Dear lovely mass society

飴野セロエ

Dear lovely mass society

これは一人の人間から世界へのラブレターです。


だから私はこれを海に流すことにします。

特別人気があるわけでもない手近な海から。

これを読んでいるあなた、hello, bonjour, 你好。

あなたと私が「世界」(或いはworld, die Welt, ああきりがない!)という言葉を発音するとき、同じものを指すのかどうかわかりません。

多言語を表記したせいでややこしくなってしまった。私は言語的な問題を指摘しているのではないですよ。あくまで世界、という概念の話です。


もっというなら、政治体制。あなたと私が見てきた環境の差異。

社会構成上必要不可欠だと信じている価値観の違い。


私は資本主義社会の一員であると自覚しています。

愛しき大衆社会に生まれ、育ち、その存続を望み、社会の歯車…というとなんだか否定的ですが、まあ、そんな感じで社会を廻す取るに足らない一要素。


それが私です。


私は毎朝6時に起きます。6時に――失礼、平日は6時に起きます。週5日です。私の所属する社会は週休2日がメジャーなんです。休日は大体10時には起きますが、もっと早く起きることも、たまに昼まで眠ることもあります。時刻はベッド脇の目覚まし時計と壁に掛けたシンプルな丸時計とスマートフォンで確認します。朝が弱いのでアナログの目覚まし時計もスマートフォンのアラームもセットするんです。

起きたらテレビを点けます。時間が分かるし、私は朝の情報番組が大好きです。ちなみに夜のチャンネルはニュース番組を好みます。そしてコーヒーを飲み、適当にパンでも食べ、たまにスチームアイロンを当てるスーツに着替えて、まあ洗顔したり歯磨きしたり身だしなみを整えて出勤します。

私はそこそこ人の多い地域に居住しているので朝乗る電車はいつも満員です。まあ気持ちよくはないですけれど、苦痛で気が狂うほどでもありません。


お昼は買ってきたものを食べることがほとんどです。つまりパンとかコンビニの総菜とかインスタントスープとか。たまに店でランチもします。本当の意味で等価交換が誰と成立しているのかはわかりませんが、この社会ではお金を払えば満足が得られるのです。


そして昼食後は――ここまで書いて、なんだか私は疲れてきました。一体全体誰が私の一日のスケジュールに興味があるというんだ?これじゃまるで一般的かつ啓発的な文章から導入する義務教育の教科書みたいだ。


つまりですね、私が何を言いたかったのかというと、私は非常に満足しているんです。物質主義、資本主義、はたまた快楽主義。現代的で合理的なメカニズムがveinである、この素晴らしきmass societyに。

だって考えてみてください、もし私がmass societyに所属していなければ、今挙げたようなスケジュールは非現実的なはずです。常に大衆への供給で溢れたmass societyにおいては、道路だとか水道だとかの他にも高次のインフラストラクチャーが存在しているといえるでしょう。そういう仕組みの素晴らしさを伝えたかったのですが、なんだか疲れてきましたし、あなたもそろそろうんざりしているんじゃありませんか。事細かな例を挙げなくても、ニュアンスは伝わったと信じます。

さて。


これを読んだあなたが過激な共産主義者でないことを祈ります。

私は何も誰かの気を悪くするために筆を執ったのではないのです。


私はただ、この「世界」が好きだという気持ちが胸から溢れて、気が付いたらこんなへんてこな手紙を書いていたというだけです。


今日の夜、時間帯指定をした荷物が届きます。自分が選択したものしかない空間を独占する歓びは何にも優ります。


願わくば、世界がずっと平穏でありますよう。

あなたにも、私にも、隣人にも幸あれ!!




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Dear lovely mass society 飴野セロエ @Bonbons

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