第71話 ツェナー

我はファイアサークルで味方を囲み、ゾンビを近づけないようにした。ゾンビに知能が無いのか、ゆっくり近づいてきては順番に燃えていく。


「よし、誰が行くのが一番いいか考えよう」


ノロイがそう言ってどこからかメモ用紙とペンを取り出す。


「まずチックの場合は、雲ステージで落下はするがダメージは無く、さらに階段も複数ある」


「次にアクアの場合は、ステージ全体が水没していてまずクリアは不可能だ」


「そして俺の場合は、ステージ全体が墓地になり、無限にゾンビが湧いてくるが攻撃はしてこない。ただ、捕まると臭いし気持ち悪い」


「ろくなステージがないわねぇ」


アクアがそう言うが、我にとってはどれも余裕で対処できるので、大したことが無い気がする。


「問題は、どうやって階段を下りていった人達を追いかけるか、ですよね?」


チックが言う通り、人によってステージが変わるのでは追いつけない。実際にチックの仲間にも遭遇していない。


「うーん。別々に探すか、いっそのこと同じ人がひたすら階段を降りるかだな」


クリア条件が不明だから試してみるしかないな。


「とりあえず、チックのステージが一番クリアしやすいだろうな」


「全員分のステージを試さないのですか?」


チックは我の方を見るが、我に関係ありそうなところと言うと、おそらく魔界だな。


「下手をしたら今まで以上に難易度が高くなるステージがあるかもしれないぞ?」


ノロイは我の方を見ながらそう言う。我が苦戦するステージだったらアウトだな。


「でも、攻撃されることは無いですよね?」


「それはいままでは、という前提だからやめておいた方がいいだろう」


ノロイもさすがに命をかけてまで試す気にはならないようだ。怪訝な顔をするチックではあったが、とりあえずチックを先頭に階段を降りることにした。


「よし、探索を頼む」


チックが探索し、我がウィンド・フライで浮き、皆を連れて行く予定だ。しかし、予想外にもステージは変わっており今度は遺跡の様だ。


「一番先頭の人物に関係のあるステージという予想は外れたか?」


「いえ、一応僕に関係のある場所みたいですね……」


チックには覚えがある場所らしい。


「おーい」


すると、一人の女性が近づいてきた。シミターを持ち、胸部分だけを覆う簡素な上着と、足まるだしのスカートを履き、緑のバンダナをしている。


「ツェナー、無事だったのか!」


チックは女性の名前を呼ぶと、ドンと女性はチックの背中を叩く。


「チックこそ無事だったみたいだね」


「ここは、僕とツェナーが初めて会った場所なんです」


なるほど、繋がりのある場所になれば仲間に会える可能性があるのか。

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