第15話 ノロイ、調査する
「ちっ、あのバカが先走りやがって」
俺は苦々しく思いながらも、森へ向かった。牢屋なんて無理やり壊して逃げるのと、調査をしてマオの無罪を証明するのとどちらが今後めんどくさくならないかを考えたところ、マオの事だから嘘はついていないはずだと、無罪を証明することにした。そもそも、本当にマオが無関係な人を襲うようなら、そいつはもうこの世には居ないだろう。
それにしても、俺達がクエストを受ける理由なんてほとんどないので無駄な時間を使っているな。今は金にもそんなに困っていないし、ギルドランクもCになれば身元が保証されたも同然だ。そう考えているうちに、マオの話していた場所に着いた。
「ここが戦闘跡か? マジック・サルベージ」
俺はマオにも教えていないが、多少の特殊な魔術を使える。今回は、その一つの魔力の残渣を調べに来たのだ。魔力のカスを探っていくと、木に付いている魔力はマオの物ではない。それに、威力が弱いな。
「ふむ、ライトニング系統の痕跡が多いな?」
木が所々はぜたようになっている。これはおかしい。マオは森の中で風魔法ばかり使っているはずだ。わざわざ燃え移る可能性のある雷を使う必要がない。マオの話の信ぴょう性が上がったな。前世が魔法使いの少女か……面白そうだな。
「これが、ライカを連れ去ったというゴブリンか?」
ところどころ焦げているのは、ライトニング系統の特徴だろう。俺の後に着いてきていたミレも到着した。遅いな、タフネス・ヒールくらい覚えればいいのに。
「はぁ、はぁ、置いて行かないでよ! えっ、これが……」
ミレは息を整えながら怒鳴ったが、その後の言葉は続かないようだ。まあ、どうみても戦闘跡だからな。無力な少女を一方的に襲ったにしては周りの被害がでかいし、それにマオなら少女程度は腕力強化で十分だろう。
「見ての通り、少なくともマオが少女を襲ったというのは嘘だとわかるな?」
「そうね、この規模の被害が出るなら、一般人なら死んでいるわね」
ミレは証拠になるか分からないが、焦げているゴブリンの体の一部を回収した。さすがに全身を持っていくのは大変だろうしな。
しばらくすると、ギルド員で編成された調査隊が到着したので、あとは任せることにした。調査隊が来るならゴブリン全部持ち帰れるんじゃね? すると、ライカに密かに付けていた俺の人形に動きがあった。
「おい、まずいことになってるぞ。ライカが逃げる」
段々と街の外へ向かっているのが分かる。恐らく、俺たちが居ない隙を狙って街から脱出しようとしているのだろう。ちっ、見張りは何をしていたんだろうか? いや、あんな子供が逃げるとは思っていないか。
「なんですって? 急いで戻らないと!」
俺はミレにもタフネス・ヒールを使いながら急いで街に戻った。ミレは「こんな便利な魔法なら、行くときも使いなさいよ!」と言っていたが、俺の魔力が減るだけだから嫌だ。今は緊急事態だから仕方なく使っているのだ。
脳内にあるライカにつけた人形の光点を追うと、ギリギリ門から出る前に追いつけた。
「どこへ行くんだ?」
「え……? 何でここに? えっと、ちょっと用事が」
「だから、何の用事だ?」
ライカはキョロキョロと周りを見渡した後、路地裏に向かって逃げ出した。
「待ちなさい!」
ミレも追いかける。路地裏に入ると、ライカがこちらに手のひらを向ける。
「ライトニング・スプレー」
細かい雷が俺たちに降り注ぐ。ダメージを与えるというより、足止め用の魔法だな。静電気の様な感じのダメージを受ける。嫌な人には耐えられないだろうが、俺にはこの程度なんともない。
俺はピリピリする雷の中を突っ切ってあっさりとライカに追いついた。
「ライトニング・ショット」
さっきの魔法が効かないと分かると、今度は攻撃用の魔法だ。まともに食らえば一般人なら昏倒するような魔法だぞ。
俺はそれを回避すると、ライカに接近し、首を掴んで地面に押さえつけた。
「離して! きゃーっ、暴漢よ! 助けて!」
ライカが叫ぶため、人が来る前にサイレンスの魔法で遮音した。
「大人しくしろ!」
俺はロープでライカを縛ると、念のため髪の毛を1本抜いて人形に入れておいた。
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