第12話 カムを取り返せ!

 はっはっはっと断続的に繰り返される息。今止まったら、息が落ち着くまで待たなければならないため、今止まってはいけない。

 長く壁しかないこの城のどこかにカムがいる。

 私は国王に場所など聞いていなかった。聞く前に飛び出したのもあるが

「カム!」

 その声が城中に虚しく響く。

 どこだ! カム!

 弟カムに上げられて3分。だんだんイラついてくる。

 怒っても何も改善しないのは分かっている。

 ただ、自分が死ぬと分かってて私を王国に連れていったのは何だ?言ってくれれば断れた。自分の足で行けた。まぁ、行っても帰れないってわかってれば行かなかった。なのに何で!?


 ふと、自分の視線の脇に何かを見つける。

「ん?」

 私は走っていた足を一気に止め、そこへ歩いた。

 そこは薄い灰色のスイッチ。

 白背景だとなかなか見えないスイッチだ。

 普通は押すと爆発するだとか死ぬだとかで世間を騒がしそうなボタン。

「押すか」

 カチッと何も躊躇なく押してしまった……。

 ボタンを押して数秒、何も起こらないじゃん、と思った瞬間。

 ゴゴゴッと何かが開く音。

 ついには、ボタンの真横に穴が開いた。人がギリ入れそうな穴。

 私は一瞬覗いてみる。中から変なのが出てきたら困る。

 だが中は意外と明るかったので入ってみた。

 ようやく見つけた穴だ。引かないわけにはいかない。

 床は丸石でできているが、壁から天井にかけて白い石でできていて松明がちらちらと風になびいている。

 ここで聞こえる音は松明がぱちぱちと鳴る音と、私の足音だけ。後ろからでかい音を出されれば失神するレベル。


 ようやく見えた出口に急いだ。

「あっ……」

 出口の先に有ったのは広場。とても広い広場。

 広場を囲むように観客席がところ狭しと並べられていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る