Top secret



泡が泳ぐ音がした。白くて丸い山が浮かんだ翠の海は、幼子のように存在を主張する。


泣きたくなった日の夜は、喫茶店のクリームソーダ。昔に決めた自分だけのルール。甘くて、切なくて、騒がしいその海が、私を波で攫ってくれる。


喉の奥を海月が刺していく。美しく鋭い毒は私を少しだけ悪い子にしてくれる。定期的で非計画的な夜更かしと、心地好いジャズに溺れる時間。私だけが分かる、最上級の贅沢。


堅苦しいスーツに身を包んで、四角のカバンを隣に置いて、心だけが童心に帰る。今の私はとっても悪い子。でも、ここでだけは許される。


優しい光は月の瞬き。暖かい空気は春の微睡み。意味の無い、てんで無駄なこんな妄想も、ここでだけは許される。


窓の外は深海のように煌めいている。闇の中に、カラフルな光がたくさん弾いている。潜水艦の中の海なんてロマンチックね、と。戯言も程々に。


あ、マスター、もう一杯。

もうちょっとだけ泣かせて。


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