第101話 エリザダンジョン5
「どうだ! 俺様はまだもう一段階の変身を残しているんだぜ!」
「いや、首が3つになるだけなのだろう?」
「バカが! 真ん中の首が回復魔法を使えるようになるのだ!」
「それはやっかいだな」
自己回復するボスとか戦闘が終わらぬではないか。まあ、魔力が切れたら終わるか。子犬の水にはエンカが炎を。子犬の炎にはライカがマジックアイテムの手袋をはめて水を当てて相殺している。子犬だけにすばしっこく、アクアの槍も思うように当たらないようだ。
「でだ。この状況を打破するのにお主は何かしないのか?」
「俺か? 俺に何をしろっていうんだ」
「何か無いのか? ほら、呪具を作るとか言っておったではないか」
「あー……あれか。あるにはあるが、こんなところで使うのはもったいない。まだ10階だぞ?」
「それもそうか。こいつより強いボスがまだまだ居るのだな……」
そして、この膠着状態に業を煮やしていたのは子犬も一緒だったようだ。お互い単純な魔法の撃ち合いだけで、技術の要る複合魔法やトリプルなどの複数魔法を唱えられないようだ。子犬の方も頭は二つあるが体は一つなので、3対1という状況に攻めあぐねている。
「ちっ、俺様の第二形態についてくるとは。こうなったら第三……」
「待て! お座り!」
「なっ――」
子犬はあっさりとお座りする。本人は抵抗しているのか、微妙にプルプルしている。子犬が動きを止めたことで、ライカ達も動きを止める。「隙あり!」と攻撃しようとしたアクアはミレに引き留められている。
「エリザ様! なぜ止めるのですか!」
「だって、見ててつまんないんだもん」
「詰まらないとは! これでも俺様は一生懸命……」
「あー、はいはい。ほら、餌あげるから」
エリザは何か空中で操作すると、子犬の前にステーキのような肉が出現する。子犬は動けないようで、目の前に出された肉を前にしてよだれをだらだらと垂らす。
「エリザ様! どのようなご命令でもお聞きします! 早く肉を食わせてくれ!」
「とりあえず、ここを通過するから。いい?」
「どうぞ! ゲートオープン!」
倒さなくても次の階へ行けるのか……。ドロップアイテムは当然手に入らぬが、目的はそれじゃないので別にいい。ライカが微妙に物欲しそうな顔をしているが、犬から落ちている肉を奪うでないぞ?
「さ、行くわよ」
「…………」
我達は肉を食っている子犬を尻目に次の階層へと足を進めた。11階層からはレンガ作りのダンジョンから土壁のダンジョンになるようだ。といっても、見た目だけで硬さは変わらぬみたいだが。さて、ここからどう変わるのやら。
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