第11話 弟カム 

 国王は言っていた。

「やつらは人間じゃない。生き物は何でも貪り食う。そのための生け贄」

 カムは時間が経つ事によって死へのカウントダウンが始まる。

 早くここを出なきゃ。力尽きてる場合じゃない。


 壁を探して歩き出す。

 まずは頭の中で距離を測った。

 私が落ちた場所はこの穴の真ん中と考える。

 20歩歩くと壁があった。そこを右に壁づたいに歩いていく。

 歩いて数歩、何かが足に当たった。

「っ……!!」

 なにこれ!?

 そう言えば、ここ異世界物であるあるの怪物絶対いる系の穴じゃん!

 あぁ、死!

「ごめんなさい、勝手に落ちました! 食べても美味しくないですすす!」

「ん。食べない」

 ぎゃああああ喋ったああああ!?

「ボクはカム。君はー?」

 ぎゃああああ! 死神ぃぃ……は?

「カム? え?」

 そう言えば、カムは双子だと国王は言っていた。となるとこいつは違う方のカムか。

「じ、じゃ君のもうのカムは?」

「もう一人? ああ、お兄ちゃんのカムねー。分からないんだよね」

 カムは静かに言った。

 暗闇で顔は分からないが、声は静んていた。

「分からない……」

「うん。だけど、1つ。君を上に連れていってあげる。そしたら、カムを助けてくれる?」

 カムはお兄ちゃんカムがどうなるか知っているんだ。そしてこれから自分がどうなるか。

「うん。助ける。絶対」

 と約束して、カムの鼻の上に乗った。

 ぐぐぐっと重力が一気に掛かった。

 上に持ち上げられている感覚が来たと思った束の間、私が落とされた扉の真下だった。

「さぁ、行って! カムを助けて!」

 カムはそう言って、下へ降りた。

 約束した。その約束を果たすために私は行くんだ。

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