第4話 ハゲの名はハゲン

「きゃぁ! 何ですかこれ!」


我の部屋の前が何やら騒がしい。転がしておいた襲撃者が発見されたようだな。


部屋から出ると、宿屋のおばちゃんと同じエプロンをつけているので、ここの宿を管理している夫婦の娘のようだ。


「どうかしたのか?」


我は目をこすりながら、無関係を装ってその娘に尋ねる。


「ヨッパさんとハゲンさんが縛られているんですけど、何があったか分かりますか?」


「そのハゲ、ハゲンと言うのか……」


我に無駄な知識が増えてしまった。ついでに、我達が関与していると疑われているな、ほぼ確信をもって。


「そうです、下の酒場の常連さんですよ!」


「我の寝こみを襲ってきたので返り討ちにして放り出したのだ」


「ええ! どうしてそんなことに!?」


娘はオロオロしているが、理由は我のほうが聞きたいくらいだ。第一、宿泊者の安全はそちらが守るべきだと思うぞ。


「うるさいな、もう少し静かにしてくれ」


ノロイも起きてきたようだ。寝起きが悪いのか、半眼だ。


「宿の娘が、騒いでいるのだ。襲撃者は酒場の常連だったみたいだぞ」


「そんなの俺が知るか! 単なる逆恨みだろ」


そういうと、ノロイは部屋に戻っていった。


我は、娘に昨日酒場であったことを伝え、片付けてくれと言って部屋に戻った。


娘は、「ちょっと!」というが、もう面倒だ。我が部屋に戻ると、ノロイが窓から出ようとしている……。


「金は払ってあるし、面倒ごとは回避するに限る。行くぞマオ」


その意見には我も賛成だ。どうせ、二度とこの街に来ることも無いだろうし。我はノロイに続いて窓から脱出した。


窓の外は裏道で、そこをしばらく進んだ後、表に出て買い物をすることにした。


我の格好が目立つので、せめてマントをしろと言われた。


目立たないように、ノロイの予備の黒のマントを借りてつける。


「似合うか?」


我はバサリとマントを手で払うと、腕を組んだ。


「まあまあじゃないか」


こっちを見ずにノロイが答えた。


「せめてこちらを向け!」


べ、別にほめてほしいわけじゃないからな!


そう思っていると、ノロイが「さっさと街を出るぞ」と言い、次の街へ向かうことになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る