第76話 フレッシュゾンビ
「さて、これで仲間が全員見つかったし、お別れか?」
「そうですね。あんまり大所帯で過ごすのも、連携の面ではやりにくいでしょうし」
チックはそう言って立ち上がる。
「えーっ、もうお別れ?」
テットが不満をそのまま口にするが、人数が多くなることに利点がないため、そのまま別々に行動した方が良いだろう。
「もし、会う事があればまたよろしくね」
会って自己紹介しかしてないライカとミレにとってはそこまで思い入れはないようだ。
「私に会うのは不可能よ!」
アクアはそう言って胸を張るが、意味が分からんので皆スルーした。
「また」
トトが口数少なく別れを告げる。
「ありがとな!」
ツェナーが握りこぶしを作ってウィンクする。
「じゃあな」
ノロイが後ろを向いて歩くのを先頭に、我達もそれに続く。
木のウロに入り、今度は離れ離れにならないようにきちんと続く。
ノロイが先頭だったため、次の階はまた墓場だった。
「ヘェイ、ボーイアンドガールズ。俺様と勝負をして勝てたら次の階の階段を開いてやる」
墓石の上にやけに元気なゾンビが偉そうに腕を組んで提案してきた。
「あんただれ?」
アクアが率直に聞く。こういう時にアクアが居ると分からない事を口にしてくれるので助かる気がする。
「俺様か? 俺様はフレッシュゾンビ! ゾンビ界のニューヒーローだ!」
フレッシュゾンビとやらが両手を空へ向けてあげると、背後からワーッとゾンビたちの拍手が起こる。いつの間に生えたのだ?
「……ちなみに、勝負方法は?」
「勝負と言ったら一つだけだろ? タイマンだ!」
フレッシュゾンビがパチンと指を鳴らすと、リングがせりあがってくる。各コーナーには頭蓋骨が飾ってあり、ロープの代わりに腸のようなもので繋いであるので悪趣味だ。
「倒せば勝ちか?」
「そうだ! 10秒間立ち上がれないか、殺せば勝ちだ」
フレッシュゾンビはニヤリとしたところを見ると、余程腕に自信があるみたいだ。
「こっちは、そうだな。マオでいいだろ」
「はっ、そんな嬢ちゃんが俺様の相手をするのか?」
フレッシュゾンビが笑うと、観客と化したゾンビたちも一斉に笑う。
「まあ、いいだろう。きな」
フレッシュゾンビはロープをくぐると、リングにのぼる。我もそれに続いて反対側からリングへ上った。
「俺様の舞台へようこそ!」
「さっさと始めるぞ。ウィンド・アロー」
我は先制攻撃で風の矢をゾンビに放つ。威力は無いが速度はあるほうだ。
「そう慌てるなよ?」
フレッシュゾンビはそう言うと、あっさりと我のウィンド・アローを弾いた。様子見とはいえ、簡単に弾ける魔法でもないのだが。
「それなら、ファイア・ボール」
我はフレッシュゾンビが風に抵抗を持っているのかと思い、ゾンビが苦手とする火の魔法を試してみる。
「おっと、あっちぃ」
フレッシュゾンビは今度は弾かずにサッと地面に這うようにして躱した。
「今度は俺様の番だぜ?」
フレッシュゾンビはそう言うと、腕の関節を外して伸ばしてきた。痛みが無いのだろう。
我はその手を掴むが、ぬるっとして気持ちが悪く、すべって受け止めれなかった。
フレッシュゾンビの腕はそのまま我の左肩を強打したが、ただのパンチのためそこまで威力が無いが、ロープ際に向かってよろける。
すると、リングの周りにいたゾンビが我の足を掴んだ。
「卑怯よ!」
ミレがそう言ってくれるが、ゾンビどもは止めない。
「卑怯? ルールは10秒間立ち上がれないか、死んだら負けだぜ?」
「タイマンって言ったでしょ!」
ライカも非難する。
「言い忘れていたが、ゾンビはすべて俺様の意思で動かすから、ここには俺様しかいないぜ? だから、お前たちが周りのゾンビたちに攻撃したら反則負けだぞ!」
「マオ、5%解放だ」
ノロイはゾンビの話に腹が立ったのだろうか、苛立ちを隠さずに告げる。
「もう死んでいるから死なないとか言うのは無しだぞ? グラビティ・ボム」
フレッシュゾンビは黒い渦の中心に向かって潰されていき、爆発によって木端微塵になった。幸い、再生する様子はない。
周りのゾンビを動かしていたのは本当の様で、ゾンビたちはピタリと動きを止めた。
「ついでにこいつらも焼き払うか。フレイム・サークル」
我はゾンビたちを全て火葬した。
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