第29話 マネの修理
気絶しているカイトをとりあえず縛り上げて部屋の片隅に放置すると、次にマネの傷を治す事になった。と言っても回復魔法を唱えるだけだがな。
「ミドル・ヒール」
しかし、マネの怪我は治らない。おかしい、今の我の魔力なら生きてさえいれば瞬時に傷が治るはずだ。
「それじゃだめよ、マネは生物じゃなくて、人形なんだから」
ライカはそう言ってマネのへその上のコアをコンコンと指で叩く。それに同意するようにマネの腕もウネウネするのが気持ち悪い。マネキンのマネだなと思いながら、マネのパーツを皆で集める。本体の近くに寄せると、胴体部分に磁石でくっつくように治っていく。
「ありがとうございます」
マネは、体に不都合が無いかどうか、腕を回したり、足を叩いたり、首を360度回したりしている。正直見ていて怖い。
「それで、こいつはどうする?」
ノロイはカイトについてどうするか聞いてくる。すると、マネがスッと前に出て発言する。
「ゾンビにしますか」
マネは手から剣をカシャンと出すと、カイトに向ける。
「それはやめて」
ライカとしてもそこまでするつもりはないようで、マネの殺意を止める。
「ギルドに突き出すか?」
「ギルドにもらっても、罪を犯したというには微妙なところねぇ」
ミレが言うには、実際の被害はライカに傷をつけかけただけで、アーティファクトへの攻撃自体は自動修理もされていることから、被害の証明は難しいらしい。不法侵入にしても、ダンジョンだと思ったと言われたら、それを否定する材料も無い。四天王の言う事を真に受けているくらいだしな。
「迷惑料として金で片をつけるか? S級なら金を持ってるだろ」
ノロイはそう言うと、さっそくカイトの懐を漁る。金が入っていそうな布袋を見つけて中を見ると、金貨が数枚入ったようで、中身を全て抜くと空の袋を鎧の上に投げ置いた。
「じゃあ、行くか」
「ちょっと! 私への慰謝料は!」
金貨に目がくらんだのか、ライカも金をせびってくる。
「マオが防いだだろ? 無傷ならノーカンだ、ノーカン。飯ぐらいなら奢ってやるよ」
「ぐぬぬ、覚えてなさい!」
我は別に自分で食い物の金を払うわけではないから、ノロイの金は我の金みたいなものだ。
「出発なされるのですか? それでは、私も着いていきます」
「マネはこのまま、ここで資料とか盗まれないように見張ってて!」
「かしこまりました」
同行者が増えずに済んでよかった。人形でも宿屋に泊まったら金を取られるのだろうか? そう言えば、我は人形だけど金を払って泊っているな。動かずに棺桶に入っていればタダかもしれないがそれは嫌だ。
ライカが魔術具を使う事によってタフネス・ヒールを使えるようになったので、徒歩での移動速度が上がった。いっそ飛行すれば良いのかもしれないが、特段急ぐ必要も感じていないので徒歩だ。
「次はどこに向かうのだ?」
「次は、ウラルの街だな。絶品のうどんがあるらしいぞ」
「それは楽しみだ!」
我達の旅は、いつの間にか食べ歩きのたびになりそうだ。
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