? 何を勘違いしてやがる。そうじゃねぇよ。エルフが帰さないのは、子孫を作るためだ。同族どうしじゃ血が濃くなりすぎるから、たまに外部からの血を取り入れないと変な病気一発で全滅だ」
「そういう事か。で、そのまま村でずっと過ごしているのか」
「だな。エルフは美男美女だらけって聞くし、そこでチヤホヤされるなら帰りたくも無くなるだろ。まあ、濃くなった血からは特別なエルフ、ハイエルフが生まれる事があるらしいがな」
「それは普通のエルフと何が違うのだ?」
「俺も詳しくは知らん。っと、村についたみたいだぞ」
うっそうと茂る下草をかき分けると、コテージの様な建物が見えてきた。その前には柵があり、簡単に越える事は出来そうだが心理的に柵の無い場所を目指してしまう。そこに2人のエルフが立っていた。
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