第4話
増谷大吾、四十一歳。
この土地で有名な、スーパーマーケットの社長だ。
「ああ、その店なら、あちらの方にもあるな。品はいいが、中々高値だ」
あのスーパーの設立者かと、エンは納得したが、信之は妙な顔をした。
「お前、それは何処の情報だ?」
「あの辺りの奥さん方が、そんな話をしていた。面白い食べ物を手に入れるのも、値段によるだろう? 高い店ナンバーワンだと、ぶっちぎりだ」
「……私たち、下っ端の警察官たちの間では、別な理由で有名なんですけどね」
その上背と顔で、買い物に行く奥様方の井戸端会議に混じっているのかと呆れる男の横で、舞が言った。
「金や実力のある者を見分けるのに長けていて、この土地の実力者の殆んどに取り入っているんだけど、取り入るだけではなく、その実力者が弱るとすぐさま吸収する。何度か命を狙われて、事情聴取も受けている筈」
殆ど窓口にいる舞は、その場に居合わせた事はないが、その聴取を受け持った同僚たちの評判は悪い。
「完全に、警察を取り込んでいるから、上司はあの男に対して腰が低いし、あの男もそれを分かっているから、態度がひどい」
だから、話を聞くだけでも、正直嫌だと零す同僚が多い。
しかも……。
「色狂いなんだ」
年齢も性別もお構いなしで、気に入ったら粘着質に言い寄る。
「言い寄るだけならまだしも、手に入れるまで手段を選ばずに、つけ回す。こちらの都市の住民も、何度か目を付けられて、つけ回されたらしい。勿論、相談された時には、追い払ったが」
だが、相談されていない場合と、する前に何かあった場合は助けられないと、信之は苦い顔で言った。
「あの男の家の捜索令状が、ここじゃあ出ないんだ。完全に、警察の上層部が取り込まれている」
という事は、何らかの被害が出ていると言う事かと、エンは眉を寄せ、結局カウンター内に戻った葉太を見た。
「護衛は、その男に指名されたものなのか?」
「ええ」
頷いてから付け足した。
「正しくは、旦那がオレを推薦した、ってところです」
「つまり、会った事はない、と?」
「ええ。まあ、姿くらいは、知られていると思いますが」
裏の仕事を知る者は少ないが、周りの人間には知られた男だ。
噂ぐらいは耳にし、顔ぐらいは知られているだろうと、葉太は曖昧に答えた。
「……護衛と言う事は、その男には、狙われる理由があるって事だな? 時期に関係なく?」
「そうですね。四方八方から恨まれていると思います。実際、何度か刃傷沙汰はあったと聞いていますし。その殆んどは、警察沙汰にすらなっていないと思いますよ」
葉太の方も、その男の事はよく知っている。
だから、警察が触らなかった事件も、把握していた。
だが、信之の方の情報網も、それ位は把握していた。
舌打ちして吐き捨てた。
「やはりか。もみ消しているか、あの男が届けなかったか……どちらにしても、その問題にすらならなかった件の加害者は、あいつに捕まったって事だな?」
「……そこまで、節操がないのか?」
エンは、つい呆れてしまった。
「子供が出来ず、跡取りがいないのを焦っていると言うより、単に色魔の類なんでしょう」
葉太が重々しく頷き、顔を曇らせる舞に笑いかけた。
「もしかしたら、お前の事に興味を持っての指名かもしれないだろ? 離婚済みで、ここには近寄っていないと言う体で、話を合わせて欲しい。口で言っても信じやしないだろうから、しばらくは近づかない方がいい」
「もしかしたら、あなた目当てかもしれないじゃないのっ」
「それは、ない」
どうしてそう言い切れるのか。
舞は顔を歪ませて、反論したかったが、もう行くと決めている男を、止めることは出来ないと、分かっていた。
今生の別れのような空気が、店の中に漂い始め、エンは天井を仰いだ。
事情が曖昧な家への護衛の仕事を思わせぶりに聞かされた事で、信之の思惑は手に取るように分かったが、それにあっさり乗るのも、躊躇われた。
「……それで、水谷さんの盾になれると言うのなら、受けてもいいが……秘守して、くれるんだろうな?」
元夫婦の二人には分からない、意味不明な確認に、信之は重々しく首を振る。
「保障は出来ない」
「それじゃあ、困るんだが」
「しかし、その気にはなって、くれているんだろう?」
上目遣いでそう言われ、男は大きく唸った。
「相手がどうなろうと知った事じゃないが、その後の白い目に、耐えなきゃならないのは……」
エンが思い出すのは、従姉の婿との修羅場だ。
あれは、相手も可哀そうな事になったが、こちらもあの後居心地が悪かった。
その話も、昔話で聞いている信之は、神妙に頷いて言った。
「ちゃんと、言い訳はしてやるから。出来れば、お前の妹の婿を守る心算で、頼まれて欲しいんだ」
「……その言い方は、狡いんじゃないのか?」
苦笑した優男は、もう答えを決めていた。
仕事先から指定された時刻間近になって、葉太はエンを伴って家を後にした。
三兄弟と従妹と共に二人を見送った信之は、安堵の溜息を吐いた。
それを見た舞が、目を細める。
「……妙に積極的だったけど、うちの管轄で、何を企んでるの?」
「元々、お前の所の奴が、相談して来たんだぞ。偶々、それを受ける土台が、今整っただけだ」
見上げる従妹に笑いかけ、男はわざとらしく悪役のような顔で言った。
「お前たちも、これから忙しくなる。だらだらするなら今の内だ」
家の戸締りをして、部活で戻っていない草に置手紙をした後、ぞろぞろと高野家に向かう途中、緑は上野家に行った時の話をする。
「二人とも、お元気だった?」
「うん。御蔵の所の人の他にも、もう一人女の人がいたんだけど、あれ、カガミさんの彼女かな?」
「今回の、仕事の依頼者だろう。ごく簡単な、引き離し戦略を立てているらしい」
答えた男を見上げ、緑は不思議そうに首を傾げた。
「簡単? 御蔵は、大掛かりな事になるって言ってたけど……難しくはないのかな?」
大掛かりで難しい仕事だと、緑は実際に行ってその場を見て思った。
何故なら、上野家を行き来している若者、カガミが難しい顔で自分たちを迎えたからだ。
そして、通された部屋で待っていた若者は……。
「……そこにいた女の人達の誰よりも、綺麗に身つくろわれていたんだけど」
「本当か? それは……」
信之は、後の言葉を飲み込んだ。
この家族を自宅に連れて行って、その後でもその姿を拝めるだろうかと、頭の中で計算する。
一目でも拝見して、風当たりの強さを麻痺しておかねば、これから先の神経がもたなくなりそうだった。
女には未だに、どうして私がこんな事を、という思いがあった。
最終的に、引き受けてしまったのだから、後戻りはできない。
話を持って来た母は、
増谷大吾という男の、内縁の妻に当たる女だ。
元々は夫と共に、護衛として雇われていたが、夫の行方が分からなくなった頃に、雇い主の手がついて、最近妻扱いされるようになったのだそうだ。
「子供もいるそうよ。小学生の男の子」
もうすぐ誕生日を迎え、九歳になるそうだ。
「そう、それは、おめでとう」
女はそう答えつつ、それがどうしたのかと不思議だった。
「あなた、あの辺りはあなたの家と近いのに、何も知らないの?」
「何のことですか?」
母が呆れながら説明することによると、増谷大吾の自宅は女の住処の山のすぐ下にあり、その男も有名人だと言う。
「悪名は高い筈だけど、本当に知らない?」
信じられないと言われても、黙っているしかない。
何せ、数年前の一家殺人事件の家の事も、実際に係るまで知らなかったほどだ。
「表立って有名じゃないのなら、知らないのも仕方ないですよ」
「あなたねえ、そんなことじゃあ、若さが保てないわよ」
それは、あまり関係ないだろう。
そう反論しそうになる女を、母は遮って話を続けた。
「それでね、その男を、この人の息子さんの誕生日の前に、呪い殺して欲しいんですって」
「誰が?」
「あなたがよ」
物騒な話が切り出された。
思わず、客の女を凝視してしまった。
自分と同じくらい長身の客は、三十代に差し掛かるか否かの、こちらからすると若く幼い感じの女だ。
すがるように見返され、何やら切羽詰まっているのだと気を取り直し、優しく尋ねる。
「その、物騒な結論に達した理由を、お聞かせ願えます?」
優しい笑顔とその声音につられ、女は事情を話し出した。
その内容は、徐々に顔を険しくさせるに値する、胸糞悪いものだった。
「……息子さんは、あなたに似た顔立ちなのですか?」
心境を押し殺し、あくまでも優しく問う女に、母が身を竦めているが、構わない。
客の女は俯いて、首を振った。
「どちらかというと、いなくなった夫の方と似ていると、昔から言われていました」
「……」
いなくなった旦那の方も、何やら胸糞悪い事になっていそうな予感があり、女は一度顔を背けて溜息を吐いた。
全ての感情をそこで吐き出してから、再び優しい笑顔を作る。
「……あんた、そんな技術、どこで身に付けたのよ?」
その様子を横で見ていた母が、どうでもいい事を訊いて来るが、今は無視だ。
「呪い殺すと簡単に言いますけど、どうして私に、それが出来ると?」
これが一番、気になった事だった。
大方、自分の横で狼狽えている母の入れ知恵だろうが、確認はしておきたい。
そう考えたのを察してか、母が自分から答えた。
「出来るでしょう? 純血のうちの弟ですら、あなたには勝てなかった」
「……あれは、油断していたんですよ、叔父上が」
嫌な事を思い出して顔を顰めながら、女は答えた。
「それに、今はその手の事は、出来ないと思いますよ」
あの時も、昔の忌まわしい事も、自分にそれが出来た事には原因があった。
それを知った今は、周囲の協力もあって、身も心も落ち着いてきていた。
「大体、呪い殺すには、近づかなければならないはずでしょう? 何の接点もないのに、どうやって近づくんですか?」
内縁とは言え、妻を持ったばかりの男が、早々に女を引き込むとも思えないと言うと、客は何とも言えない顔で首を振った。
「私が今日、あの男の目を盗んでここまで来れたのは、捕まえたばかりの女性と一緒にいる所を、見計らったからです」
耳を疑った。
「捕まえた女性?」
目を剝く女に、母が呆れた顔で説明する。
「悪名高いって言ったでしょう? あいつ、目を付けた者を、捕まえるまで諦めないのよ。ストーカー紛いの事もするし、人さらいみたいな真似も平気でする」
「被害者は、泣き寝入りですかっ?」
思わず睨みながら返した女に、母は首を振る。
「泣き寝入りも、出来ないかも。完全な被害者は誰も、出てきていないのよ」
だから、証人もなく、警察も踏み込めない。
「運よく未遂で、拉致される前に被害者が逃げて来た件もあるらしいけど、あの地の警察の上層部を、旨く誑し込んでいるみたいで、捜査状が出ない」
マスコミを使えばとも思うが、周りの住民も口を閉ざしてしまうため、明確な話は世間に出ていなかった。
疑いが薄い所に、強靭に捜査に入る警察も嫌だが、疑いは濃いのに、強靭に出れない警察も、困りものだ。
こちらは恵まれているんだなと、他人事ながらそう思った女は、半分ほどはこの依頼を受ける気持ちになっていた。
だが、残り半分では、何とか表ざたにできないのかと、考えてしまっていた。
そんな考えを粉砕したのは、何としてでもこの仕事を受けて欲しい母親だった。
「もしこの仕事を受けてくれたら、この家の修繕費、払わなくてもいいわよ」
「分かった、やってみる」
……女は、正直自信がない。
見目のいい男女と長く一緒にいたせいか、自分の魅力のなさも自覚しているし、妖艶な色気と言うものが出てくるのはいつも、自分の自我が完全に崩壊した時だと、知っているのだ。
唯一、自我があったまま力を吸い取れた件……叔父の、暴行の末の返り討ち事件の時は別だが、あれも昔の偏食が原因だった。
今は止められているから尚更、自信がなかった。
決行する直前まで、周囲の術師にそれとなく話を持って行ったのだが、その話を切り出した途端、拒絶されてしまった。
古谷家だけなら分かるが、何で塚本家まで、あんなに警戒したのやら。
お蔭で、相手が持っていると言う媚薬を頼りにして、呪殺を実行するしかなくなってしまった。
まずは、相手の目をこちらに向けるべく、女は動く。
全ては、数か月前に罅を入れてしまった、藤田家の壁の修繕費支払い回避のために。
今では冗談交じりに、昔は畏怖を込めてその男はこう呼ばれていた。
笑顔の殺人鬼。
それは男が、怒りを穏やかともいえる笑顔に隠し、相手をあっさり手にかけるさまを見て、配下だった者たちが秘かに呼んでいた、二つ名だそうだ。
だが、高野は言っていた。
祖父からすると、そんなおっかない二つ名よりも、もう一つの方を浸透させたかったらしいと。
増谷大吾と顔合わせした水谷葉太は、一緒に来てくれたエンが穏やかに笑いかけながら挨拶する様を見て、その顔を見て依頼主の顔がふやけてしまうのを見て成程、と納得してしまった。
老人殺し。
昔の感覚では、五十代でもいい年寄りの仲間入りだった。
その十個前の四十代も、大年増を軽く超える年代だったはずだ。
そう考えると、四十以上を老人と考えていたのかもしれない。
「……」
オレも、四十過ぎてるな。
葉太は思い当たって、軽くショックを受けてしまった。
二人は初顔合わせを済ませ、あてがわれた部屋でしばらく休むことになった。
「今夜のパーティーから、雇い主に付ききりで警護、か」
住み込みで、報酬も基準より多めの、一見するといい仕事だ。
増谷大吾も、甘い顔立ちのいい男で、とても聞いた話の様な悪行をしているようには見えない。
「あの顔で騙されて、痛い目を見た人が、何人もいそうだな」
エンの感想は、それだった。
見目のいい男女と長く一緒にいたせいか、エンの美的感覚は完全に麻痺している。
だが、免疫のない人が見たら、魅力的な男性に見えそうな男だった。
あてがわれた部屋を一通り見回しての感想に、葉太は頷いて慎重に言った。
「今の財力を手に入れたのも、殆どがその上っ面の良さを売りにしたお蔭だと、妬み半分で言われています」
確かに、始めのうちはその見目を利用しての、成り上がりだったのだろうが、今では別な手腕も発揮している。
それが、粗探し、だ。
見目の良さで大手の企業に入り込み、弱みを握ってそれを公に晒す。
葉太は、この家に向かう途中の道すがら、エンに増谷大吾の手腕を説明していた。
「……余り、事件にはならないですが、この辺りに根付いていたいくつかの実力のある企業が、些細な汚点を大袈裟に騒がれて失脚して、この地から撤退しています。そのおかげで、この辺りの発展は、他の地よりも遅れているのだろうと、秘かに言われているようです」
撤退した企業の代わりに、増谷の力が大きくなっている。
「全域に達していないのは、未だに周りに信頼をされて、工場をいくつか所有している、上野家が頑張っているからです」
増谷からすると、正攻法で上に登って来る上野家は、目の上のたん瘤だった。
近づこうにも、優秀な人材に邪魔されて、うまく行かなかったようだ。
「上野家は歯牙にもかけていないのですが、そろそろ、目に余るところが出て来たようで。オレも、半分は旦那に言われての行動ですが、残りはその目論見の手助けになればと、考えての事です」
「なるほど。会った事がないから、まだどういう男なのか分からないが……凝った陣取りをするタイプのようだな。こういうタイプは、意外に信仰者ができやすい。もしかしたら、連れ去られたと言う人たちも、完全に取り込まれているかもしれないな」
信仰者も多くできるが、こういう人間は敵も多い。
信仰者の数だけ、恨まれていると見てもいい位だ。
部屋の中で寛ぎながら、エンは今後の予定を切り出した。
「今日のパーティーとやらは、何の打ち上げなんだろうな?」
「息子の誕生日らしいんです」
「ん?」
子供が出来ずに色事に走っていた、そんな話だったはずだ。
思わず怪訝な声を出したエンに、葉太は言葉足らずを詫びて、説明した。
「最近、内縁の妻が出来て、その女の連れ子の誕生日が、今日なんです」
十歳ほど若い女で、小学生の息子がいる。
「随分気に入ったようで。後継ぎとして育てる様な事を、周囲に漏らしているそうです」
「そうか。そう言う気に入り方なら、今迄よりも色事の方は落ち着くかもな」
「ええ。あくまでも、そう言う気に入り方なら、ですが」
まだ、その辺りの事情は、外に流れて来ない。
流れて来ても、すぐにもみ消されて、マスコミの耳には入らない。
「……それが、少し不思議なんだが……マスコミ関係者の耳に、完全に入らない様に事情をもみ消すことが、出来るのか? 少しは漏れそうなものだが」
「ええ、多少は漏れていますが、公にする前に、どこからか圧力がかかるらしいんです」
「つまり……」
「はい。権力を持った奴と、繋がっているようです」
力は、閉鎖的な土地では有効な動力だ。
その力を信じているからこそ、この家には監視カメラの一つもないのだ。
「盗聴の気配もない。今迄よくこんな状態で、自分本位な暮らしが出来たものだ。そこまで、強力な力があるわけでもないのに」
「日本人の、特殊な習性のせいでしょう。自分の懐内では自由自適な本性丸出しの生活をし、その外では気持ち悪いほどに気遣える者を演じる。処世術と言えば聞こえはいいですが。そういう連中は意外に、妙な所で楽天家なんです。今迄の仕事場でも、よくある風景です」
大企業並みの邸の中で、同業者らしき者が数名、自由に行き来していた。
新人の自分たちを見る目は険しく、些細なしくじりも見逃してもらえそうにない。
追い出す気満々と言うより、別な期待で目くじら立てているのだと、ちらほらと話が届いていた。
「……そういう、妙な期待を持っている護衛がたむろす中に、小学生もいるのか。教育上、よろしくないな」
穏やかに笑いながらも、言っている事は真面目だ。
雇用の実態を調べると、今日同じように護衛として雇われた新人が、何組かあるようだ。
「その割に、今日の招待客が何人で、どんな客がいるのか、全く流れて来ないんです」
葉太の苦い顔での説明に、エンは少しだけ苦い笑顔になった。
「つまり、客はいない可能性がある、という事か?」
招待されているのは、目を付けられて採用された、自分達とその小学生の子供、とも考えられる。
胸糞悪い想像に、ついつい眉が寄ってしまうのを感じながら、エンは冷静に頭の中を働かせていた。
一人で数人を相手にするのは、物理的には無理だ。
だが、別な事なら、あの程度の人数を相手する位、訳はない。
「……物騒な事、考えてませんか?」
「いや? 優先順位を、考えてただけだが」
穏やかに答えたエンの目は、つぶさに本音を答えていた。
まだ知り合って間もない雇い主やその心酔者の命より、まだ見ぬ幼い無垢な子供の身の安全の方が、大事だ。
「……まあ、少し様子を見てから、程々に、地味に動いて下さいね」
こちらとしては、闇から闇へ葬るのではなく、世間にさらけ出して、この家を潰したい。
そんな気持ちで注意した葉太に、容姿に似合わず物騒な男は曖昧に頷いて見せた。
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