第6話 友の決意

レヴィは、ソロモンとクレアの会話を話半分聞き流しつつ、考える。


人族ヒューマンの子供クレアは、年の割には賢き者のようであったが、黄金の林檎ヴァイスハイトを食べた後、見た目は変わらぬが別人のようになってしまった。


ソロモンとの契約も理解した上でのものだろう。


悪い意味ではないが、ヴァイスハイトの影響か・・・。


ヴァイスハイトを食べたものは、世界の命運をにぎるともいわれている。


そして、あのソロモンと契約してしまった。


その意味は深く重い、今後の世界はどうなってしまうのか・・・この娘を見守らねばならぬ、そう覚悟かくごした。


レヴィは、クレアに明るく声をける。


「ソロモンの眷属けんぞくとなったからには、クレアはレヴィの友達じゃ」


クレアは、一瞬戸惑とまどう。


あの恐怖の象徴しょうちょうであるリヴァイアサンから友達に誘われている・・・。


疑問に思うが結論を出す前に、レヴィは話続ける。


「友達には正式なレヴィの名前を教えないといかんのじゃ」


クレアは恐れず立ち上がり、レヴィに向かい慎重しんちょうに伝える。


「偉大なるリヴァイアサンから名前をお教えいただけるとは光栄です」


たとえ恐怖であれ竜種の偉大さは変わりなく、まともにやりあってもすぐに消されるのが落ちである。


「レヴィの名前は、レヴィアタン。ソロモンが名付けてくれたのじゃ」


先生がリヴァイアサンの名付け親・・・クレアの疑問は増えた。


「レヴィアタン様とお呼びしてもよろしいでしょうか」


「よろしくないのじゃ。レヴィ・・・レヴィと呼ぶのじゃ。意義は認めんのじゃ」


そうして、恐怖の象徴リヴァイアサンから、強制的に友人にさせられるクレアであった。


「では、レヴィとお呼びいたします」


「まだ堅いのぉ。友に接するようにするのじゃ」


レヴィの友人は、ソロモンしかいないのであるが・・・。


「私は、友と呼べるものは初めてですので、どう接すればよいのか・・・」


王族の友と呼べる仲になるのはなかなかと難しい。


城では、乳母やメイド、家庭教師が付いており、周りには大人しかおらず、同じ年頃の子供は、兄しかいなかったからである。


「とりあえず、握手あくしゅをするのじゃ」


握手あくしゅをしながら、クレアは疑問を口にする。


「レヴィと先生はどうして友人になれたのですか?」


「うむ。かなり昔の話じゃ」


どうやらレヴィが話をしてくれるらしい。


「ここ一帯は魔力の嵐が吹き荒れ、海の中まで影響があっての、レヴィでも近寄れんかったのじゃ。今でも魔力が多く残り、か弱きものが住めないのはその影響じゃな」


竜でも近寄れない魔力の嵐・・・クレアはおとぎ話かと思っていたが、実際に過去にあった話と初めて聞いた。


「しばらくして、嵐も弱まったので中心地であったこの島へ来たのじゃ。そうしたら、スケルトンがのんきに釣りをしていたのじゃ。そこで、レヴィが何をしておるのじゃと声を掛けたら、『見たらわかるでしょ。釣りだよ釣り』などとぬかしおる・・・。頭にきたレヴィは、ソロモンとちょっとした喧嘩けんかをしたのじゃ」


クレアは、先生とリヴァイアサンは恐らく本気で戦ったのだろうと推測すいそくした。


「見た目がスケルトンだからと言って決して油断ゆだんしたわけではないのじゃが、倒れてたのはレビィだったのじゃ。それで、ソロモンが『喧嘩けんかしたから仲直りだ。友達になろう』といってくれての、その時レビィの名前も付けてもらったのじゃ」


リヴァイアサンを倒せた先生は、やはりただのスケルトンではない。


クレアは素直に感想を述べる。


「レヴィとの喧嘩けんかは無理ですね・・・」


「レヴィが喧嘩けんかできる相手は少ないので、それは仕方ないのじゃ。なので、レヴィの友達はソロモンしかおらかったのじゃ」


ソロモンは、話の途中でいろいろと突っ込みたくなったが、やめておいた。


なぜレヴィがクレアを友人にすると言い出したのかわからないが、レヴィにとってもクレアにとっても良いと判断して、放っておくことにしたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る