第59話 妖狐復活
「殿様はどうした!」
キールは、護衛が魔物だっと分かると、殿様の安否が気になるようだ。
「一応いままで協力してもった礼として、魔法で眠らせただけよ。永久に起きないけれど」
アヤメはクククッと口元を隠して笑う。それに合わせて9本のしっぽもわさわさと動いている。
「てめぇ!」
キールは刀で斬りかかるが、アヤメは尻尾の一つで防ぐとキンッと硬質な音がした。ふわふわにみえて固いのか……。
「私は5体の魔物の魔力を使ってでも完全に封じることが出来なかった妖狐よ? その程度の攻撃が効くわけが無いわ」
「魔方陣の中心がここだった理由が分かったな」
ノロイはなるほどと納得しているが、それどころではない。青オーガを斬った刀での攻撃で無傷とはな。
「俺様もハメやがったのか!」
シヴァも無詠唱でフレイム・スピアを作ると、アヤメに投げる。しかし、それも尻尾の一つであっさりとはじかれる。封印されていた魔物より強いと言うのは本当の様だ。
「アヤメェェ!」
キールは渾身の力を込めて斬りかかるが、アヤメが振った尻尾によってパキンッと刀が折られた。
「そうそう、アヤメというのは殿様が勝手につけた名前よ。私の本当の名前はタマモだから、覚えておいてね」
タマモはそう言うと、ふわりと空中に浮かぶ。
「逃げるのか!」
「逃げる? 面白いことを言うのね、武器もないくせに。封印が解けて自由になったから、少し遊びに行くだけよ。じゃあね」
タマモは尻尾を振ると、それだけで全員吹き飛ばされる。砂煙が晴れたときにはタマモの姿はどこにもなかった。
「くそっ!」
キールは地面を拳で叩いている。
「むしろ、助かったんじゃないの?」
ミレは冷静にそう言う。我は攻撃していないから分からないが、おそらく今の魔力量では勝てなかったと思う。やつが本気で我達を殺すつもりなら、とっくに死んでいただろうな。
「これからどうする? 追いかけるの?」
アクアはそう言ったが、どこへ行ったかも分からない。
「追いかけても勝てるの?」
ライカも心配そうだ。
「俺様は、勝てないと思うぞ。もしかしたら、本来の強さの俺様ともそれなりに戦えるかもな」
シヴァはさっきの戦闘を思い出してそう結論付ける。シヴァがそう言うこと言う事は、神クラスの魔物という事か。……本来の強さなら勝てるという自慢に聞こえるが、本来の姿に戻れるチャンスは今のところないぞ。
「どっちにしろどこへ行ったか分かるまでは、情報収集だな」
「俺は殿様を見てくる!」
キールはそう言って離脱した。我達も今すぐ行動するわけではないのでついていくことにした。隠し通路から殿様の居る場所へ行くと、殿様はきちんと布団が敷かれた上に寝かされていた。
「本当に、眠らされているだけか」
キールは一応殺されていないことが確認できて安心したようだ。しかし、キールが殿様の体をゆすっても起きる様子はない。
「これは、トゥルー・スリープか?」
シヴァが殿様の魔力を探ったようだ。
「普通の睡眠魔法と違うの?」
ライカがシヴァに質問する。
「普通の魔法は自分の魔力を使って現象を起こすが、殿様に使われたのは殿様自身の魔力で行われている。つまり、自分で自分に永遠にスリープを唱え続けている状態だ」
「それって、大丈夫なの?」
ためしに、アクアが殿様の頬を強くはたいた。行動が急すぎてキールも止める間が無かったようだ。そして、殿様はそれでも起きる気配が無い
「これを掛けた者を倒すか、同等の魔力で解除するしかないな」
「それは……どっちにしろ無理だな」
ノロイは冷静に答える。タマモ以上の魔力を込めることは現状では不可能だからだ。
「俺様の封印が解けたならば、解除してやるぞ?」
「本当か?!」
キールが希望を見つけたような顔をするが、それをするとタマモ以上の敵が増える事になるだけだぞ。
「却下だ」
それに気づいたノロイも却下する
「ちっ」
バレたかというようなシヴァの顔を見て、キールもその事に気づいたようで諦めたみたいだ。
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