ショゴス

テケリリでない方のショゴスを支配した者は地球上で最も強大な存在となる。

地上の王にもなれる。

そうならないのはショゴスを地球上に留めておく術がないからだ。

ショゴスは勝手に帰ってしまう。


魔術師の力量で元の世界へショゴスを退散させることもできるし、支配できれば元の世界に帰るように命令もできる。

しかしショゴスを支配できても、地球での滞在期間を術者は設定できない。

帰すことはできても、帰らないようにはできない。

命令の最中でもショゴスは帰還してしまったケースが報告されている。

ショゴスは無敵だが、肝心な時に居なくなってしまえば、世界征服の戦力にはならない。


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年男を殺し、アリスを犯したショゴスは今、僕の中にいる。

正確には僕の夢の中で、具体的には毎回夢の中に門が現れる。その門は閉じられているが、押せば開く。

押さなければ、そのまま朝を迎えるが、押せば門は開き、中に入っていく。

門の中は、僕が通っていた小学校の体育館によく似ていた。


その体育館の中に、あの怪物、ショゴスがいるのだ。


事件直後に僕は聴取に対して怪物の姿を以下のように答えている。

『怪物の体は

溶けていました

湧き出していて

泡立っていて

膨れ上がっていて

萎んで

破裂していました


皮膚は黒くて染みのように茶色、緑色、赤、黄色、など混じっていて

でも、体は形を次々に変えていたから、染みの場所も変わってしまったり消えたりしていました


体から幾つも触手が生えて

それはバラバラに飛び散る自分の肉を拾っていました

触手は拾った肉を

体に開いている穴に繰り返し投げ込み

穴は肉が投げ込まれると直ぐ閉じてしまうけど、また別の場所に穴が開きます

穴が開く時は笛のような音がして

体は膨らむと象くらい大きくなりました』


ショゴスは何をしてくる訳でもなく、体育館で動かずに、ただあの時と同じで、肉片をバラバラ撒き散らしては触手で忙しなく拾い集め、体の穴に投げ込む。

自らの肉を食うと穴は閉じて、他の場所にまた穴が開く時に笛の音がする。

それをただ繰り返している。


僕のショゴスは夢の中に居座って、元の世界に帰ろうとしないのだ。

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