第7話 仕事と対価

ソロモンは、クレアとの機密保持契約も済んだため、本格的に動き出す。


まずは、嵐で遭難そうなんした人々の救出を依頼するためレヴィに話しかけた。


既に嵐にのまれてしまい亡くなっている方もいるかもしれないが、ほとんどが依然漂流中のはずだ。


「さて、レヴィ・・・お仕事だ」


「なんじゃ、やぶからぼうに」


「クレアが乗っていた船の者たちの救出をする。既に場所はわかっているので教えるよ」


レヴィは、きょとんとした顔をして答える。


「依頼を受けたソロモンがやればよいのじゃ」


当然、レヴィが救出する義務ぎむはない。


それを言ったら、ソロモンへの依頼も船員達を助けることは含まれていないのだが。


「俺は、俺でやることがあるからね。クレアのためだ、友達の助けになりたいだろ」


「ぐぬぬ・・・それはずるいのじゃ」


クレアも説得するべく、レヴィに声を掛ける。


「レヴィ、ご迷惑かもしれませんがお願いします」


仕方しかたない・・・やるのじゃ」


レヴィから了承をもらったソロモンは、事前に調べていた漂流場所を魔法で直接レヴィへと伝える。


「なるべく早く行ってあげてね。救出したら、近場の陸地にでも降ろしてやって」


「ソロモン、これは貸しなのじゃ」


「いや、お代は菓子アップルパイで支払い済みだよ。終わったらいったん戻ってきてね」


「ぐぬぬ・・・わかった・・・いってくるのじゃ」


レヴィは来た時同様、猛烈もうれつな勢いで走り去って行った。


助けられる人々は、少々怖がるかもしれないが、漂流してそのまま死んでしまうよりはましだろう。


人命救助はレヴィに任せることにした。


クレアから質問される。


「先生、私はどうすれば・・・」


クレアは現時点で出来ることは特にない。


手持無沙汰てもちぶさたで自分に何かできることはないのだろうかと質問してきたのだろう。


「じゃあ、とりあえずこれを全部読んでおいてね」


クレアの目の前には、一冊の薄い本が浮いていた。


初めて見る本を、手に取ってタイトルを読み上げる。


「『簡単!だれにでもわかる魔法 超初級編』ですか。著者は、アイン・ツヴァイク・・・どこかで聞いた名ですね・・・」


表紙を開くと、”魔力を使ってページを開いてみよう”と書かれていた。


まず、魔力を使わずにページをめくろうとしても開かない。


この世界の人族ヒューマンの大半は、魔力量の大小の差はあれど魔力を持っている。


当然、クレアも魔力を持っており、魔力込めてページをめくってみると、クレアの魔力はごっそりともっていかれた。


魔力を使いすぎてしまうと気絶すると言われているが、クレアはなんとかそれを回避かいひをした。


次のページには文字がぎっちりと書かれていたが、ソロモンの方を見ると話を聞かせてくれた。


「それは、ページを進めると開くために必要な魔力が上がっていくからね。読み終わることが出来れば最低でも人族ヒューマンで言う宮廷魔導士くらいの魔力量になってると思うよ。魔法を自在に使いたければ魔力の量と質を上げるのは必須事項だからね」


クレアは、これが超初級なのだろうかとはなはだ疑問に思いつつも・・・必死に覚えようと覚悟かくごを決めたのであった。

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