第108話 エリザダンジョン12
各々が練習している間、我の元にノロイが来た。
「ちょっとこっちにこい」
「なんだ?」
エリザに聞こえないようにか、少し離れた位置に移動する。
「人形師の俺が断言する。お前たちが何百人束になってもエリザのパペットは倒せない」
「何故そう言い切れる?」
「まず、素材が違いすぎる。お前の動かしているパペットには中位の魔物のコアを使用しているが、エリザのパペットのコアはドラゴンだ」
「バカか!? 馬鹿なのか!?」
「しっ! 声がでけぇ!」
「す、すまぬ……」
我は口に手を当てて声を下げる。
「だったら、あのパペットを奪えばわざわざ41階まで降りるまでも無くミッションクリアではないか」
「それこそ不可能だ。あいつはダンジョンマスターだぞ? 下手なことをしたらそれこそ何をするか分からねぇ。ルールがあるほうがマシだ」
「しかし、中位の魔物でドラゴンを倒すのと同様の力量差ではないか」
「だから、多対1でもいいって言ったんだろ? 俺に考えがある。ごにょごにょごにょ」
「……本当に、上手くいくのか?」
「どっちにしろ、上手くいかなきゃ勝てやしねぇ。あいつが飽きるまで延々と戦うのか?」
「うっ、分かった。やってみるか……」
我達は元のステージ近くへと戻る。
「そろそろ準備はいいかしら?」
「待った。少しルールを追加したいがよいか?」
「どんなルール? 多少のハンデはあげるわよ」
「ひとつ、複数人で当たりたい」
「それはさっきも言ったけど、いいわよ。他には?」
「ひとつ、場外のプレイヤーにも攻撃する権利が欲しい」
「援護魔法を使いたいってこと? でも、パペットを動かしながらは無理じゃないの? ああ、負けたプレイヤーがやるのね。いいわよ。他にまだある?」
「ひとつ、ステージから落下したら負けとする」
「ふーん……まあ、いいわ。どうせ無理だし」
「我達からの条件は以上だ」
「それなら、ステージに上がりなさい!」
エリザの声に、我、エンカ、ミレ、アクア、ノロイーー全員のパペットがステージに上がる。
「スタートよ!」
エリザの掛け声によって戦いが始まった。
「まずは俺からだ! パペットの使い方には自信があるぜ」
先行はノロイだった。黒を基調としたアサシンのようなパペットが地を這うように、すべりながらエリザパペットへと向かう。
「へぇ、他のパペットより動きはいいじゃない、だけどそれだけね!」
エリザのパペットは両手から複数の炎を飛ばす。威力は無いが、命中率重視のようだ。それをノロイのパペットは器用に避ける。
「これでどうだ!」
ノロイパペットの腕から細いワイヤーが飛んでエリザパペットの足に絡みつく。そして、ワイヤーを引っ張ってエリザパペットを転ば――せなかった。
「残念ね。パワーが違うわ」
エリザパペットはワイヤーを逆につかむと、ノロイパペットを引き寄せる。文字通り、飛ぶように引き寄せられたノロイパペットの顔面に、エリザパペットのパンチが炸裂する。
「はい、一人アウトね」
エリザの言う通り、それだけでノロイパペットは動かなくなった。
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