第109話 エリザダンジョン13

「次は誰?」

「こうなったら、一斉攻撃だ!」


ミレ、アクア、エンカ、ライカと一緒にパペットで攻撃する。我が遠距離からサポート魔法を、アクアとエンカが近接を、ミレとライカが中距離から攻撃魔法を放つ。しかし、そのどれもがエリザの前にはかすり傷さえ負わせられない。魔法は避けられ、相殺され、近接攻撃は紙一重で躱されカウンターを受ける。我が放った鈍足魔法や拘束魔法は、まったく気にしていない。


「油断しすぎだ」

「なっ!!」


エリザのパペットが止まる。見ると、ノロイ本体がエリザのヘルムを外したところだった。


「いまだ!」


我達は一斉にエリザのパペットを攻撃し、吹き飛ばす。操作されていないパペットは、あっさりと場外へ落ちていった。これはさすがに「ずるい。今のは無効よ!」と言われるだろう。


「…………」


意外にも、エリザは何も言ってこない。すーっと息を吸うと……。


「あー、面白かった! やっぱり対戦はこうじゃ無いとね! 場外戦闘もアリアリよ!」


案外と怒るどころか、楽しんでいたようだ。


「それじゃあ、俺達の勝ちってことでいいな?」

「いいわよ。報酬は、ドラゴンのコアだったかしら?」

「ああ、そうだ。5つな」

「……数の指定はしていなかったけど……まあいいわ。はい、どうぞ」


エリザは空間から黒い大きなコアを5つノロイに渡す。


「これで俺達はダンジョンを進む必要は無くなったわけだが?」

「そうね。私も満足したし、無理に進む必要は無いわよ。今度来た時、もっと面白く改造しておくわ。くーっ! インスピレーション! インスピレーション!」


エリザはぴょんぴょん跳ねて楽しそうだ。ひとしきり跳ね終わると、地面に魔方陣を描いた。


「これに乗れば、1階まで戻れるわよ。私はこれからマスタールームに行ってダンジョンの改造を始めるから、1階の人たちに伝えておいて。もう元のダンジョンに戻したって」

「分かった」


我達は魔方陣に乗り、1階へと戻る。待っていた冒険者に、エリザの言葉を伝えると、さっそく次の階を目指したようだ。マジックアイテムのドロップしない階層には用は無いのだろう。


「コアは手に入った。あとは、ボディを作るだけだが……せっかくだからもう一段階上の素材を手に入れたい。狙うは……ユグドラシルだ」

「ユグドラシルって、エルフの里に生えているっていう伝説の?」

「それって誰も見たことが無いから伝説じゃないの?」

「こんなこともあろうかと、エルフの里へと導いてくれるというアイテムを手に入れておいた。ユグドラシルの葉だ」

「それって、しおれる事が無く、すりつぶして飲めばどんな傷も治るって言う……どうやって手に入れたの?」

「エリザが玄武の甲羅と交換してくれた」

「…………」

「ユグドラシルの葉にはもう一つ隠れた効果があって、ゆっくりと落とすと、必ず葉の先がユグドラシルの樹の方角を向くらしい。だから、それを繰り返せばユグドラシルにつくという算段だ」

「分かった。それでは、エルフの里に向かうとするか」

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