第13話 魔王、勝手にクエストを受ける

「そこを何とか、お願いします!」


我達が1階の受付へ行くと、20代後半くらいの男が、受付嬢を拝んでいた。見た目からすると金持ちの家なのだろう、我達とは比べ物にならぬほど良い服を着ている。


「何があったの?」


「あ、ミレさん。この方が、どうしても今すぐクエストを出してくれとおっしゃられて……」


「クエストは、依頼内容、依頼料等をギルドが適正かどうか判断するから、すぐに出すことはできないわ、常識よね?」


ミレが男を見ると、男は、受付嬢より上の立場の人だと思ったのか、対象をミレに向けた。


「頼む! 俺の娘がゴブリンどもに連れ去られたんだ! 救出の依頼を出してくれ!」


「だから、さっきも言った通り……」


「よし、我が受けよう」


「そのタグは、Cランクの冒険者! 頼む! 娘を、ライカを助けてくれ!」


男は、娘の特徴を我に伝えた。年齢は8歳で赤い髪をしていると。服はワンピースか。よし、覚えたぞ。


「じゃあ、我達が帰ってくる前にはクエストを作成しておくがよい」


我がかっこよくギルドを後にしようとしたが、ノロイが付いてこない。


「ん? 暗くなる前に行かぬのか?」


「あ? んな面倒な事、俺がするわけ無いだろ、ひとりで行け」


ノロイはシッシッと我を追い払うようなしぐさをする。勝手にクエストを受けた我も悪いが、そのような扱いをすることは無いだろう! だんだんと腹が立ってきたぞ。


「くっ、分かった! 我が一人で解決するわ!」


我はバンと扉を叩きつけながら外へ出た。男は「一人で行かせていいのか?」と言っていたが、ノロイは「いいんだよ」と答えている。ふんっ、勝手にするわ!


森へ着くと、我はさっそく捜索を開始する。と言っても、やみくもに探すだけでは見つかるわけもないので、探索魔法を唱える。


「ソナー」


我を中心に、段々と音波が広がっていく。ふむ、2kmほど先で複数の移動する物体があるな。恐らくこれがゴブリンたちだろう。


我は、「ウィンド・フライ」と唱えると、空を飛ぶ。そして、高速で反応のあったところへ向かった。


「このあたりか」


我がもう一度正確な位置を調べようと、ソナーを唱えようとしたとき、そう遠くない場所で雷が落ちたような、ドーンと言う音がした。


「なんだ?」


我がそこへ行くと、黒焦げになったゴブリンが数体転がっていた。さっきの音はこれの音か。


「お主がやったのか?」


我は、ライカの特徴と一致する8歳くらいの少女に声をかけた。少女は、人が居ることに驚いたような顔をするが、いきなり攻撃してくる様子はないな。


「あなたは誰?」


「我か? 我は、マオだ。ライカを救出するクエストを受けて探しに来た冒険者だ」


「ふーん、救出はもう要らないから帰っていいわよ」


「そうもいかん。救出しないにしても、連れ帰らないとクエスト失敗になるではないか」


「でも、なんだか力が溢れてきて……ああっ、我慢できないわ。うふふふふ」


少女の髪が、バチバチと電気を帯びて逆立つ。ライカは我に手を向けると、呪文を唱えた。


「ライトニング・スネーク」


ライカの手から、蛇状の電撃が迸った。

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