第75話 人質救助

我とノロイが中へ入ると、扉が閉じて他の皆と分断された。


「ちっ、分断されたか。それに、こいつらもどうせ偽物じゃないのか?」


ノロイが冷静に分析する。確かに、我達にとって都合がよすぎる気がする。


「人質なので本物ですよ~」


偽ムッキーがナイフを取り出してライカの頬に当て、すっと刃を引くと血がにじんでくる。


「ひっ」


ライカが怯えた目で悲鳴を漏らす。自分の作った物に攻撃されるとか、他人に攻撃されるよりも恐怖だろう。


「確かに本物の人間のようだが、それがライカだと証明できるのか?」


「証明と言われても~。人質は2人いますし、めんどくさいのでとりあえず一人殺しますね」


偽ムッキーはそう言ってナイフを逆手に持ち替えると、ライカの心臓に向かって振り下ろす。


「待て! 要求はなんだ?」


偽ムッキーはピタリと服の上でナイフを止めるとニヤリと笑った。


「死んで下さいますか~?」


偽ムッキーはナイフをこちらに投げると、一応反撃を食らわないようにライカの後ろに隠れた。


「あっ、ナイフの代わりならいくらでもありますからね~」


偽ムッキーはナイフを袖からスルリと出すと、ライカの首に当てる。


「とりあえず~そっちの娘から殺してもらえます?」


「分かった。いいな? マオ」


「ああ、わかっている」


ノロイは我の心臓にナイフを刺す。我はそのまま床に倒れた。


「次は、自分で刺してもらえます?」


ノロイは自分の胸にナイフを突き立てて床に倒れた。


「ぐぅっ、ライカ達を……助けろ……」


「あははははっ、残念~この子達も偽物でーす」


ライカとミレの偽物も怯えた表情を止めて「ケケケケケ」と笑い始めた。たった2人を倒したところでばらすとはうかつすぎるだろう。


「やはりそう言う事か」


我とノロイはスッと立ち上がる。


「はぁ?! なんで!? 確かに刺したのを見たのに!」


「ウィンド・カッター・トリプル」


我は3人とも風の刃で真っ二つにした。ごろりと転がったムッキーの首は、まだ生きているらしく口を動かす。


「な・・ぜ・・?」


「俺もマオも人形だからな。傷は負っても死にはしねぇ」


偽ムッキー達は顔を驚愕に歪めながら消えていった。


「ミドル・ヒール」


我はノロイと自分の傷を治す。


「ノロイも人形だったのか?」


「いや、普通の人間だから死ぬけど」


「なんだと!?」


我は目を見開いてノロイを見る。


「そう言っておいた方が悔しさの中で逝くと思ってな。くそっ、急所を外して刺したたとはいえ、服には穴が開いちまった」


ノロイの性格の悪さが分かると言うものだ。


その後、扉を破壊して仲間と合流した。チックの虫と我達のソナーで洞窟を探索すると、人が一人やっと通れるほどの小さな通路があることが分かった。


「我が入ろう」


ガタイのいいノロイでは狭いだろう。我は匍匐前進で通路を通ると、少し開けた空間があり、扉があった。


扉を開けると、腕を鎖で繋がれたライカとミレが居た。


「本物か?」


「もごもご!」


猿ぐつわをしているのでしゃべれないようだ。我は猿ぐつわを外してやる。


「はぁ、やっとしゃべれるようになったわ。助けてくれてありがとう」


ライカとミレはお礼を言うと、へたりこんだ。


「ゾンビから逃げたと思ったら、見慣れた研究所があるじゃない? そこでムッキーに会ったら偽物で・・そうだ! 偽ムッキーがいるのよ!」


「もう倒したぞ」


「そ、そう。じゃあ、出ましょうか」


我達は洞窟を出て森を探索し、無事に階段を見つけた。階段は木のうろの中だった。

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