第84話 呪具

ノロイは徹夜で何かを作っていたようだ。夜間の見張りは特に置いていない。ノロイのパペットが、もし侵入者が近づけば知らせてくれるからだ。


定期的にソナーで調べているので、付近には大きな魔物や、こちらを明確に知って向かってきているような人物は居ない


「できたぞ」


目が覚めると、ノロイが目の下に若干クマを作りながら伝えてきた。


「もうできたのか?」


我はノロイに着いていく。すると、小さなものがいくつかあった。その中には、10cmくらいの精巧な人形もある


「まさか、この小さいのが我の新しいボディか?」


「そんなわけあるか。人形がたった一日で作れるわけが無いだろう。部品を徐々に作って組み立てて行くに決まっているだろ。今は棺桶の中で制作中だ」


「それでは、何ができたのだ?」


この小さな人形ができただけとかか? まさかな。


「見て驚け、これが新しい呪具だ」


小手の様なものや、ちょっとしたナイフみたいなものがある


「マジックアイテムではないのだな?」


「ああ。明確に何かを生贄に捧げる必要があるからな」


マジックアイテムが使うのはマジックポイントだが、呪具は素材などが要るようだ」


「例えば、この人形に使用者の肉片を入れれば、戦闘のサポートをしてくれる。肉片が消化? されるまでは手伝ってくれるぞ」


「我には使えんではないか……」


与える肉が無いぞ。そもそも、誰が好き好んで肉を与えるのだ? ああ、アクアにぴったりじゃないか


「アクアの肉を食わせれば永久に手伝ってくれそうだな」


「だな。それでいいか。次に、この小手は、腕に付ければそれだけで敵の攻撃を自動で防ぐよう腕を動かしてくれる。つけた腕から多少の血を抜かれるが、貧血にならない程度だから安心しろ」


「それも我には使えんではないか……」


与える血が無いぞ。これは、防御に難のあるライカかミレが使えばいいな。アクアは防御するだけ無駄だ


「このナイフはどうだ? これは斬りつけた相手のマジックポイントを奪う。ゴースト等の非実体系のエネルギー体なら直接取り込んで……そのうち魔剣化する」


「危険ではないのか?」


「まあ、魔物に限るから、人を殺して魔剣にするとかは無理だぞ」


いや、魔剣が危険じゃないのか? と聞いたのだが……。これも、ミレかライカが使えばいい。我には魔法があるからそもそも近接戦闘をほとんど行わない


「最後に、隷属の首輪だ」


「そんなもの作るな!」


隷属の首輪は、奴隷などに着けると、その奴隷のステータスを50%奪うと云う物だ。奴隷がどれだけ強かろうと、主人が半分強くなればほぼ負けなくなる。不意を打たれるとか、戦闘経験が無ければ負けるという事はあるが、1対1ならほぼ負けることは無くなる


「私が力を貸してあげようか?」


エリザの分身がそう言う。しかし、分身の実力は未知数だし、そもそも神に効果があるのか?


「あたいの力を使ってくれ。親父を助けてもらう代わりだ」


エンカが自ら隷属の首輪をはめる。しかし、まだ主人が決まっていないので効果は無い。


「誰が遣う?」


我はエンカの力を貰ったところで大して変わらぬ。ノロイはそもそも戦う気が無い。ライカ辺りにパワーアップしてもらうか。


「ライカ、お主があるじとなれ」


「私? ミレさんのほうがいいんじゃないの? 戦闘になっても自衛できるように」


「それよりも、戦力が欲しい。我一人では手が回らぬときもあろう」


「それじゃあ、ライカ。この首輪のこの穴に指を入れろ」


「こう? ……あいたっ」


ライカは指をひっこめて口に含む。穴に指を入れると、針が飛び出て血を取られるからな。これで、エンカの力が半分になり、ライカがその分強くなる。あれ? エンカが戦った方がマシじゃないのか? ……気が付かなかったことにしよう。これで、エンカが裏切る事が無くなった、そう思う事にする。

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