第6話:堀田正盛1

 堀田正盛は徳川家光好みの美少年だった。

 酒井重澄相手にタチに開眼した家光に容赦はなかった。

 豊臣恩顧の家に生まれ、それを負い目にしている堀田正盛には、逆らう事などできなかった。


 いや、継祖母である春日局の縁で小姓に取立てられた堀田正盛には、身体を張ってでも家光を女好きにする役目があった。

 女傑春日局は、坂部五右衛門事件の裏に気がついていた。

 愛する家光がネコなどという事は、絶対に受け入れられなかった。

 だからまずタチに目覚めさせることが、堀田正盛の重大な役目であった。

 それを酒井重澄に先を越されたのだ。

 奮い立って家光の気を引こうとして、まんまとその美貌で成功させた。


「上様、公方様、家光様、気持ちいいですか?」


 堀田正盛は家光を上向きに寝かせて、誠心誠意、心を込めて奉仕していた。

 最初は家光の逸物を舌で舐め、玉袋を手でやわやわと揉んだ。

 全ては家族や家臣に教わった技だった。

 堀田家は一族あげて覚悟を決めていた。

 春日局もその子である稲葉正勝も、衆道の技に優れた男を集め、堀田正盛にその技を伝授した。


 だが、家光が嫉妬してはいけないと、師範との肉体的接触は厳しく禁止された。

 家光の気性をよく知っている春日局は、嫉妬した時の家光の激情を恐れていた。

 現に坂部五右衛門が手討ちにされているのだ。

 自分が乳母で信頼されていても、それで油断するわけにはいかなかった。

 衆道師範達の痴態をただ眺めるだけの堀田正盛は、その心のうちに情欲の炎を燃え上がらせていたのだ。


「うっぐっぐっぐっ」


 堀田正盛は家光の逸物を一気に飲み込んだ。

 心の欲情が高まり、そうせずにはおられなかった。

 喉の奥深くにまで飲み込み、嘔吐感に耐えながら激しく頭を上下させた。

 耐え難い快感が家光を襲っているようで、呻くような意味不明の声をあげていた。

 その声を耳にした堀田正盛の欲情はさらに高まり、もう我慢ができなかった。


「上様、上にならせていただきますね」


 家光をネコにする事なく主導権を得る。

 春日局と稲葉正勝が衆道師範達と相談して決めた技、それが騎乗位だった。

 流鏑馬は不敬となりかねないので禁手とされたが、時雨茶臼や機織茶臼といった技を駆使して、家光を自家薬籠中の物にする計画だった。

 堀田正盛自身が、衆道師範達に見せつけられ続けて、我慢がきかなくなっていた。


「ああ、あああ、ああああ、気持ちいいぞ、正盛。

 お前はなんと愛い奴なのだ。

 もっとだ、もっと激しくやってくれ」


 家光はまた新たな境地に到達した。

 タチのフリをしてネコの境地を愉しめる。

 堀田正盛は完全に家光の心を掴んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

徳川家光と愛する男達 克全 @dokatu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ