第16話 ノロイ、ライカの首を捻る

「どういうことかしら? なぜ私達から逃げる必要があるの?」


ミレは一応ライカの行動に対して説明を求める。ギルド員としては勝手な判断をするわけには行かないようだが、俺達にとっては完全に黒だ。しっかりと追及して欲しい。


「逃げてなんて居ないわ! 用事があるだけよ!」


ライカは用事と言う言い訳だけで逃れようとしているが、それは無理ではないだろうか。俺にとっては逃げられたらたまったものでは無い。


「この先には、森しかないじゃない?」


「も、森に用事があるの」


「後にしてちょうだい」


「どうしても、行かないと」


「ちっ、ラチがあかない。おい、本当のことを言え」


俺はライカの髪を入れた人形をライカに見せ、徐々に人形の首をひねる様子を見せつける。すると、人形を見ていたライカの首も少しずつ後ろを向いていく。


「いたたたたっ、ちょっと! やめてよ!」


「じゃあ、本当のことを言え」


「だから、用事だってば! ぎゃーっ」


首を100度くらい回したら、少しメキッと言う音と共にライカが悲鳴を上げたので一旦戻す。


「はぁ、はぁ、用事…よ」


「強情なやつだな。次は180度いってみるか」


「やめて! 死んじゃうから! 首が取れちゃう!」


ライカが必死になって止める。しかし、俺は無視して首を捻り始めた。


「わかりました! 言うっ、言いますから! 首を回さないで!」


「わかればいいんだよ、さあ、話せ」


ライカは、観念したように話し始めた。


前世の記憶が蘇ったこと。まだ完全に戻ったわけではなく、なんとなく行かなければならない場所があると感じると言う事。攻撃したのも、記憶が戻った時の万能感でやってしまい、今は後悔している事。


「で、それがどこか分からないから、用事って言っていると?」


「はい……、嘘じゃない、嘘じゃないですから! 首を回そうとしないで!」


どうやら、本当の事らしいな。前世の記憶? 俺の知ったことではないな。


「ミレ、こいつには何か罪状が付くのか?」


「まあ、迷惑をこうむったのはマオちゃんだし、それ以外の実害はほぼ無いし、それに、未成年だしね。厳重注意が関の山じゃない?」


精神年齢はともかく、見た目はガキだな。とりあえず、ロープで縛って牢屋の前に連れて行ってマオにこの話をするか。


逃げないように見張りつつ牢屋まで来たが、大人しくしていたな。マオに今までの話をする。


「よし、うまい飯を食わせてくれれば許す!」


「……、それで許してくれるならいいよ」


話しが付いたので、マオが牢屋から解放された。ギルドで部屋を借りてライカの父親にも同様の話をする。


ライカの父親は、ライカの前世の記憶が戻ったという話を聞いて、目を白黒させている。


「ラ、ライカ? ライカだよな?」


「ライカだけど、今までのライカじゃないよ、お父さん」


ライカの父親は混乱している。頭からプスプスと煙が出ているように見えるな。


「とりあえず、クエストの報奨金をくれ!」


マオが手を出すと、ライカの父親は言われるがままにお金を渡す。思考停止しているようだ。


「それで、何で嘘をついてまで一人で行こうとしたんだ?」


「だって、前世の記憶が戻ったとか、気味悪がられるに決まっているし」


「お父さんは、ライカの事を気味悪がったりしないぞ!」


「でも、精神年齢は70歳くらいだよ?」


「マジで!?」


ライカの父親の許容範囲を超えた様だ。今にも気絶しそうだと感じたライカが訂正する。


「冗談、ライカの年齢と合わせても30歳くらいかな」


なんでわざわざ嘘をつくんだこいつは。父親の顔が一瞬崩壊しただろ


「それじゃあ、我達はこれで」


マオはシュタッと右手を上げると、立ち去った。


「待って! 私も連れて行って!」


「断る!」


俺はライカのお願いを一言で断ると、マオと一緒に立ち去った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る