恋をした



生まれて初めて恋というものをしています。



その相手というのがまぁ世で言うニートで。

しかも先輩の親戚っていう。条件としては最悪なんだけど。でも凄い好き。





「おじゃましまーす」


「ユンギヒョン、まい連れてきましたー」



''お前、また来たのか''と小さい目を細めるとテレビにまた視線を移した。



どうやら初対面の時に質問責めし過ぎたみたいで、私の印象はあまりよくないみたいだ。

サナオンニのことはかわいいって言ってたのに。



「ヒョン、お茶入れてきますね」


「あぁ悪いな」



ジミンオッパがキッチンへ行くと私はユンギオッパの隣に座った。



「オッパ、今日もかわいいですね」


「そうか」


「運動してますか?なんかいつもより一段と白いですよ」


「そうだな」



適当な返しでもいい、話せてるだけでも幸せだし。




ユンギオッパを初めて見たのはサナオンニがインスタに載せた写真だった。



白くて緑の頭で雰囲気がふにゃっとしてて、端から見ればちょっと変な人(言っちゃいけない)なのに何故か凄く惹かれて関わりもなかったジミンオッパに近づいてやっと家に遊びに行けるまでになった。


こんな事言ったらストーカーみたいだと思われるから絶対言えないけど。




「お前ほんとよく来るよな。」


「暇なんで」


「彼氏でも作ってアオハルしろよ」


「モテなくて」


「どの顔面が言ってんだか」



一応嘘は言ってない。

実際男の子に話しかけられても会話が続かなくて結局そこから何となく距離が出来て話しかけられることがなくなるのは昔からよくある事だ。



それより今、さり気なく褒められた?



「まいー、これお土産やるよ」


「え、何処か行ってきたんですか?」


「週末にちょっとユンギヒョンと遠出して来たからさ」


「え…」



このヒョンはほんとに狡い。

親戚だからって一緒に暮らしてましてや二人で旅行なんて。


浴衣姿とかお風呂上がりの顔の火照りとか、見放題じゃん。

いくらユンギオッパと同性だからって狡すぎる。



「オッパ、ユンギオッパだけじゃなくて彼女との時間ももっと時間大事にした方がいいですよ」


「なんだよ急に」



半ば投げやりに言葉を投げると気付くこともなくジミンオッパは笑いながらユンギヒョンの隣に座るとそのまま持ってきたお茶を飲んだ。


特に何をする事がある訳じゃなかったから何となく同じように自分もお茶を口にした。




「そーいえばサナいつ連れてくるんだよ」



サナ?私のことは''お前''としか呼ばないのに?


話せるだけで幸せなんて言ってたさっきまでの自分を殴ってやりたい。

それに私にはまた来たのかって言うくせに。




「あいつ部活が忙しいみたいで」


「あぁ、そーいえばバスケやってたな」


「試合近いんで来てください」


「そうだな」


「!、オッパ、私も試合あるんで来てくださいっ」


「何の試合?」




くっ、、、会話に入ろうとしててそんな事考えてなかった。



「えっ、と、」


「ヒョン、これ試合日と詳細書いたやつです」


「さんきゅ」



スルーされたけど、まぁ話は逸れたからよしとするか。

にしてもオッパのこんな楽しそうな顔、私じゃ絶対させてあげられないよね。





はぁ、自分で考えといて結構傷つく。






ジミンオッパの家に遊びに行ってから一週間、何となくあの日以来ユンギオッパの顔を見に行ってない。



元々ユンギオッパがサナオンニと仲がいいのなんて

知ってたし、私が好きになった時は既に二人の距離が近かかったのだって分かってたし。

だから今更二人の間に入る隙なんてないことは知ってた。


知ってたけど、あの時のあの顔を見てユンギオッパの気持ちを確信したら予想以上にダメージ受けて。



元々相手にされてた訳じゃないのにな。




なんだか泣きそうになって自分のスニーカーを見ながら歩いていると、「おい」と聞こえた。




「え、ユンギオッパ?」



久々に見たユンギオッパの髪は黒に染っていて。

眩しすぎる。。




「アイス買うけど、お前も食う?」








「あっつ」



バニラアイスをかじりながら気だるげに歩くその姿にドキドキする。



「髪」


「ん?」



ユンギオッパがこっちを向くのが分かって慌てて前を向いた。

今の顔見られたら絶対好きなのバレちゃうもん。



「染めたんですね」


「あぁ、明日試合だろ。明るい色だと浮くかと思って」




あぁ、じゃあそれはサナオンニのためなんだね。



舞い上がってた気持ちが現実へと戻されていく。



「それよりなんで最近来ねーの」


「色々と用事とかあって…」


「彼氏か」



彼氏なんている訳ないじゃん。

私が好きなのはオッパなのに。





「まぁ恋愛するのは自由だけど、勉強疎かにするなよ。俺みたいになるからな」



一人で喋って一人で笑って、馬鹿みたい。

それなのにその笑顔に心臓はバクバク動き続ける。



もういいや、告白して振られたら次に進める。

本当に彼氏作って幸せになってやろう。




「私が好きなのは、…」


「ん?」


「私が好きなのはっ」




立ち止まり顔を上げると、少し先を歩いていたユンギオッパも立ち止まる。



「ユンギオッパです」


「は?」


「私はユンギオッパが大好きですっ、白くてふにゃふにゃしててもニートでも、ずっと好きでしたっ」




誰もいない通路に私の荒い息だけが聞こえる。




「…お前アイス溶けるぞ、早く食え」

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