第83話 四神捕獲に向けて

「それで、提案するからには居場所を知っているんだろうな?」


ノロイが確認の意味でエリザに尋ねる。ここまで話して知らないとか言ったら袋叩きだ。もちろん、その後どうなるかは目に見えているので我は参加せぬが。


「さっきも言ったけど、東西南北よ。そして、魔王も東西南北に居るのよ」


「え? 魔王5人いるってさっきタマモが……」


ミレがさっそく矛盾に突っ込みを入れる。しかし、それは想定内の質問だったようだ。


「東西南北と、その中心よ。ちなみに、タマモは気が付かなかったみたいだけど、中心の魔王はクラマ城の殿様よ。タマモは知らず知らず魔王を倒しているのね」


「嘘?!」


我も気がつかなかったが、他の誰も気が付かなかったようだ。まあ、一番強い者が魔王なら、殿様が魔王でもおかしくは無いのか? それなら、キールに任せずに自分で動けばいい物を……と言っても、封印に力を添いでいたのか? 分からぬ。


「まあ、タマモの封印をそのまま活かしていたみたいだから、気が付かないのも仕方が無いわね。まあ、タマモの封印が解けたから代わりに塔がその代わりをしているみたい?」


エリザは何かを読む様に話している。エリザの視線の先を見たが、何もない。本体が見ているのか?


「とりあえず、エンカの居た魔王城は南ね。東の青龍・南の朱雀・西の白虎・北の玄武だから、朱雀が最後ね。強さ的には西から順番に、西、北、東、南に行くのがいいかしら」


他の魔王を倒す前に四神を倒し、魔王を倒して四神を据える。真ん中は塔がある間は大丈夫ということか。


「その前に、素材集めをしたいんだが」


「そうなの? 早くしてね。じゃないと、タマモがいつ暴れだすかわかったもんじゃないわ」


エリザはアクアの肩の上で足をぶらぶらさせている。今は人間形態のほうだ。


「それじゃ、エルダートレントはどこだ?」


「それなら、こっちだぜ」


エンカの案内の元、エルダートレントに向かう。そんなに遠い場所じゃなく、森の中の一番緑の濃い場所だった。


「エルダートレントは擬態がうまくて、ちょっとやそっとじゃその辺の木と区別がつかない」


「それは知っている。エンカ、その辺の木を燃やせ」


「いいのか? 燃やすのは得意だけど……フレイム・ショット」


エンカは一番大きな木に向かって火の玉を撃つ。それが当たりだったようで、木がワサワサと揺れて自分の幹で燃えている火を、枝で消す。


「当たりだな。マオ、そいつからできるだけ大きな枝を採ってくれ。幹じゃないぞ、枝だからな!」


一番大きな枝か……、今火を消したやつが一番太く見えるから、それでいいか。


「エア・カッター」


スパリと枝が切れ、ドスンと落ちる。太さは1m程で長さは2mほどあるな。そして、エルダートレントは根っこを足のようにして逃げ出した。


「追うか?」


「いや、この枝があればそれでいい。こいつで新しい人形を作る!」


ほぉ、我の素体がエルダートレントだったとは……。魔力を通すし、固いし、うってつけか?


「ちなみに、エルダータイガーの場合はどうなっていたのだ?」


「エルダータイガーの牙で人形を作るつもりだったな。そんときは1mくらいの大きさだったろうが、頑丈さで言ったら牙の方が上だな」


「……そんな小さな体はお断りだ」


「さて、さっさと作ってしまうから、お前たちは好きに遊んでろ」


どうせもうすぐ日が落ちる。遊ぶよりもさっさと食事と寝床の準備をするとしよう。




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