第11話 魔王、過去を語る

「で、本当はあなたたちは何者なの?」


「ちっ、覚えていやがったか」


せっかく寝ている間にわざわざ街まで行って宿屋を取り、「いい朝だな、今日も何事もなく行こうか」と声を掛け、誤魔化せたと思ったのだが。まあ、そんなに甘くないことはうすうす感じてはいたが。


「しょうがない。マオ、昔話でもしてやれ」


「はぁ、我の昔話なぞ聞いても詰まらんと思うが」


「マオちゃんの過去って言われても、今も若いわよね?」


「いや、我は見た目通りの年ではない。あれは、いつだっただろうか」



「この世界は、弱すぎて詰まらん」


我は当時、魔界を統べる覇者だった。生まれてこの方負けたことは無く、戦えば戦うほどに魔力は無限と思えるほどに増えていった。


ドラゴンを蹴り飛ばし、デーモンにアイアンクローをして泣かせ、天使を殴り飛ばし翼を毟る。目につく者すべてに喧嘩を売って倒してきたが、我の気が晴れる事は無かった。


唯一、我の角を折るほどの強者が居たが、最終的に我が勝った。そして、角もすぐに再生した。


我は思った。我と対等に戦えるほどに皆が成長するのを待てばいいと。


「お前たちの未来を信じ、我は一度眠りにつこう。我よりも強くなったと思った時、クリスタルの封印を解くがよい」


我はそう宣言すると、皆の前で自らをクリスタルに封印した。


我はクリスタルの中で、封印を解かれるのを待ったが、誰も来ない。あまりにも暇だったので、クリスタルの中から外の様子を見れる魔法を自力で開発していた。


数百年が経った頃だろうか、魔界はむしろ平和になっていた。


ドラゴンと悪魔と天使が手を取り、平和を訴え、協力して我を地上へ転送しおった。我は後悔していた。なぜ自分で解ける封印を施さなかったのかと。


そして、地上では魔王と呼ばれる魔族が、魔界から低級魔族を呼び出しながら世界征服を企んでいたようだ。


さらに数百年後、どういうわけか、我のクリスタルには最古の魔王が封印されていると言われるようになっていた。


我、地上では何もしておらぬのに。それどころか、魔王を名乗ったことなど一度も無い。


さらに百年がたった頃、我のクリスタルの前に一人の男が現れたのだ。


「気がついたら、封印から魂だけを抜かれてノロイの呪術具に呪われていたのだ」


「へーっ、作り話?」


「作り話ではないわ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る