最終話 何気ない日々

「カムー!」

 私が叫ぶと広いせいか、とても響く。

 ふとガラッと何かが開いた気がした。

「カム!?」

「僕のために来てくれたの……?」

 カムは少し驚いたように言った。

「そうだよ。さ、早く行こ」

「無理だよ。この足枷が邪魔で動けないんだ。もう…、無理なんだよ……」

 少し悲しそうにカムが言う。

 足枷がなんだ。壊せ!と言いたかったが、足枷は以外に大きく、人の手いやカムのパワーではうんともすんとも言わない。

「そんな……。カム……」

「泣かないで。僕は楽しかった。普段できないことが出来た。会えてよかったよ……」

 カムは今にでも死んじゃいそうな感じで何か細々している。

「ダメ。カム。生きて」

「最後に君の名前、知りたいな……」

「聞いてるの!? 名前言うから死なないで。私はミナ。ほら、教えたから生きてよ!」

「ミナ、今までありがとう。楽しかった―――………」

 カムは静かに深い眠りに付いた。

「私も楽しかった。いつも仕事ばっかりの私を楽しませてくれたのはカムだけだよ。ありがとう……」


 ふと、世界が反転したように逆さに落ちる感覚。

 ぐっと力をいれて必死になる。が、いつまでたっても終わらない。

 叫びたい気持ちを押さえてただ重力に任せた。

 そして意識が――飛ぶ。


 覚醒。数秒間、何が起きたか分からなかったが、ようやく分かった。

 ここは自部屋。つまり家。

「夢……だったの?」

 涙がキラリと落ちていた。

「カム……」

 夢だったが、あの姿は忘れられない。

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