夏目さんと僕

 よりによって僕は夏目さんと二人三脚のペアになってしまった。夏目さんは僕みたいなモブAじゃない。クラスの中心だ。身長は百七十を越え、切れ長な瞳が特徴的で下手な芸能人より綺麗だ。快活。よく笑う。帰宅部なのに尋常じゃなく足が速い。僕の鈍臭さをこれほど際立たせてくれるペアはない。一番困るのは、肩を組むどころか喋っただけで心臓が口から出るほど緊張することだった。練習にならんと思いつつ嬉しく感じないことなど不可能で、天国が拷問に近いことを僕は身を以て知る。夏目さんの方から僕にペースを合わせ、たまにペースが揃うと「ヤバいシンクロ。これって運命かも」と直球を放ってくる意図が読めずにますます胸掻き毟られる。


Twitter300字ss

第七十二回お題「運」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る