第79話 塔の外へ


我が魔界の階層から戻ると、そこは塔の屋上だった。そして、そこには他の仲間たちが全員居た。ただ、チック達は見当たらないが。


「どういう訳か、階段を下りたはずなのに屋上に出たんだ」


「あっ、私も。一応他に階段が無いか調べたけど1つしかなかったし」


「それなんだが、この塔の作成者は我の知り合いだった」


魔界うんぬんというのは抜きにして、塔の作成理由と現状を話した。


「いつの間にそんな事になっていたんだ……」


「我は知らぬ。目覚めたのもついこの間だしな」


ノロイは右手で自分の顔を掴み、こめかみをマッサージしている。アクアは話が分かっていないようでボーッと空を見ている。


「とりあえず、この塔に魔力を補充する事が重要ってことは分かったわ」


「基本的に塔の内部で使った魔力が塔自体に還元されるようだから、適当に魔法を使っていればそのうち自動的に外へ出られるだろうな」


「ギルドに、何て報告すればいいのかしら……」


ミレは塔の重要性は理解したが、誰が作って、本当にそう言う効果があるのか、とか、実は裏でギルド自体が誰かにいいように使われているんじゃないか、とかブツブツ呟いている。


「じゃあ、手っ取り早くマオの魔力を5%解放するか」


「その前に、ノロイよこっちにこい」


我はノロイを連れて皆から少し離れる。アクアがついて来ようとしたがライカに腕を引っ張られて連れ戻される。ライカ、助かった


「我の封印はお主にも解けぬらしいぞ。だが、時間をかければ徐々に解けるらしいから、少しずつ封印を解いてほしい」


「誰からそんなことを……、まあ、強引に封印を解いたり、魂を分離させたりはできなさそうだとは思っていた」


さすがに製作者だけあって理解は早い、というかなんとなく気づいていたのか


「万が一、何かあった時のためにリミッターの上限を上げておくことには賛成だ。だが、封印が解けたらお前逃げるだろ」


「馬鹿者。我が逃げるわけなかろう。それに、こうして制限をかけている方が戦えるやつが多くて案外いいものだ」


ただ、外見だけはさっさと男に戻してほしいとは思うが


「さて、さっさと塔に魔力を補充するか」


我は結界を破壊しない程度の魔法を結界に向かって連射する。ほどなくして、階段ではなく、扉が目の前に現れた。


「これをくぐればいいのかしら?」


「恐らくそうだろう。塔の魔力がたまったようだからな」


我達が扉をくぐると、そこはもう塔の外だった


「あんたたちも無事だったか」


チック達のパーティも無事に出られたようだ。といっても、魔力が溜まるまではほぼ無害らしいが、チック達の魔力だけだと数年は閉じ込められたままだったかもしれないな。


「そっちも無事だったようだな。これからどうするんだ?」


「とりあえず、ギルドに報告に行くけど、君たちは?」


「我達は他にやることが出来たからそちらを優先する。ギルドへの報告は任せた」


「そうそう、私が報告書を書くからちょっとまってて」


ミレはそう言ってさっきの話を簡潔にまとめてチックに渡す。


「いいのかい? 手柄を横取りするようで心苦しいんだけど……」


「大丈夫よ、私たちは冒険者ランクを上げるつもりも、お金に困っているわけでもないからね」


「そうか、ありがとう」


我達はチック達と別れ、タマモを探す旅に出かけることにした。

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