友人N Tの話


「へ?怖い話やって?んー…自分霊に好かれやすいらしくてなんかいっぱいあるよー?え?憑いてるのは霊じゃなくて疫病神?うわひっど!?確かにそうかもしれんと思った出来事はたくさんあったけど…もう、そんな事言うなら教えへんからな!…そうやってすぐ手の平返すのすごいと思うわ…。まぁ、いいや。えっとじゃあ今電車やし、電車の話でもするか!」



(にこにこ笑いながら言う友達を茶化す作者)


(ひとしきりネタで笑ったあと話し始めるNT)



「この前のことやってんけどな?自分、電車に乗ってたんよ。仕事の帰りで。ん?ブラック企業はどうなったか?いや今そんな話いいやろ、後でじっくり聞きたいなら聞かせたるから。しー!静かに、ここ電車やろ?はいはい、わかったわかった、話すから!なんかな、多分なんやと思うけど、ぼーっとしてたの。疲れて。そんなやからまぁほら、幻覚と思うわけじゃん?違かったの。少なくとも私の幻覚じゃなかった。電車で座ってうとうとしてたの。それで、なんかふっと思ったことがあって車内を見回したんよ。



思わず二度見したよね。だってあのヘルメットだよ?なんの変哲もないヘルメット。そうそう、工事とかで使うやつ。え?ヘルメット被った人を見間違えたんじゃないか?私も最初はそう思ってチラチラと探してみたの。



誰もいなかったの。それどころか、その車内にいる皆、ヘルメットをチラチラ見てて不思議そうにしてた。え?荷物置くとこ?そんなとこ届かないよ。だってほんとに通路の真ん中だもん。ほら、ドア開くとこあるでしょ?あのまん前。だから荷物置きも出来ないし、もちろん吊るしもできない。だから皆狐につままれたみたいな顔してたよ。もちろん自分もだけどね。え?それからどうしたか?降りる駅がきたから降りたよ。うん、ヘルメットの下を一応通ってみたけど、なにも起きなかった。ほんとになんだったんだろうって思うばっかだよ」


        20××年 ♢月○日 電車内にて

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る