第80話 再出発
「さて、魔王城へ向かうのだが、その前に何かやっておく事とかあるか?」
「タマモに勝つだけなら我一人で大丈夫だと思うぞ」
「それもそうね……それじゃあ、食料だけ買って行きましょう」
我達は、一番近くの街へ買い物に向かうことにした。しかし、それを遮るように空から何者かが降ってきた。そして、そのまま地面に墜落し、土ぼこりがたつ
「な、何?」
「砂ぼこりが邪魔で何も見えぬ。ウィンド」
単なる風を起こして砂を吹き飛ばす。地面には見たことがある少女が倒れていた
「……こいつは確か、エンカとかいうやつじゃないか?」
「そうね、四天王だったっけ? 今は魔王が倒されたらしいけど」
「それが何でこんなところに居るのよ」
アクアはエンカに近づくと、遠慮なしに頬をぺちぺちと叩く。
「うーん、あ、お前たちは!」
エンカはよろよろと立ち上がって構えるが、小鹿のように足がプルプル震えていて今にもまた倒れそうだ
「こちらからは特に攻撃する気は無いぞ? それより、魔王が倒されたらしいな」
塔で手に入った情報を元に、エンカから情報を引き出すことにした。エンカは口が軽いので新たな情報を得られるだろう
「そうだ! こうしちゃいられねぇ。……なあ、お前たち、あたしのこと嫌いか?」
「好きか嫌いかで答えると、嫌いになっちゃうけど、別に敵対してるつもりはないわよ」
「そうか! なら、手を貸してくれ! 親父が、変な魔物につかまっちまったんだ!」
「そいつは、タマモじゃないか?」
「知ってるのか? そうだ、そいつが急に現れてあっさりとあたしらを倒しちまいやがった。親父ですら尻尾一本を焼くので精いっぱいだった……。だが、お前たちも四天王を倒す猛者だ。頼む、過去の事は今だけは忘れて手を貸してくれ!」
我達は言われなくてもタマモを倒しに行く途中だったので丁度いい。正直、魔王城の場所は知らぬからな。
「手伝ってもいいが、条件がある」
「わかった。あたしに出来る事なら何でも言ってくれ!」
「ほぉ? いい覚悟だな。それじゃぁ……」
「ま、待ってくれ! 何でもとは言ったけどエロいのはやだぞ! その、あたしはほら、まだ誰とも付き合ったことも無いし、やっぱり最初は好きな人と……」
「何勝手に勘違いして照れてやがる。いくつか呪術の道具を作りたいから魔物の生息場所に連れてって欲しいだけだ」
「な、なんだ、そんなことか。いいぜ、連れてってやる。でも、できるだけ急いでくれよ?」
「分かっている。そうだな、最初はエルダートレントかエルダータイガーのどちからだ」
「それなら、城へ向かう途中にある森と山にいるぜ。こっちだ!」
エンカはさっそく案内しようと先に歩くが、しばらくしてよろめいて倒れる。
「ちっ、気力はあるのに体がついてきやしねぇ」
「ヒール、タフネスヒール」
我はエンカに回復をかけてやる。初めにエンカと会ったころの50倍の魔力かな?
「す、すげえな。あっという間にケガも治って体力まで回復しちまいやがった。よし、これならいくらでも急げるぜ、フレイム・スカイ」
「おい、勝手に飛んでいくな!」
我達は慌ててエンカを追って森へ向かった
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