第72話 テット
「それなら、2人で交互に階段を降りるのも手かもしれませんね」
「あん? どういうこと?」
ツェナーはチックに不思議な顔を向けている。ツェナーは一人行動だったからか、階段のカラクリにはまだ気が付いていないみたいだ。
「それなら、2人に関係のある場所で仲間が見つかるかもしれないな」
ノロイがツェナーに階段のカラクリを説明すると同時に、チックが今までの事を説明する。
「じゃあ、私が先に下りることはもう無いわね!」
アクアはツェナーへの説明を一緒に聞いてやっと理解したらしいな。アクアは我達全員と関係があるで、わざわざアクアが降りなくても仲間と合流できる可能性はある。むしろ、水だらけの階層に誰も行きたくない。
「じゃあ、あたいが下りればいいのね」
今回はツェナーを先頭に階段を降りることにした。この階層の遺跡はただただ何もなく、食料の入った宝箱だけがあった。まあ、性転換するかもしれないので、それを期待して食べたのはノロイだけだが。案の定普通の食料だったのか、女性になる食料だったかのどっちかだな。
「ジャングル?」
「あー、これはあたいの故郷だね」
階段を下りた先はジャングルの様に鬱蒼と茂った木々に、道の邪魔をする蔦、足元は湿った木の葉でぬかるんでいる場所だった。
「ウィンド・フライ」
我はぬかるみを回避するのと偵察目的に、木の上へ出ると付近を見渡す。すると、大きな川が目に入った。
「川があるぞ」
「あー、そこへ行くのは止めておいた方がいい。食人魚が居るからな」
「きゃー!」
タイミングよく? 少女の悲鳴が聞こえた。
「この声は、テット?」
「誰?」
「ツェナーの妹で、一緒のパーティだよ」
アクアの質問にチックが答える。その間にも足は声のした方へ向かっている。
「助けて!」
声のした場所に着くと、足を3mくらいの魚に食われている少女が居た。ほぼツェナーの色違いで、身長が低いくらいか。
「テット! この魚め、食らえ!」
ツェナーが魚を真っ二つに切ると、魚は消滅した。
「はぁ、はぁ、助かったぁ、お姉ちゃんありがとう」
「けがは無いか?」
「あっ、……怪我がないみたい?」
あれだけばっくりと足を食われていたのに怪我はないらしい。ゾンビが足を掴むのと同じ感じでやはり攻撃性能はないみたいだ。
「うーん、故郷だと尖った歯で足くらいあっさりと食いちぎるのにな」
「怖いこと言わないでよ!」
アクアは想像していたそうな顔をしたが、アクアならばどうせ再生するだろう……。
「ところで、あなたたちは?」
チックがテットへ今までの話をしている間、我は釣りを楽しんでいた。餌が無くても食いついて楽しいからだ。
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