推理

ビリーが山村聡太郎の所在を欲していることを知り、私の頭の中は答えを探し始めた。


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ビリーは優遇されたリーダーではあるが参議ではない、そのため協会全体の情報を知る立場にはない。

とはいえ裏取引によって参議からある程度の情報は得ていただろう、しかし適合者については総裁の情報統制下にあり、手も足も出なかったのではないか。


ビリーの部下が結社を捜査していく中で、適合者の存在を朧げに知っていく。

そして何か適合者について決定的な事実、つまり適合者の奪取は協会に叛く価値があることを知ったのではないか。

しかし下手に動けば協会に目をつけられる。

過度な情報収集つまり他チームへの過干渉が協会に露見すれば、間違いなく制裁の対象となる。


だからビリースタインは、自らが有する結社の情報を必要として『適合者の監視警護』の任にあるチームが接触してくるのを待つしかなかった。


自分も総裁の養子であるビリーに、同じ養子であり日本で活動するアリッサ・オードリー・上杉の配下が情報取引のため接触してきた。

私アリッサが重要な人物だという認識はビリーにもあったはずだが、それと適合者の監視警護任務を単純に結びつけるような男ではない。

それに北条は会談時に適合者のことを漏らすような下手はしない。


ビリーが情報を引き出すため北条に危害を加え死に至らしめる決断をしたのは、私たちの任務の正体に確証があったからではない。

自白に頼らず直接情報を引き出す能力がビリーにはあって、北条の生死を問わずに正確な情報を得ることができるから殺したのだ。


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ビリーと結社の関係についてだが、両者が結託しているなら、ビリーチームが報告した『結社が適合者のことを知らない』という情報は協会へのミスリードの可能性もある。


ビリーの発言から、彼は山村聡太郎の失踪について知らないようだ。

これは北条から得た情報は、北条が知っていることだけ。

つまり山村聡太郎の失踪は北条渡米後の事件であり、ビリーが情報を奪った北条の脳髄はそのことを知らないからだろう。

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